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個人情報をなんだと思っているのか

 金融関係の会社は、どうも気に入らない。かつて、銀行の危機に巨額の公的資金が投入されたとき、銀行はどうしたか。知り合いの息子さんが大手銀行に勤めているが、給料もボーナスもまったく減らなかったという。血税を貸してもらったのだから、経営者自身にも社員にも相応の犠牲を強いるのがふつうだろう。だが、銀行はそんなこと、へとも思っていないらしい。

 自分たちが苦しくなれば、貸ししぶり、貸しはがしで中小、零細企業をいじめる。しかも、他人の金を右から左へ動かしている商売だから、痛みも感じないのだろう。銀行がなければ、企業も個人も困る。しかし、一方で、銀行にも社会的責任があるのではないか。

 もっと気に入らないのが、生命保険会社だ。誰も好き好んで保険に入っている人はいないだろう。それにしても、弱みにつけ込まれているようで、不愉快きわまりない。

 ぼくの場合、駆け出しの新聞記者だったころ、しぶしぶX生命に契約した。大手紙の記者の給料は悪くないが、公務員などとちがって基本給は信じられないほど少ない。もし、長期のけがや病気でもしたら、たちまち生活できなくなってしまう。当時は、疾病・入院保険というのは普及しておらず、生命保険の特約で入院給付というのがあった。それを頼りに、外交のおばちゃんに言いくるめられて契約した。それから引っ越しを繰り返し、担当のセールスレディも何人か代わった。

 そして30年以上が経ち、「年齢を考えても、入院給付の額を引き上げておいたほうがいいですよ」と説得され、保険のグレードアップをすることにした。セールスレディは、生命保険面接士という人物を連れてきた。ぼくにとって、そういう手続きは初めての経験だった。当初、保険に入ったときは、自分でクリニックにいって健康診断を受けた。

 生命保険面接士の面接では、告知書の質問項目に沿って健康状態を口頭で告知し、自分で告知書に記入する。セールスレディは「個人情報に関することですから」と席をはずし、家の外で待っていた。

 生命保険面接士は、生命保険協会が認定した資格を持ち、顧客の健康状態を確認する専門の人だという。その確認を受ければ、医師の検診を受ける必要はない。当然ながら、生命保険面接士には、業務上知りえた情報の守秘義務がある。

 「最近3か月以内に、医師の診察・検査・治療・投薬を受けましたか」

 最初の質問はこうだった。ちょっとした持病があり、6週間に1度通院しているので、これは「はい」にチェックする。

 「最近3か月以内に、医師により経過観察の指示をうけたこと、あるいは診察・検査・治療・入院・手術をすすめられたことがありますか」

 これはちょっと迷うところだが、「はい」にしておいた。

 「過去5年以内に、下記の病気で医師の診察・検査・治療・投薬をうけたことがありますか」

 ここには「心臓・血圧」「消化器」など6種類の病気があげられている。このどれかに該当しない中高年などいるのだろうか、と思わせられる内容だ。

 こういう質問が8つあり、現在の身長、体重、喫煙の有無を記入する。さらに、「はい」とした項目について、自筆で詳細を記入する欄がある。すべて正直に告知した。

 後日、契約のグレードアップはできない旨、郵便で伝えてきた。持病が引っかかったのだろう。わざわざ生命保険面接士の面接まで受けたのに、時間のむだになった。まあ、それはそれでしかたない。

 それからしばらくして、X生命のN支所長という女性が、「この地区の営業の担当者が替わりましたのでごあいさつに」と、新しいセールスレディのAさんを連れてやってきた。ふたりは、ぼくに契約のグレードアップをすすめた。過日、X生命がグレードアップを一方的に断ったことを知らないのだ!

 会社のパソコンをちょっと触れば、どの顧客がどんな契約をしているか、あるいは、どんな契約を断られたか、などすぐに分かるはずではないか。

 ぼくはあきれながら、生命保険面接士の面接を受けたいきさつを話した。すると、信じられないことに、N支所長はと、ずうずうしくも聞いてきた。

 「どんな持病なんですか? 高血圧ですか?」

 支所長というくらいだからベテランなのだろうが、顧客の個人情報をなんだと思っているのだろう。まるで、好奇心丸出しのその辺のおばちゃんではないか。さすがに、同行のセールスレディAさんは、それ聞いちゃまずいんじゃないですか、という顔をしている。

 ぼくは、怒るのを通り越して言葉につまった。それでも、N支所長はさらにしつこく聞いてきた。よっぽど、X生命なんか解約してしまおうか、と思った。しかし、たいしたこともない持病が引っかかる以上、他の生命保険に新たに入るのもむずかしいだろう。こうやって、人の弱みにつけ込むから、そもそも保険会社なんかきらいなのだ。

 後日、N支所長の名刺をよくみると、支所の上に支社の名前が書いてあった。よっぽど、その支社に抗議電話をして、N支所長の言動を“報告”してやろうかとも考えた。

 いまでも、X保険とN支所長の実名を、このブログに書きたい誘惑にかられる。

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