詐欺のワナはすぐそこに!
朝、珍しくショートメールが入っていた。いつも来るのはauつまりKDDIからのお知らせで、今回もそうだろうと思った。ぼくの知っている人は、たいていLINEでメッセージを送ってくるし、そうでなければふつうのメールで来る。
ショートメールの細かい文字を読むと、こんなことが書いてあった。
<有料動画閲覧履歴があり未納料金が発生しております。本日ご連絡なき場合は法的手続きに移行します。DMM相談窓口 03-6635-9118>
有料動画を閲覧した記憶はまったくない。でもDMMというのはどこかで聞いたことがあった。料金未納というのは何かのまちがいではないか。
とりあえず、その番号にかけてみた。相手はこう言った。「ショートメールに何と書いてあります?」。そのまま読むと、「それじゃ、ご本人確認をします」
氏名、生年月日、住所を言わされた。でも住所の漢字がわからないようすで、漢字説明をさせられた。そのとき、おかしいな、とは思った。相手のモニター画面にはこちらの個人情報が表示されているはずだから、それにあった答えをすれば、本人とすぐ確認できるはずだ。これまで、こういうことを何十回もしてきたから、通常の本人確認のルーティンは知っている。
「有料動画なんて見た記憶がありませんけど、いったいどこのサイトですか?」
「ちょっと待ってください。・・・カリビアンコムというサイトです」
「請求金額は?」「38万6000円となってます」
なんと! 「身に覚えがありませんけど」
「2015年10月以降の長期未納で、あなたはすでに強制退会となってます」「退会ということは、会員登録したことになっているのでしょうが、そんなことしていません。カリビアンコムってたしかエロ動画のサイトでしょ。そんなところに登録なんてしませんよ。第一、支払いの請求が来たこともまったくないし」
「請求書を受け取らない設定になっているんじゃないですか。そういうケースはよくあるし」「そんな馬鹿な」「支払いをする気はないんですね。当社はカリビアンコムからすでに請求権を引き継いでいますので、払わないなら、すぐに裁判手続きに入ります」
DMMのお兄ちゃんは、相当いらだっていた。話にならないから、電話を切った。とはいえ、ちょっと心配で「国民生活センター」の相談窓口をパソコンで検索した。画面の上位に何社か、「アダルト請求トラブル無料相談」といったサイトが並んでいる。そのひとつに電話をした。事情を話すと「100%解決する方法があります」と言う。
不審に思ったのは、そのサイトには会社名も電話番号以外の連絡先もすぐには見つからないことだった。「御社は何という名前ですか?」「サイトを見たんでしょう。会社名も知らないでかけてきたんですか?」「で、何という会社ですか?」「株式会社ソ○○ンです」「え?、どんな字を書くんですか?」「ローマ字でSO○○Nです」
「請求をやめてもらうのには手数料がいくらかかるんですか?」「7~9万円です。相手企業の調査と交渉で1週間はかかるんです。ショートメールが来たっていうことは、相手に電話番号が知られているわけですから、きちんと対応しないとまずいですよ」
これは明らかに詐欺だと思った。DMMとSO○○Nはつるんでいるのではないか。
「もうちょっと検討してから、かけ直します」「すぐに手を打たないと、手遅れになりますよ」「それなら、小一時間以内にかけ直しますから」
電話を切って、国民生活センター相談窓口に電話したが、混み合っていてつながりそうにない。それならと、島根県の消費者センターへ電話した。対応した職員はとても親切で、こちらの事情説明をじっくり聞いたあとこう言った。「それは架空請求詐欺のひとつですね。念のため、ショートメールの文言を正確に読み上げてくれませんか」
職員さんによると、DMMについての相談がすごく多いそうだ。「ショートメールはあてずっぽうに電話し、折り返しかかってきた相手から個人情報を聞き出すやり方です。あなたの場合は、すでに個人情報を取られてしまったから、今後もいろんな請求が来るかもしれません。でも一切無視すれば大丈夫です」
SO○○Nというのは、あとで検索すると全然関係ないウェブ制作会社がその名前で、問題のサイトには会社名がない。そのサイトをよく見ると、探偵業○○○号と一番下の方に小さくあった。これが認可番号なのだろう。本業は興信所だが、詐欺グループと手を組む悪徳な輩がいる、と消費者センターの職員さんは言っていた。
詐欺組織はどういうことになっているのか、改めて、国民生活センターという“消費者の味方の総本山”を検索しようとすると、「消費者被害アダルトセンター」「消費者相談センター」などといったもっともらしいサイトが、すぐに表示される。
あるウェブの専門家に聞いたら、そういうのはリスティング広告と呼ぶのだそうだ。ワンクリック当たりいくらの広告費を払うか、オークション方式で落札した業者の広告サイトが上位に表示される仕組みという。クリックひとつに1000円を払う業者もいるという。
ネットの世界は怖い。国民生活センターのすぐとなりには、詐欺の罠のサイトが口を開けて待っている。
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