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ワケありブームのカラクリをみた

 歳暮は、お世話になったひとに贈るものかと思っていたら、最近は自分へ贈るひともいるという。銀座の老舗百貨店松屋は、2009年末、自宅配送限定のカタログを初めて作った。いわゆる「ワケあり」の商品などを集めたもので、割れたマロングラッセ(1キロ、3675円)など64点を掲載している。いずれも、定価より15~40%安いという。

 このところ、ワケあり商品は大ブームらしい。不況下のデフレで、安いもの、あるいは、安そうなものに人気が集まっている。とくに、インターネット販売では、ワケありのオンパレードだ。「楽天市場」や「Yahoo! ショッピング」など大手では、ワケあり商品の売れ行きが上位にランクされ、次々と専用ページが開設されている。

 収穫前に風でこすれて傷ついたリンゴは30~80%引きで売られている。贈答用には向かないが、自宅で食べるぶんには問題ないから、生産者と消費者の双方にとってメリットがある。スーパーでも、規格外の野菜を10~20%引きで売ったりしている。

 パソコンやデジタル家電でも、箱に損傷があるものなどを少し安く販売している。ワケあり家電専用のショップも生れているようだ。

 ワケあり商戦はどこまでいくのか注目していると、テレビ東京の番組『トコトンハテナ』(11月15日放映)では、「訳あり品 本当に徳?」という特集をした。

 魚の干物を売る店では、サイズの規格外品を半値で売っていた。スイーツの工場から余剰製品やちょっと崩れたワケあり商品を直接仕入れ、アウトレットとして定価の60%で売っているケースもある。余剰製品というのは、急な注文にも対応できるようかなり多目に作ったもので、本来のワケありとはちがうが、通常ルートには乗らないものだから格安で売られる。

 一番問題がありそうなのは、割れたせんべい、いわゆる「割れせん」だった。ネットでは2キロが4200円で売られているケースもある。しかし、番組では草加せんべいの店を3軒ほど聞き回ったが、いずれも「割れせんは、売るほどにはできない」という答えだった。試食用にしたり、店の片隅でちょっと売っている程度だ。ある店では、ネット業者からなのか「割れせんを売ってくれないか」という誘いの電話があったが、それほど大量には出ないので断ったという。

 11月16日の読売新聞朝刊に、割れせんのカラー全面広告が載った。たかがせんべいを扱う店が、千万単位の金がかかる全面広告を打つことに、ちょっと驚かされた。しかも、11月25日、今度は朝日新聞の朝刊に、まったくおなじ広告が掲載された。

 全国向けに、大々的に売り出すほど、割れせんべいが確保できるものなのか。疑問に思って、埼玉県内にあるそのメーカーXに電話し、責任者を呼び出してもらった。

 「製造工程でできる割れせんを、直営店で売ったり社員が食べたりしていましたが、むしろ割れているほうが、おつゆがよくしみて旨いという声もあり、一般に販売することにしました」

 最初は、そう差しさわりのないことを話していた。「新聞で全面広告を打って売るほどに、せんべいが割れるとは思えませんが」と突っ込むと、「実は、割っているんです」と、しぶしぶ認めた。完成品をわざわざ割って、割れせんを作っているのだとういう。それが、いまや同社の主力商品になったそうだ。

 ワケありの割れせんだからお買い得、というイメージが消費者に受けるのだろう。X社の割れせんは、一斗缶(2キロ)入り3150円で決して高くはない。「完成品なら4000円くらいの値をつける商品です」という。ネットで売られている正体不明の割れせんより、かなり良心的ではある。

 テレビは、さすがにトレンドを読むのが早い。すでに7月10日放送のドラマ『コールセンターの恋人』が、ワケあり商品をテーマにしていた。テレビショッピングの会社が舞台で、社員も、元警察官や元キャバクラ嬢などワケあり人間だ。

 北海道産のワケありタラコを、500グラム3800円で紹介したところ、電話回線がパンクしそうなほど注文が殺到し、予定の500パックはすぐに売り切れた。「ワケありフェスティバル」と銘打ってチョコレート、せんべい、Tシャツを扱うと、いずれも完売した。

 会社の幹部は、調子に乗って、ワケありタラコをさらに1000パック発注した。しかし、どこかの娘から、会社の苦情処理係に「ワケありタラコをもう売らないで」と電話がきた。ドラマの主人公都倉渉(小泉孝太郎)は、電話をかけてきたのが生産者の娘ではないかと推理し、北海道のメーカーへ飛ぶ。

 そこでは、激論が交わされていた。「職人がきれいに詰めたらかえって売れねえなんておかしい」「店がつぶれたら、みんな食っていけなくなる」。やはり、わざとタラコを傷物にしてワケあり商品を作っていたのだった。結局、「傷をつけるのは、みんなの誇りに傷をつけるのと同じ」として、やめることにした。

 人間の場合も、「バツイチのほうが、むしろいい」などとワケありがもてたりする。しかし、ワケありにはワケありの理由がある、ということを肝に銘じておいたほうがいいかもしれない。

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