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日刊ゲンダイの活造り

 魚介類は鮮度がいいほど美味い、と思っている人は少なくない、でしょ。その最たる料理が活造りだろう。ピチピチしたままの魚を食べるというのは、日本人にとって、なんとも言えない贅沢感がある。でも、鯛などは、活造りにしたら実はうまくもなんともない。活き締めにして丸1日置くと、やっと深みのある本来の味になる。

 活造りは何も魚だけの話じゃない、とぼくは思っている。まな板の上にピチピチの何かを乗せ、さばいていくそのプロセスこそ快感、美味だ。

 そこで、検察vs.小沢バトルで独自の視点から報道して、ちょっと名を馳せた日刊ゲンダイを俎上に乗せることにしよう。味は保証しないけれど…。

 2010年4月20日、<<問題なのは選挙民の水準と意識>>という無署名の記事が載った。

 沖縄の普天間基地問題をめぐり、<いつの間にか「鳩山首相退陣」という政局問題にスリ替えられてしまった>と書き出している。

 <そもそも冷戦が終わって20年も経つのに、なぜ大々的な米軍基地が沖縄に必要なのか。なぜ日本人の税金で米兵を養わなければいけないのか。「在日米軍の抑止力が大事」という人がいるが、何を抑止するのか>と疑問を投げかける。それはそれでいい。

 <すでに中国や台湾の脅威はないし、北朝鮮は戦闘機を飛ばす余力もない>

 北朝鮮の空軍機はあまりにも旧式で燃料も不足しており、日本に飛んでくる恐れはまずない。しかし、中国の脅威がないと断言する根拠はどこにあるのか。

 フィリピンでは、1994年までに、アジア最大のスービック米陸軍基地とクラーク米空軍基地を完全に撤去させた。その結果、何が起きたか。1995年、中国はフィリピンが領有を主張していた南沙諸島のミスチーフ環礁を軍事力で占領し、さらに97年、スカーポロ環礁の領有も主張して軍事施設を建設した。

 中国の胡錦濤政権が、近海防衛型から外洋展開型が可能な海軍へと軍拡路線を走っているのはよく知られるところだ。沖縄など南西諸島はすでに勢力圏で、小笠原諸島とグアムを結ぶ線まで活動範囲を広げている。日刊ゲンダイの、そうした現実をいっさい無視したふりには、中国共産党のポチ?、と言いたくなる。

 <戦後50年、アメリカ支配の自民党政権の中で繁栄してきた日本の大マスコミに「目を覚ませ」と言ったところで、連中はグルなんだから、ナンセンスである>と批判する。それはまあそうなのだろう。

 そして、<大事なのは、読者、視聴者が賢くなることしかない。自分の頭でモノを考えて自立する。押し付けられる情報を取捨選択する能力が必要なのだ>と書く。ごもっともではあるが、筆はエスカレートし<自分でモノを考える能力がない。ないからテレビのみのもんた程度の発言に左右される>と言いたい放題だ。

 記事は評論家の塩田潮氏の言葉を引く。<「政権交代というのは、それまでの50年のシステムを変えることだから、時間がかかる。与党の経験がない民主党議員が右往左往するのは仕方ないことなのです」>。それは確かにそうで、新政権をわずか半年で判断するのは早計すぎる、と言えなくもない。

 それでも、次のような一文をみると小沢応援団の本質があらわになる。<小沢一郎という傑出政治家による政権交代で、呪縛のない民主的政治が目の前に出現した>

 <傑出政治家>という評価は意見の分かれるところで、そう考えるのは自由だ。しかし、<呪縛のない民主的政治>というのはどこの国の話かッ! 小沢幹事長が、小沢氏ら民主党執行部への批判を繰り返しているとして生方幸夫副幹事長の解任を決めながら、世論の反発にあって撤回した事実を忘れているのか。民主党の議員たちは、ぼくの友人をふくめ、この花の季節にも「物言えば唇寒し秋の風」と口をつぐんでいる。そんな呪縛のある恐怖政治のこと、国民はみんな知ってるッーのに。

 <もともと封建時代から羊のようにおとなしい日本人は天皇制の下で「民主主義」を学べず、さらに自民党時代の学校教育で教えられたことは、権力を疑ったり批判したり、個性を出すことはよくないという従順さ。支配階級の計算通りに、ヨコ並びで、画一的な愚民に飼いならされてきた>

 その指摘はあながちまちがってはいないだろう。だが、<権力を疑ったり批判したり>することを許さないのが小沢一郎その人だ、という認識が、この筆者にはないところがスゴイ。

 とはいえ、記事の中には傾聴に値する指摘があった。軍事問題評論家・前田哲男氏のコメントだ。

 <「日本の米軍基地をめぐっては、日米間で官僚、軍需産業、学者、軍人と、それぞれのレベルでがっちりタッグが組まれています。…あえて波風を立たせたのが鳩山首相。…日本のメディアは報じませんが、世界を見れば、第2次大戦後、政権交代で49の外国の基地のうち40が撤退に追い込まれている。…米国内には沖縄の海兵隊不要論まであります。日本の報道はあまりに偏りすぎですよ」>

 ぼくも異議はない。この<日米タッグ><撤退基地とその後><基地不要論>を徹底追求して報道すれば、日刊ゲンダイの株も赤マル急上昇するだろうに。

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