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虹色のところてん――大麻臨場(下)

           ~『日本人カースト戦記 ブーゲンヴィリアの祝福』番外編~

 インドのベナレスでジョン・レノン風から聞いた“虹色のところてん”の話は、ずっとぼくの頭の隅に残っていた。

 しかし、ぼくにとっての<法を破るドキドキ感>は、大麻ではなくアルコールだった。イスラムの戒律の厳しいパキスタンでは、ごく一部の例外をのぞいて、たとえ外国人の非イスラム教徒といえども、酒を堂々と飲める場所はなかった。だから、インドから出張するときには、スポーツドリンク専用の水筒にウィースキーをたっぷり詰めて飛行機に持ち込んだ。

 あるとき、ラホール国際空港のセキュリティチェックで引っかかった。係官は、不審な顔をしてちょっと水筒を嗅いでニタッとして返してくれた。彼らにはアルコールを取り締まる職務はない。そうした官僚主義のおかげで見逃してもらえた。

 それから4、5年経ち、今度はドイツへ赴任すると、また大麻の話をよく見聞きするようになった。ボンに住んでいたから、オランダまでは車や特急電車ですぐだった。

 オランダでは、喫茶店でマリファナ(乾燥大麻)をごくふつうに売っている。個人的興味はなかったから買うことはなかったが、若者たちの間では、リラックスするため気軽に吸われているらしかった。

 出張や家族旅行で行ったイタリアでも、薬局で売られている、と聞いた。

 日本で大麻を禁止したのは、第2次大戦後、日本を占領・統治したGHQだったと最近知った。そう古い話ではない。つまり、大麻政策はアメリカから持ち込まれたのだった。

 しかし、アメリカのカリフォルニア州では、2010年11月、大麻を合法化するかどうかの住民投票が行われる。州政府は、極端な財政難に苦しみ、大麻を認めて税金をどっさりかける算段のようだ。5月の世論調査では、州有権者の49%が賛成、41%が反対だった。

 アメリカの連邦法で大麻は栽培、所持とも違法とされている。しかし、以前から医療目的なら許されており、医師の処方さえ受ければ堂々と吸える。アメリカの17歳前後の42%が経験者という政府のデータもある。アメリカでも、「大麻の成分は脳に悪影響を与える」「大量に吸うと精神疾患を引き起こす可能性もある」と警告する声もある。だが、国民の間に日本のような罪悪感がないのも事実のようで、大麻に関してはずっと大らかだ。

 日本でも、この1、2年、大麻をテーマとする本の出版や雑誌の特集が相次いでいる。そのほとんどは、身体や社会に大麻が与える影響について冷静に検討し、「解禁してもかまわないじゃないか」「少なくとも医療目的には許可すべきだ」といった結論を導き出している。

 大麻を解禁している国では、嗜好品として人生の彩り、幸福につながるものとしてとらえる傾向がある。

 日本では、大麻→麻薬→見も心もぼろぼろ→「人間やめますか、それともドラッグやめますか」みたいな感じがある。それは、もとをただせばGHQが植え付け、国民が「ハハーッ」と恐れ従った一種の先入観にすぎないようだ。

 嗜好品と言えば、非イスラム教国の日本では、まず酒類が挙げられる。しかし、飲酒運転や酔ったうえでの暴力で命を落とす人は、世界で1年に約250万人もいる。日本国内だけでもアルコール依存症の患者は約80万人いて、その予備軍も約440万人いると推計されている。「それでも控えめな数字で、1000万人は危ない」という医療関係者もいる。

 ぼくのある親しい友人一家は、大黒柱の酒によるDVが原因で家庭崩壊してしまった。日本がまず規制すべきなのは酒のほうじゃないか、と愛飲家のぼくでさえ思う。

 一方で、マリファナ運転による死亡事故とか死に至らしめる暴力事件、あるいは吸引による死者などという話は、解禁国でも聞いたことがない。

 アメリカのニクソン大統領は、1972年、「大麻を厳しく取り締まらなければならない」と、「マリファナおよび薬物乱用に関する全米委員会」を作った。大統領自ら委員会のメンバーの過半数を選任する力の入れようだった。委員会の結論はこうだった。

 「マリファナの吸引で起こる身体機能の障害について、決定的な証拠はない。極めて多量に摂取しても、それだけで致死量に達することは立証されていない」「マリファナが暴力的ないし攻撃的行為の原因になることを示す証拠もない」「マリファナの使用は犯罪の原因とはならず犯罪とも関係しない」

 ニクソン大統領は、この報告に烈火の如く起こり、レポートの受け取りを拒否したそうだ。WHOをはじめどの信頼すべき報告書でも、同様の結論が導き出されている。大麻を吸うと、ハードドラッグへの入り口になる、という論も科学的根拠はないという。<大麻=麻薬>というのは、ある種の都市伝説みたいなものなのだろう。

 日本でも、財政難に苦しんでいるのだから、大麻を解禁したらどうか。全国で一律に、というのが無理なら、大麻特区を作ればいい。たとえば、高齢者だらけで村として限界に達しつつあり「限界集落」と呼ばれている信州の小谷村などを、大麻特区にすればどうなるか。おじいちゃん、おばあちゃんと若者たちが集って楽しく大麻パーティを開き、村は大いに活性化するんじゃないか。そうなれば、ぼくもちょっと無理して参加させてもらい、虹色のところてんを見てみたい気もする。

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