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戦略を誤った小沢サン vs.マスメディアの闘い

 民主党代表選が、2010年9月14日に行われた。あの選挙で戦ったのは誰と誰だったのだろう。そりゃ、菅直人首相と小沢一郎氏だろう、というのはあまりにも表面的な見方だ。官僚vs.小沢、検察vs.小沢、アメリカvs.小沢などの側面があった。なかでも目立ったのが、マスメディアvs.小沢だった。

 メディアには大きく分けて3種類ある、とぼくは思っている。国民世論に大きな影響力を与えるのがマスメディアだ。これには、5つの全国紙とNHKや民放キー局がある。電通など大手広告代理店も陰に控えている。

 次のカテゴリーは中規模のメディア、すなわちミディアムメディア(ミディメディア)だ。週刊誌、月刊誌、夕刊紙、ネットメディア、キー局系列以外のラジオ局、CSテレビなどがある。これらの影響はあくまでも限定的で、マスメディアほどの力はない。

 3つ目のカテゴリーは、小規模のミニメディアだ。ミニコミ誌など無数にある。

 テレビや新聞の代表選報道を冷静に見ていたひとは、マスメディアがものすごい小沢バッシングを展開していたことに気づいただろう。

 アメリカのメディアは、たとえば大統領選で誰を支持するか社説で明言する。しかし、日本のメディアは選挙に際しそうしたことはしない。だが、ちょっとあいまいな形で特定の候補を応援したり、ネガティブキャンペーンをしたりする。

 民主党代表選は、そのネガティブキャンペーンの典型的な例だった。マスメディアとひと口に言っても、左の朝日から右の産経まで政治路線はかなりちがう。しかし、代表選では“大本営発表”かと思えるほど足並みがそろっていた。

 これは、戦争の過去を持ち出すまでもなく恐ろしい現象だ。マスメディアの問題点を知るには、ミディメディアに注目すればいい。ラジオの文化放送では、フリーのジャーナリスト江川紹子さんが鋭く指摘していた。「政治とカネ、政治とカネと、大新聞やテレビは枕詞みたいにして小沢さんを糾弾している」

 週刊ポスト、週刊朝日など雑誌のミディメディアも、東京地検特捜部が主役となりマスメディアが囃し立てた小沢氏の政治とカネ問題に疑問を投げかけた。明らかな“小沢応援団”の日刊ゲンダイは、正面から援護射撃した。

 ジャーナリストの上杉隆さんもミディメディアで言う。「なぜ、検察は小沢さんを狙い撃ちにしたのか。そして、記者クラブメディア(マスメディア)は、なぜ小沢さんだけをバッシングするのか」

 小沢一郎氏が政権を取れば、検察をふくむ官僚機構に手を突っ込みかきまわす。明治以来の官僚支配が崩れるとの危機感から、検察は小沢氏の政治資金を徹底的に洗い出し、摘発しようとした。

 陸山会の資金にからむ捜査は1年半にも及んだが、ついに小沢氏の直接的関与は立証できなかった。起訴された元秘書らも、公判では無罪を主張し争う姿勢をみせている。

 松本サリン事件で濡れ衣を着せられた河野義行さんは、興味深いコメントをあるミディメディアのインタヴューで口にしている。小沢氏の政治とカネ報道についてどう思うか聞かれこう答えたのだ。

 「いったん疑われたら、メディアは『やってないというなら、お前がそれを証明しろ』とくるんです。しかし、やっていないことは証明できません」

 マスメディアの洪水のような政治とカネ報道によって、国民の多くは小沢氏を「限りなく黒に近いグレー」と信じ込んでいる。だが、小沢氏の立場から言えば、答えはひとつしかない。「検察があれだけお調べになっても何もなかったのですから、何もないとしか申し上げられません」

 マスメディアが小沢バッシングをつづける理由は、検察とは別のところにもある。小沢氏は「私が首相になったあかつきには、即刻、政府のすべての記者会見をオープンにする」と明言し、事実上、記者クラブを解体することを宣言していた。これに対し、記者クラブの加盟社で情報を独占するマスメディアが、猛然と小沢排除に出たのだ。

 それどころか、週刊ポストによれば、ある民放の社会部記者が、代表選の直前、自社の実施した世論調査のデータを持って民主党議員の事務所を回り、「世論はこうですよ」と暗に菅首相に投ずるよう働きかけていたという。マスメディアは末期症状かも知れない。

 ぼくの長年の友人でもある民主党国会議員は、代表選の最後の演説を聞いて小沢氏に1票を入れたそうだ。政治路線からみれば友人は菅首相に近い、とぼくは思っていたのだが。「小沢さんの演説は自身の政治哲学をしっかりと述べ、いたずらに情に訴えることをせず、国民の生活を守る政治をリードしたいという気持ちのこもった素晴らしいものだった」

 民主党国会議員の5割、地方議員、党員・サポーターの4割が小沢氏に投票した。それでも、マスメディア全部を敵に回したのが敗因だろう。

 小沢氏は戦略を誤ったのではないか。マスメディアと対決するのは、政権を取り磐石の基盤を作ってからにすべきだった。まだ、小沢氏復権の可能性は大いにありそうではあるが。

 とはいえ、ぼくは別に小沢支持ではない。外交政策など首をかしげるところが多い。

 --毎週木曜日に更新--

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