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オバマの歯ぎしりが聞こえる

 「アメリカの黄金の日々は終わってはいない」――1980年代半ば、アメリカのレーガン大統領は、一般教書演説をこう結んだ。それを聞いて、ああ、アメリカも下り坂なんだな、と思った。それから20数年が経った。

 アメリカ人は、中南米を裏庭だと思い、政治経済的にも、軍事的にも、自分たちの意思でどうにでもなると考えてきた。しかし、地域大国ブラジルが経済力を増して発言権を持ち、産油国ベネズエラが中心となった反米的な動きも加速している。

 そして、ついにホンジュラスも、アメリカに不服従の姿勢を示し、アメリカを驚愕させる事態になった。

 ホンジュラスでは、2009年6月、軍がクーデターを起こしセラヤ大統領を拘束して国外移送した。アメリカは、セラヤ大統領に、2010年1月までの任期をまっとうさせようと、ありとあらゆる手段を使った。だが、ホンジュラスの軍部が支える暫定政府はその圧力に耐え抜き、セラヤを復職させないまま11月29日に大統領選挙を行った。

 この動きは、しょせん、中米の一小国のことにすぎない。だが、アメリカはそんな国にさえなめられるほど力を落としてきたことが浮き彫りになった。

 それより前、核開発計画をめぐりアメリカと対立しているイランのアフマディネジャド大統領は、ブラジル、ベネズエラ、ボリビアを回り、核計画への支持を集めた。アメリカは、そのときも、歯ぎしりするだけだった。中国は、ブラジル国営石油企業に100億ドルもの融資を行い、政治的にも影響力を増したが、財政的に苦境にあるアメリカはそれを黙ってみているほかはなかった。

 そして、日本でも、アメリカをなめたような動きが急浮上している。言うまでもなく、沖縄県宜野湾市の米海兵隊普天間飛行場移設問題だ。2006年、日米両政府は、沖縄県名護市辺野古沿岸域に移すことで合意していたが、鳩山政権は在日米軍基地の見直しを掲げ、移設先の再検討を始めた。11月13日の日米首脳会談で、オバマ大統領から日米合意に沿った迅速な解決を迫られた首相は「私を信じてほしい」と応じ、同盟重視に舵を切ったかに見えた。しかし、連立与党の一角・社民党が、12月5日、辺野古移転に反対し、合意が強行されれば連立政権からの離脱も辞さない考えを明らかにした。

 鳩山首相は、合意と連立、そして沖縄の声に板ばさみとなった形で、事態はほとんど白紙にもどった。

 これが自民党の首相なら、アメリカに「ははーっ」と平身低頭し、合意を強行しただろう。しかし、鳩山首相は、もともと、アメリカとの「対等な関係」を模索しており、普天間問題の根底にもそれがある。

 民主党を結党した1996年、「常時駐留なき安保」を提唱していた。つまり、戦後ずっと日本には米軍がいるが、北東アジアで有事が起きないような情勢を作り出せば、米軍基地はいらなくなる、という考え方だった。とくに、沖縄の米海兵隊は、台湾海峡や朝鮮半島での有事を想定して駐屯しているとされるものの、本当に沖縄でなければいけないのか、グアムなど国外でもいいのではないか、と本気で思っているのだ。

 2009年12月6日付け読売新聞朝刊によると、鳩山首相や平野官房長官は「米国が怒ったからといっておびえてはいけない」と語っているという。

 読売はこれを「強気とも米国軽視ともとれる姿勢」とし、寄り合い所帯の民主党が、外交・安全保障政策で基本方針を詰めてこなかったツケがいま回っている、と批判している。そして、「日米関係 深い傷」と大見出しをつけた識者座談会、「いらだつ米『決断できない政権』」との特集などを連日掲載して、日米同盟堅持キャンペーンを張っている。読売の姿勢がもっともはっきりしているようだが、他のメディアも同じような論調だ。

 だが、果たして、政府合意を反故にすれば日米同盟は崩れ、日本の安全保障などにも重大な脅威となるのだろうか。9・11テロ後、アフガニスタンにアメリカが仕掛けた戦争に絡み、自衛隊はインド洋で給油活動をして、間接的に参戦した。政権を取った民主党がそれをやめると言い出したときにも、日本のメディアは「日米関係に重大な影響を与える」と大合唱した。しかし、現実には、アメリカはそれを受け入れた。表向きは、日本がアフガニスタンへの民生支援額を大幅に増やしたのを評価して納得したことにしているが、実際には、日本に以前ほどの圧力をかけられなくなったからだった。

 アメリカの財政難は想像を絶する。経済困難で税収があがらないのに加え、イラクとアフガニスタンでの二正面作戦によって、戦費は巨額になっている。兵士ひとり当たり年間100万ドル(約9000万円)もかかる。そして、そのための借金である米国債を買うことでアメリカを支えている国の一つが日本だ。

 2003年当時、日本は米国債の実に約40%を買っていた。その後、中国が巨費を投じて買うようになり、今では、約15%にまでさがった。それでも、アメリカにとってみれば“お得意さま”にはちがいない。そして、今後も日本に買いつづけてもらわなければ、アメリカはやっていけない。

 オバマのアメリカは、普天間問題でふらつく鳩山政権にいらだっているのと同時に、日本を意のままに動かせなくなった自らのふがいなさにもいらだっているのだ。

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