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サッカーW杯は戦争でしょ 岡田JAPANの歴史的勝利を信じて

 サッカーのワールドカップは国と国との戦争である、ということを痛感したのは、1994年7月9日だった。

 ぼくは、イタリアで開催されるサミット(主要国首脳会議=G7)を取材するため、ナポリに来ていた。日本からは、自民党に担がれた社会党の村山富市首相が出席した。

 ぼくの同僚記者たちも、東京、ワシントン、ロンドン、パリ、ローマなどから続々とやって来た。

 最終日の9日午後2時、最後の首脳会議が開かれるはずだった。そこでの結論が「ナポリ・サミット宣言」として世界に発表され、一連のイベントのフィナーレとなる。

 各国の報道陣でごった返すプレスセンターにいると、昼前に、とんでもない情報が入って来た。「議長国のイタリアが、各国代表団に、首脳会議を2時間ほど遅らせてくれと言って回っているらしい」

 ぼくは、現地で雇った取材助手を使い、情報収集に当たらせた。「どうやら、イタリアのベルルスコーニ首相自らが、会議を遅らせるよう指示を出したようです」

 「理由はなんなの? 体調が悪いとか?」

 「それが…、ワールドカップでイタリアvs.スペインが2時5分にキックオフされるので、その試合中継が終わるまで待ってくれ、ということだそうです」

 「・・・・」

 確かに、W杯のアメリカ大会が開かれている真っ最中だった。あの“ドーハの悲劇”がなければ、わが日本も、初のW杯本大会出場を果たしていたはずだった。

 各国代表団のあいだでは、大騒ぎになった。アメリカのクリントン大統領をはじめ各首脳は、分刻みのスケジュールで動いている。サッカーを理由にいまさら2時間も会議をずらすなど、受け入れられるはずもなかった。日本代表団ももちろんそうだった。

 結局、ベルルスコーニ首相を説得して、首脳会談は予定通りに行われた。ぼくたちは、プレスセンターで刻々と入ってくる会談の情報を取って分析をしていた。でも、イタリアとスペインのジャーナリストたちは、センターの隅にあるテレビの前から動こうとせず、大声をあげて応援合戦している。

 この日の試合は準々決勝で、25分にイタリアのエース、バッジョが先制点をあげた。その瞬間、プレスセンターのテレビ前だけでなく、サミット会場のあちこちから歓声があがった。まったく、みんな、何をしにナポリへ来ているのやら。

 58分、スペインのカミネロが同点ゴールをあげ、またも歓声があがった。しかし、イタリアはしぶとい。終了間際の87分、再びバッジョが勝ち越し点をあげ、サミット会場には、歓声と悲鳴が交錯した。ゲームはそのまま終わり、首相以下、文字通り国をあげての応援を受けたイタリアが、決勝トーナメントを駆け上がった。

 後で聞くと、首脳会議中、司会役のベルルスコーニ首相は、試合経過をいちいちメモで受け取っていて、気もそぞろだったという。

 すべての仕事が終わった夜、ぼくは同僚特派員たちとタクシーで、予約していた打ち上げパーティのレストランへ行こうとした。しかし、タクシーはホテルの敷地からまったく出られない。

 歩道は、顔に黄緑・白・赤のペインティングをしたサポーターであふれ、車道は、窓を全開して上半身を乗り出し、イタリア国旗を狂ったようにふりながら徐行している人びとの車で埋まっていた。皆、大声で叫んでいる。「イタリア万歳! これで優勝だ!」

 狂気乱舞とはこのことか。特にイタリアは前回、自国で開いた大会で3位となっており、アメリカ大会にかける意気込みは半端じゃなかった。アメリカ大会でイタリアは、決勝でブラジルと0:0に終わり、PK戦で2:3と惜敗、準優勝となった。

 それから16年後、2010年W杯南アフリカ大会で、わが岡田JAPANは緒戦のカメルーンに何とか勝った。それまでの悲観論は吹っ飛び、一気に決勝トーナメントへ進む希望が出てきた。

 2戦目の強豪オランダに惜敗した夜、朝日新聞は「チームの評価が乱高下するのはなぜ」と一般市民に聞き歩き、翌6月20日朝刊で特集した。

 「日本の文化は中心が見えにくく、世論が流されやすい」「日本人はミーハー。周りに左右される。毎回そうだ」「国民もメディアも結果に一喜一憂しすぎだ」

 朝日は、こうまとめた。「昔から言われている日本人の『付和雷同型』の性質は、依然根強いと(市民は)見ている。…そんな日本人の性質に我慢ならないという人もいた」

 しかし、スポーツの国際大会など、結果に一喜一憂するためにあるんじゃないのか。どこの国だってそうだ。ナポリの夜にイタリア国旗の群れが乱舞する様を目の当たりにしてから、ぼくはそう確信している。

 朝日は、国際感覚に欠け、<日本人論>をステレオタイプにはめ込もうとしているとしか思えない。

 6月25日未明、岡田JAPANはデンマークと運命の一戦を交える。松井も大久保も遠藤も長友も、みんなちゃぶれ! そして、日本は勝ち、決勝トーナメントへ進む。

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