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たかがビッグマック、されど……

 プロ野球セ・リーグの開幕試合を観に、2010年3月26日、東京ドームへ行った。3700円の1階指定席のチケット3枚を、あるルートからタダで入手したので、妻と息子も誘った。リーグ3連覇中の巨人とヤクルトがぶつかり合う。

 人工芝がカクテル光線に輝くフィールドで、小学生の鼓笛隊やマスゲームが繰り広げられ、華やかに開幕した。観客の99%は巨人ファンだが、ほとんど皆、巨人の完封勝ちではなくホームラン合戦を期待していた、と思う。

 今季から東京ドームの巨人戦では日本マクドナルドがスポンサーになった。両チームに本塁打が出ると、「ツインアーチ」と銘打って、1700円以上のチケットで入場した観客には、ビッグマック1個と交換できるクーポン券が手渡される。

 ぼくたちはタダで入場したが、もちろんチケットは正規のもので、クーポン券をもらった。仮にツインアーチが出なくても、クーポンを使えば310円のビッグマックが200円になるという。

 うちのかみさんなど、「ヤクルトもホームランを打って、なおかつ巨人が打ち勝つ!」と気合が入っている。

 「マクドナルドも本気で巨人ファンにアピールするつもりなら、両チームホームランじゃなくて、巨人の複数本塁打でビッグマックがもらえるようにすればいいのに」。息子の指摘も、試合前の打撃練習を観ているときは、もっともだと思ったのだが。

 いよいよゲームがはじまった。重量打線の巨人は、タイムリーこそ出るが、どうも1発を期待できる雰囲気がない。それでも、5回裏1死1塁で、4番ラミレスが豪快に振り抜くと、ボールは一直線にレフトスタンドへ向かった。「入る、入る!」。ぼくも思わず「ビッグマック、半分ゲット!」と叫んだが、ボールはわずか2メートル弱左へそれた。

 スタンドからは「あ~ぁ ↓ 」というため息がもれた。

 巨人の先発内海は好投し、ヤクルト打線からも1発は出そうにない。後ろの席のおばさんたちも、「せっかくクーポンあるのにねぇ」と嘆いている。たかがビッグマックだが、それでも、その1個がかかっていると思うといつも以上に力が入る。小額のお金や賞品をかければ、トランプや麻雀が俄然面白くなるのと同じ心理だ。

 ビッグマックといえば、「ビッグマック指数」を連想する。ビッグマック1個を買うのに必要な労働時間を算出して、世界各都市の経済力を測る方法だ。2008年の東京の指数は「10分」で、世界一の経済力を示していた。2009年には大不況を反映して「12分」となり、少しだけ力が衰えた。それでもこの数字は、アメリカのシカゴやカナダのトロントと並んで、依然世界一だった。

 ロンドンは「13分」、ニューヨークは「14分」で、東京の経済力はまだまだ捨てたものじゃない。ちなみに、アフリカのケニアの首都ナイロビでは、ビッグマック1個を買うのに「2時間30分以上」も働かなければならず、世界の経済格差はかくもすごい。

 そんなことを思いながら、試合展開に一喜一憂していた。4:1で巨人がリードし、8回裏1死2塁で3番小笠原が打席に立った。いつものように目一杯スウィングすると、打球は快音を残しライトスタンドへ向かっていった。「今度こそいった!」。しかし、右に急旋回してまたもファールとなり、歓声がため息に変わって、そのままゲームセットとなった。

 勝利バッテリーと腰の手術から復帰しタイムリーを放った高橋由伸選手のヒーローインタヴューを聞きながら、マクドナルドの深謀遠慮に思い至った。仮に巨人の負け試合でも、両チームに本塁打が出てビッグマックがもらえれば、スタンドを埋め尽くす巨人ファンはわずかながらなぐさめられる。そこまで考えていたのか!? …… やるなぁマック。

 東京ドームの巨人戦には、年に1、2度、いつもかみさんを誘っていく。しかも、自腹を切って入場したことは一度もないのが、ささやかな自慢だ。

 ときには、1万円以上するネット裏のペアチケットを手に入れ、弁当と焼酎持参で試合を堪能したこともある。新聞社に勤めていた30代のころで、外報部(現国際部)の軟式野球チームに入っていた。春と秋に、産経、読売、日経、毎日、朝日の各新聞と共同、時事両通信社、それにNHKを加えた8社でトーナメントをするのが慣わしだった。

 ぼくは投手からライトまですべてのポジションを守ったことがあり、とくに捕手をすることが多かった。ある試合では三塁手を務め、7イニング21アウトのうち、じつに16アウトをサードゴロで取り、無失策だった。タイムリーも打って勝利に貢献し、チームオーナーの外報部長からMVP賞としてもらったのが、ネット裏ペアチケットだった。

 東京ドームへぼくたち夫婦がいくと、巨人の勝率は9割以上とべらぼうに高い。巨人軍のオーナーから感謝状をもらいたいくらいだ。

 さて、巨人VSヤクルトの開幕シリーズでは、第2戦、第3戦とも巨人は敗れたがツインアーチが出た。チックショウ!。でも、開幕戦のプラチナチケットをタダで手に入れ、なおかつビッグマックももらうなどとは、いくらなんでも野球の神様が許さなかった。

 近くマクドナルドで、観戦ゲームの祝勝会兼残念会を挙行する予定だ。ビッグマックを口にするのは、おそらく10年ぶりくらいになる。

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