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痔になる笑い

 指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます。こうした約束での罰ゲームを、魚のハリセンボンを飲むことだと思い込んでいたタレントがいた。あのトゲトゲを飲まされれば、地獄の苦しみにはちがいないが、もっとすごい罰がある。お笑いコンビ・ハリセンボン近藤春菜さんを飲~ますのだ。想像しただけでも、あの脂肪で窒息死しそうだ。

 ぼくは長年、どうすれば面白い文章が書けるか、ずっと探求してきた。テレビを観るときにはお笑い番組を選び、プロである噺家や漫談家、漫才師などの話芸を観察する。

 日常生活でも「ワーッ!」と受ける人は、たいてい決まっている。が、あとで冷静に考えて、何があんなに面白かったかと振り返ると、「中身はほとんどなかった」と気づくことも少なくない。笑いは、会話の潤滑油であり、内容などどうでもいいのだ。

 だた、書き言葉となると、笑いを取るのはがぜん難しくなる。だから、プロの笑いを自分流に「字になるか、ならないか」で評価する。

 そして先日、ふと思いつき、インターネットで『笑点』の観覧に応募した。後で知ったのだが、毎回、応募者は定員の10倍以上だという。それでも幸運なことに、一発で招待券をゲットできた。会場は、東京ドームの南隣にある後楽園ホールだった。開場の1時間前に着いたが、すでに東京ドームのゲートまで観覧者の列が続いていた。中高年に混じって、小中学生やOLグループも結構いる。

 ホールは立ち見の人もかなりいて、予定時刻より少し早めに「前説」の落語家が出てきた。「それでは声を出す練習をしましょう。サンプルをやります」と言って、自分で右拳を突き上げ「オーッ!」と叫んだ。会場の全員でいっしょにやるのかと思えば、一階席を「普天間チーム」、中段を「辺野古チーム」、上段を「徳之島チーム」と名づけ、対抗戦にした。注目の時事ネタだけに、会場は一気に沸いた。字にもなる笑いの取り方だ。こうして、笑い声を上げ、拍手をする練習はすんだ。

 司会の歌丸さんが、テーマソングに合わせて登場し、観客席の中央に座った。「いいお天気ですね。仕事する日じゃないよ」と軽くジャブで笑わせて、あいさつの収録はすぐに終わった。

 この日の「ハナ」は、漫才のオードリーだった。若林正恭さんが一方的にしゃべり、春日俊彰さんは時たま「ヘッ!」と言い、「トゥ~ス!」と声をあげるだけだ。お笑い芸人のあいだでは、「春日が口にすることは面白くもなんともない」という定説があるという。それでも、後楽園ホールの超満員の観客は大笑いしている。相方のしゃべりとの間や仕草、表情とギャグのひと言だけで笑わせる。つまり、高度ではあるが、字になるタイプの笑いではない。

 そこまでではないけど、書き言葉にしたら意外に面白くないのが綾小路きみまろさんだ。例の中高年ネタは、ライブやテレビで聞けば抱腹絶倒ものだが、試しに紙に書き出してみると恐ろしくつまらない。話が面白いというより、話し方が面白いのだ。

 それを知ってか知らずか、週刊ポストは『綾小路きみまろ 夫婦のゲキジョー』という2ページのコーナーを、よせばいいのに1年半もつづけている。ゲキジョーは「劇場」と「激情」をかけたのだろう。たとえば、こんな具合に始まる。

 <私が生まれ育った鹿児島では冠婚葬祭となると、夜を徹して芋焼酎での宴会が、焼酎だけにしょっちゅうで、小中学生の頃の私は「お酒を飲むと、大人ってこんなに陽気になるんだ」と、飲めや歌えの光景を眺めていました>

 「しょっちゅう」と「小中」に傍点がふってあり、「焼酎」とかけているのだとわかるが、しゃべりならともかく、読んだら白いシラケ鳥が南の空へ飛んでいく。

 それに比べ、同じ週刊ポストに1000回以上も連載されている『ビートたけしの21世紀毒談』は、たけしさんがしゃべったのを書き起こしたものだが、話芸と文芸のハイブリッドで思わず笑ってしまう。新党『たちあがれ日本』のネーミングを、バッサリ切る。

 <一番オイラが気に入っているのは、与謝野と平沼それぞれの頭文字をとって、「たちあがれ与平」っていう案だね。なんだか百姓一揆みたいで、元気そうじゃねェかってさ。選挙ポスターじゃ、2人してハチマキ巻いてクワしょってもらってね。元気そうってことなら、「たちあがれ前立腺」ってのはどうだい。もう党名ですらねェっての(笑い)>

 テレビ番組で、例外的に話芸をそのまま文芸にできそうで、ぼくにとっても大いに参考になるのがある。『人志松本のすべらない話』だ。いろんな芸人が体験談をしゃべる。それが、ほとんどの場合、起承転結か序破急になっている。

 ただひとつ、文章とちがっている点がある。芸人さんたちががやがやしながら作る番組のため、「オチ」つまり「結」のあとにも口を閉じないところだ。それさえ省けば、極上のお笑いエッセイとなる。

 笑点は、大喜利の収録で笑いの渦がつづいたのは言うまでもない。字になるものも、ならないものもあった。なかでも、泥棒ネタで受けをとる三遊亭小遊三さんの“毒”が、ワサビのように効いていた。

 さて、近藤春菜さんを丸飲みしたとして、それをそのまま下から出せばどうなるか。字にはならず、痔になるに決まっている。

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