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アメリカという超大国のすごさとえげつなさ(上)

 マスメディアの報道で、ときたま、ほんとかなぁ、なんか裏がありそうだな、というネタがある。アメリカでトヨタ車のリコール問題が吹き荒れたときも、不審に思い、推移をチェックするため、関連記事をファイルしておいた。

 ぼくの今回のトヨタ・ファイルで、内容的に一番古い情報は、2009年8月28日の交通事故だ。トヨタで品質保証を担当する佐々木眞一副社長がこう振り返っている。

 この日、サンディエゴでレクサスが走行中に事故を起こし、アメリカ人一家4人が死亡した。担当常務を現地に派遣して調べさせると、アクセルペダルが運転席のフロアマットに引っかかり、もどらなくなったのが原因らしいとわかった。

 トヨタは、NHTSA(アメリカ運輸省の高速道路交通安全局)とも相談して、事故から1か月後には、フロアマットの取り外しをユーザーに要請した。

 しかし、秋以降、アメリカの世論はトヨタに対してどんどんきびしくなっていった。年明けには、「アクセルペダルのもどりが遅い」といったクレームも出てきた。

 アメリカ国内では、疑惑も報じられた。「実は、電子スロットルに重大な問題があるのに、それをトヨタは隠そうとしているんじゃないか」

 電子スロットルを搭載したトヨタ車は、全世界で4000万台も販売しているのに、その不具合による事故など、1件も起きていなかった。技術的な自信を持つトヨタは、当然、構造・設計による欠陥などないことを主張した。

 2010年2月には、ラフード・アメリカ運輸長官が「すぐにトヨタ車の運転をやめるべきだ」とまで発言し、バッシングはピークに達した。

 日本で、一連の報道を注目していると、「あぁ、トヨタは狙い撃ちにあっているな」と思わずにはいられなかった。個々の事故や欠陥疑惑の報道は、一見、ばらばらに行われているようにみえる。が、ぼくには、その陰に隠されたとてつもない陰謀があるように感じられてしかたがなかった。

 トヨタは、アメリカ発の大騒動のなかでも、「技術的には問題がない」「社内試験でも、暴走するなどの現象はまったく起きていない」と言いつづけた。

 それなら、真の原因はどこにあるのか。ぼくはひとつの仮説を立てた。トヨタがひどいバッシングに遭い、売り上げが激減すれば、得をするのは誰か。いうまでもなく、GMやクライスラーなど経営危機に見舞われたアメリカ系ライバル企業ではないか。

 バッシングの陰に、アメリカ政府やその情報機関、情報機関の手が回ったメディアの動き、3大車メーカーと政治の黒い癒着はないか、と疑ってみた。

 アメリカの情報戦のすごさは、ぼく自身、米ソ冷戦時代にいやというほど味わっていた。ニューデリー特派員だったころ、最大のネタは、アフガニスタンで展開されている米ソの代理戦争、つまり内戦だった。

 アメリカは、パキスタン北西部などを後方拠点とするアフガン反政府ゲリラに軍事援助をしていた。ソ連は、アフガニスタンの首都カブールを押さえたナジブラ共産主義政権を軍事的に支えていた。

 そういう構図のなかで、米ソの諜報戦、情報戦が火花を散らしていたのだ。ぼくが取材できるのは、パキスタンをふくむアメリカの影響下にある国々だけだったから、自然、入手できる情報はアメリカ寄りにならざるをえない。

 ニューデリーでもイスラマバードでも、アメリカ大使館付の駐在武官が行うブリーフィング(背景説明)が頼りだった。「カブール政権の発射したソ連製スカッドミサイルで、民間人約300人が虐殺された」。こういう情報が淡々とブリーフされるのだ。

 ぼくたちには、それを現地で確認するすべはなく、プロパガンダ臭いなぁと思いながらも、「西側軍事筋によると」という表現で原稿を書く。ロイターやAFPなど国際通信社の記者らも参加しているから、その怪しげな情報が、“大ニュース”として世界中に流れていくのだった。

 ソ連はソ連で、各国出身のモスクワ特派員を通じて、「反政府ゲリラによるアメリカ製ロケット弾により、女性や子どもをふくむ民間人多数に犠牲が出た」などと発表した。

 さて、昨秋に始まったトヨタバッシングは、今春になって流れが変わった。「実は運転操作ミス」という報道が次々と行われるようになった。

 そして、2010年7月30日、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の電子版は、ついにとんでもないことを報じた。ぼくの仮説が確信に変わるスクープだった。しかし、日本のマスメディアは、なぜか、ほとんどこれを報道しなかった。トヨタの名誉回復のため、そして、アメリカのえげつなさを世界に知らしめるために、でかでかと伝えるべきなのに。

 そのえげつなさが、アメリカを超大国たらしめているんだろうが、狙いをつけられて情報戦を仕掛けられたほうはたまったもんじゃない。

 <トヨタ自動車の大量リコール問題で、23件について、急加速の原因が運転者の操作ミスとみとめられたのに、それをNHTSAが意図的に公表しなかった疑いのあることが分かった。7月にNHTSAを退職した元幹部が、実名で告発した。>

 くだんのラフード・アメリカ運輸長官が、公表しないよう圧力をかけた!、という。

  --毎週木曜日に更新--

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