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肉食系女子はピッチで跳ねる

 わが家のスケジュールは、サッカー日本代表の試合日程によって決まる。試合のテレビ中継がある時間帯には仕事を入れないで、リビングに陣取る。その前に、「斎戒沐浴」と称し風呂を沸かして入り、心身の穢れを落とす。風呂マットのごみや抜け毛も粘着性のコロコロできれいにし、ジャパンブルーの青っぽいタオルで髪をふきふき観戦する。

 とくに応援しているのが、女子のなでしこJAPANだ。女子サッカーの世界最高峰の戦いだった北京オリンピックで4位になったその実力はすごい。

 サッカーは、言うまでもなく、柔道やレスリングなどとちがい体重別階級のない無差別級だ。身長150センチ台半ば、体重が50キロにも満たないちびっこ選手たちが、20センチ、10数キロは大きいアメリカ人やドイツ人相手に、肉弾戦を挑む。

 女子の団体スポーツで世界級の実力を持つのは、他にせいぜいバレーボールくらいしかないだろう。それも、東京オリンピックで「東洋の魔女」と謳われ金メダルを手にした栄光の時代は遠く、現時点ではメダルにも手が届かない。

 男子の団体スポーツを見渡しても、なでしこJAPAN以上の力を世界で持っているのは、WBCを連覇した野球だけだろう。まさに、なでしこJAPANは、ピッチで跳ねる肉食女子の集まりだ。それなのに、メディアの扱いはなぜか冷たい。

 2010年2月6-14日に東京で男女同時開催された東アジア選手権は、なでしこJAPANのために用意されたような大会となった。女子サッカーのテレビ中継は久しぶりということもあったためか、選手たちは気合が入っていた。「身体能力がおとる点を組織力でカバーして」というのが日本の団体スポーツの通り相場だ。だが、アメリカで活躍しているふたり、大エースの澤やファンタジスタの宮間が、個人としての力も見せつけた。

 緒戦の中国戦では、FKを任されたMF宮間が、風とGKの位置を見極めた頭脳プレーで豪快に決めた。わが家のリビングでも、大きな拍手が起こった。MF近賀は相手GKへのバックパスの一瞬の隙を突いてボールをかっさらい、ゴールに流し込んだ。「やった、お見事!」

 この2点だけだったが、内容的には中国を圧倒した。相手ゴール前でパスが微妙にずれ攻めのスピードが落ちたりするシーンもたびたびで、まだ荒削りのところもあったものの、緒戦としてはじゅうぶんだった。「ゴールを狙う動物的本能は、肉食系の名にふさわしいよねぇ」。妻も興奮し、満足感にひたった。

 この試合の後半途中にA代表デビューを飾ったFW岩渕は、まだ16歳のちびっこ新鋭だ。2戦目の台湾戦では、MF宮間が敵DFをかわしてゴールライン間近から折り返したパスを、左足で合わせまず1点を挙げた。日本の男子FWがこの大会で、同じような折り返しを2度、3度とはずしてしまったのとは対照的だった。さらに岩渕は、MF中野の左クロスに合わせて飛び込み、今度は右足でスライディングシュートを決めた。この試合は3-0で快勝した。なでしこJAPANの試合は、いつ観ても面白い。

 最終戦の韓国戦では、FW大野が50メートルを独走して先制点を取った。自陣に押し込まれた直後の、鮮やかなカウンターアタックだった。10分後には、大野のスルーパスをFW山口が押し込んで試合を決めた。

 なでしこJAPANは、余裕を持って大会2連覇を果たし、MVPには主将のMF澤が2大会連続で選ばれた。この大会で、なでしこJAPANは4人の10代選手を抜擢した。岩渕をはじめ近い将来の中核は、着々と育っており、明るい材料にあふれている。いいぞ、肉食系!。

 一方、男子の岡田JAPANは、緒戦ではW杯にも出ない格下の中国とスコアレスドローに終わった。決定的な場面で何度もシュートをはずした。終盤にはハンドの反則で相手にPKを与え、GK楢崎の好セーブでなんとかしのいだ。楢崎は試合後のインタヴューで自嘲気味に語った。「負け試合を引き分けに持ち込んだだけ」

 2戦目は超格下の香港が相手でボールをほとんど支配したが、ゴールを奪う気迫に欠け、大量点を期待されながら3点どまりだった。この2試合は、観客数も記録的な少なさで、試合後はスタンドから激しいブーイングが起きた。

 最終戦の韓国戦では、1点リードしながら3点を取られて惨めな逆転負けをした。過去最低の大会3位となり、4か月後に迫るW杯の本大会に向け暗雲が立ち込めた。

 W杯に出ることはサッカー選手の夢であり、その人事権は監督が一手ににぎっている。つまり岡田監督は独裁者のようになっており、草食系の男子選手は萎縮してしまっている。「指示されたことしかできない」とMF遠藤は自己分析したが、東アジア選手権では、指示されたことさえできなくなってしまった。

 岡田監督は、「W杯でベスト4に入り世界を驚かす」とたわけた目標を語る。しかし、今の実力は「よく、W杯の予選を勝てたわね」と妻も嘆くほどだ。

 『よみうり時事川柳』にこんな1句があった。

 「なでしこのバレンタインは爪の垢」

 なでしこJAPANは、2011年にドイツで行われるW杯で優勝をねらっている。いいんじゃない、それ。

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