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豚と桜――春爛漫の土曜日に

 動物園でぜひ見たい動物のトップ人気はジャイアントパンダで、2位がゾウ、3位がライオンだという。朝日新聞がインターネットで約4000人にアンケートした結果だ。しかし、ジャイアントパンダってそんなに可愛いだろうか。

 1972年に上野公園へ日本初のパンダがやって来たとき、GFにせがまれて見に行った。パンダよりも人間を見に行ったようなもので、ものすごい混雑のなか、やたら笹を食べている姿が印象に残った。ぬいぐるみにすれば可愛いが、実際には白い毛も薄汚れていたりした。見た目とちがって獰猛で、骨付き肉をバリバリ食べるのも中国にはいるそうだ。なんだかな~。パンダ小屋のとなりにいたレッサーパンダのほうが、よほど愛らしかった。

 個人的にはどんな動物がいいかというと、それはブタだ!。さいたま市の大宮公園に併設された入園無料の動物園は、ゲートを入ったほぼ正面の檻でミニブタが展示され人気を集めている。

 2010年の正月、久しぶりに家族4人がそろったので、大宮公園に隣接した氷川神社に初詣した。息子が「小さな動物園があって面白いよ」と言うので、みんなで行ってみた。ブタのお家では、ちょうど飼育係りのお姉さんが餌やりをしていた。「ネロ」というブタの名前が表示されていたが、2匹いたので、もう1匹の名前をお姉さんに聞いた。「ダイキチ(大吉)といい、今日からここにお目見えです」

 ブタを堂々と展示している動物園が、他にあるだろうか。わがファミリーはとても気に入った。

 ジャイアントパンダの一番人気が報じられた2010年4月3日の土曜日の昼、約1200本のソメイヨシノが咲き誇る大宮公園へ花見に出かけた。動物園も年に一度の大盛況だったが、ネロと大吉は陽だまりで寝ていた。そのマイペースぶりが実に良かった。

 大宮公園は広大な敷地を持ち、上野公園のように場所取りをしなくても、行けばすぐにシートを敷いて花見ができる。中央には鉄柱が立っていて、その天辺にスピーカーが取り付けられ、迷子のお知らせなどを流している。公園にはにぎやかにぼんぼりが張り巡らされ、昼間だというのに電気がついている。このエコの時代に、と思いながらよく見ると、鉄柱に太陽光パネルがありそれが電気を供給しているらしい。

 公園内には無数に露店が出ている。焼きソバ、イカ焼き、お好み焼きといった定番に混じって、タイのスープ「トムヤムクン」やトルコ発祥の「ドネル・ケバブ」など今風の店もある。

 ドネル・ケバブは、200万人以上のトルコ移民が暮らすドイツで一番うまいファーストフードで、わがファミリーも大ファンになった。本来はマトン肉をぎっしり重ね合わせてぐるぐる回しながら電熱で焼いて削ぎ切りにし、サラダ野菜といっしょにドレッシングをかけて半円状のトルコパンに詰めたものだ。しかし、日本ではマトンの臭いが不人気なのか、ほとんどの露店はチキンで代用しており、ヨーロッパの味にはほど遠いのが残念だ。

 大宮公園の花見といえば、例年ならカラオケをがんがん鳴らしてうるさいグループや酔っ払って大騒ぎをする若者たちがいたりするものだが、今年は全体的になぜかおとなしかった。

 遅い午後に帰宅すると、読売新聞の夕刊が届いていた。一面のコラム『よみうり寸評』には、江戸時代の学者、貝原益軒をめぐる桜のエピソードが取り上げられていた。益軒はその著書『大和本草』に「日本のような桜は中国にない」と書いているという。「長崎に来た中国人に聞いた話と根拠も挙げている。時代を考えれば致し方ないが、もちろん中国をはじめ世界各地に桜はある」と寸評子は言う。そして、益軒の間違いから、桜が日本の「国花」とみなされるようになり、特に明治に入ると桜を日本の象徴にすべく植樹が盛んに行われるようになった、と説明する。「今、各地に桜の名所があるのも貝原の間違いが遠因と言えるだろう」

 確かに、世界各地に桜はある。だが、「日本のような桜」が果たしてあるのだろうか。広い中国の大地のどこかには、同じような桜があるかもしれない。しかし、寸評にはその例が挙げられておらず、益軒が本当に間違ったかどうか、説得力がない。

 わがファミリーがドイツのボンに初めて降り立ったとき、滞在したホテルの前庭には桜が咲いていた。なんだか感激し、子どもたちとその前で記念写真を撮った。ライン河畔に借りたマンションの庭にも桜はあった。

 だが、それは決して「日本のような桜」ではなかった。花はソメイヨシノのような淡いピンクでも、シダレザクラのような鮮やかなピンクでもなく、ちょっとくすんでぼやっとしたピンクだった。日本の桜と決定的にちがい、花が1か月以上も咲きつづけた。

 日本人がなぜこれほどまでに桜を愛し、国の花とし、古くから詩歌や絵画のテーマとして来たか、寸評子はわかっているのだろうか。一気に咲いて風景を一変させ、ぱっと散る。だからこそ「日本の桜」なのだ。

 海外の桜としては、ワシントンDCポトマック河畔のが有名だ。ベルリンの壁の跡でも、パキスタンの各地でも、ぼくは「日本のような桜」を見たことがある。それらはみな、日本から贈られた桜なのだった。

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