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日本の企業文化をぶっ潰したい!

 日本のキャリア官僚の友だちらの話を聞くと、国会の期間中は徹夜なども珍しくないそうだ。閣僚の答弁のため、データ集めや資料作りに追われるという。国会のない日々でも深夜残業は当たり前で、「終電までに帰ることのほうが例外」という声も聞く。

 しかし、民主党が政権を取ってからは、少しずつ改革が進められようとしている。菅直人副総理は財務相を兼任してから、「平日にデートができる財務省にする」とぶちあげた。残業を少なくするなど勤務時間を柔軟にし、業務の効率化を目指すという。

 遅まきながら日本でもやっとそういう点に目を向ける政治家が現れたか、と感慨深い。

 ドイツに住んでいるころ、たったひとつだけ心底うらやましいと思ったことがある。企業文化、労働文化の日本との決定的なちがいだ。たとえば、金曜日の午後にどこかの官公庁へ取材に行くと、閑散としていた。土日の週休二日は当たり前で、さらに金曜日も事実上半ドンなのだった。その代わり、週日は朝早くから仕事に全力投球する。

 ぼくも何人かのドイツ人取材助手を使ったが、例外なく、仕事への集中力はすばらしかった。一気に仕事を仕上げ、決められた終業時刻になるとさっと帰っていく。ボンにいたときに雇っていたクラウディア嬢に訊くと、ドイツ国民のあいだでは「残業をするのは無能な人間」という意識が徹底しているという。仕事柄、不測の事態が起きることもあり、そうしたときは残業もいとわないが、それはよほどの場合にかぎられている。そして、もちろん、残業代はきっちり支払わなければならない。

 『ヴェルト(Die Welt=世界)』紙などの記者に聞いても、勤務形態はきっちりしていた。議会が長引いたりすれば、政治記者たちも自然と残業を強いられるが、それ以外のときはさっさと引き揚げるのだという。

 一方、ぼくが働いていた新聞社の東京本社では、残業手当てなどというものは最初からなかった。記者は勤務時間があってないからと、部署や担当によって「記者手当て」というのがどんぶり勘定で支払われていた。

 会社が残業手当てを払っているのなら、仕事の終わった者はさっさと帰れ、という空気になるのだろう。それがないのだからずるずるの職場になってしまう。あるセクションで働いているときは、シフト勤務で交代時間が決まっているのにもかかわらず、帰宅するのがはばかられる雰囲気があった。

 それでどうするかと言えば、勤務の終わった記者何人かで連れ立って「反省会」と称して飲みに行くのだ。それも、半徹夜したあとの午後の早い時間帯のことだ。まったく不健康で馬鹿げた企業文化だった。

 それに比べると、ドイツ人の合理主義は徹底していた。仕事から帰ると、趣味や家庭内の仕事に精を出す。自宅の壁や塀のペンキ塗りを、毎日、帰宅後に自分でやるなど、まったくふつうのことだ。余暇を楽しむための施設も整っている。ぼくも週末に利用したが、スポーツクラブの充実ぶりは素晴らしかった。

 クラブではスカッシュやテニス、乗馬などが楽しめる。カフェテリアも併設されており、毎朝、ひと汗流してそこで朝食を食べてから出勤する人も珍しくなかった。もちろん、夕方には、スポーツのあとビールやワインを飲みながら談笑する。ここで肝心なのは、職場の同僚といっしょに余暇を楽しむなどという発想はまるでないことだ。

 ある日本人の女性で、ベルリンのアパレル会社に勤めている人に、職場の人間関係について訊いたことがある。彼女によれば、同僚の誕生日祝いを職場ですることはあるという。ビールと簡単なつまみを用意し、みんなで祝福の乾杯をする。せいぜい30分くらいでさっさと切り上げ、後は三々五々帰っていく。「同僚と外へ飲みに行くなど、聞いたことはないですね」

 ドイツでも、こういう合理主義、個人主義が何世紀も前からつづいていたわけではないそうだ。一説によれば、ナチス・ドイツが人と人との結びつきを強くさせ、ひいては全体主義になっていった反省から生まれた、第二次大戦後の社会風潮という。

 共産主義という名の全体主義がつづいていた旧東ドイツ地域では、今でも人と人のつながりが良くも悪くも深い、という話を聞いたこともある。

 日本人の外交官らとビールを飲みながら、よくそういったドイツの労働文化や人間関係の話になった。「残業もせず、絶対的な週の労働時間も短いのに、なぜドイツはヨーロッパ随一の経済大国としてやっていけるのだろう」。簡単には答えの出ないテーマを前に、ため息をついたものだ。

 ドイツに限らず、ヨーロッパ各国の労働文化は日本よりずっと洗練されている。しかし、ITの発達で、そうでもない例も生まれているようだ。フランスの通信最大手・フランステレコムでは、2008年から1年半のあいだに24人もの職員が自殺した。CFO(最高財務責任者)は、その背景をこう語ったのだそうだ。「携帯やパソコンの普及で、自宅に帰っても仕事のメールが届くようになり、職員は常に仕事に追われる状態になって気が休まらない」

 ヨーロッパも、“日本化”してきたのだろうか。菅財務相には、財務省に限らず、日本の企業文化そのものを改革する意気込みを持ってほしい。

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