« 戦後、学校で教えずメディアも伝えなかったこと | トップページ | 日曜夜の密かな愉しみができた »

ひな祭りは中華の“役得料理”で盛大に

 ロビーには豪華なひな人形が飾られていた。娘は、結婚式場でウェディング・プランナーの仕事をしている。「うちのA副料理長はまだ34歳と若いのに中華料理の達人だから、一度食べにきたら。きっと出血サービスしてくれるよ」

 その誘いに乗らない手はない。一人暮らしをしている息子も誘い家族みんなで行くことにした。事前に娘はかみさんに相談してきた。「予算はいくらにする? 税サービス料別と込みがあるんだけど」。その話を伝え聞いてぼくは読んだ。「込み込みでひとり4,000円くらいでいいんじゃない。どうせ、料理の中身は変わらないと思うよ」

 実は、何十万もの人出の初詣で、A副料理長と偶然会って娘に紹介された。立ち話だったが、ザックJAPANの話で盛り上がった。Aさんなら、きっとすごい料理を出してくれる。

 当日、式場の玄関では、旧知のS支配人が出迎えてくれた。「仏のS」と呼ばれている人で、娘が公私にわたってとてもお世話になっている。個室に、4人分のテーブルウェアがセットされていた。

 「Aさんは、総料理長に見せたメニューは表向きで、予算無視の最高の食材を使ってくれるんだって」。娘の話にいやがおうでも期待が高まる。脱税のための二重帳簿というのはよく聞くが、二重メニューっていうのもこんなときにはあるんだ。総料理長はもう引き揚げたそうで、Aさんの独壇場となる。

 個室の壁際には、紹興酒のボトルが置いてあった。サービス係のHさんがぼくのところに持ってきて言った。「10年ものです。支配人からのサービスです」。飲み物のメニューを見ると、3年ものが3,000円だから10年ものなら4,500~5,000円か。やったね。

 まず運ばれてきた前菜を見てびっくりした。小さめながら丸ごとのアワビ煮がどんと目立ち、トマトのキャビア乗せ、金華ハム、ボタンエビのから揚げなどが華麗に盛りつけられている。「一流ホテルなら、これだけで4、5,000円は取られるんじゃない」。かみさんが、よだれを流さんばかりに言う。

 次に出てきたのがフカヒレとホタテ貝柱のスープ・パイ包み焼きだった。「中華にこんな料理もあるんだ」。息子が感心して言う。フカヒレのスープはかみさんのリクエストだった。フカヒレを丸ごと出すといくらなんでも上司の手前まずいので、パイ包みにしてくれたんだろう。味は絶品としか言いようがない。

 3品目は北京ダックとタラバガニの天ぷらだ。カニは目一杯大きい。「今日も忙しくてお昼を食べたのが遅かったから、コースの最後まで食べきれるかなぁ」。娘は早くもため息をついているが、箸はとまっていない。

 サッカーで言えば、前半戦の終盤といったところか。「次は、Aさん自身が運んでくると思うよ」。娘の言葉どおり、副料理長が大きなお皿を持って個室に入ってきた。

 ニンジンを彫刻した龍を中心に、大きなエビのチリソース煮などエビ料理3種が盛りつけられている。「すごーい」。龍は台座の部分を抜いても高さ50センチはある。「特大のニンジンを15本使って作りました。1週間かかりました。あわせて25時間くらいかな」。

 ニンジンの彫刻については、Aさんから初詣のときに聞いていた。Aさんは東京都内のさまざまな一流レストランで修行し、ある店でニンジン彫りの達人に出会った。でも、その作り方は伝授してもらえず、みようみまねで腕をみがいたという。S支配人は自慢していた。「うちの料理人のなかでも、彫刻ができるのはAだけです」

 Aさんは、料理で人を楽しませるのが根っから好きなんだろう。盛りつけかたひとつとってもまるで高級フランス料理だ。中華の枠におさまらないセンスが感じられる。

 近くここの大ホールで、自衛隊員1200人が集う立食パーティがあるといい、その会場にもこの龍の彫刻を飾るという。というより、総料理長にはパーティで使うという口実で、Aさんはニンジンを彫りつづけたようだ。

 肉料理のメインはステーキのレンコン素揚げ乗せだった。A4ランクのビーフに、中華の代表的スパイス八角が効いている。「中華のビフテキというのは初めてだなぁ」。とても柔らかく、お箸で十分食べられる。

 魚料理のメインは大きなハタの姿蒸しだった。これは、Aさん自身が取り分けてくれた。「日本海で水揚げされたものです。脂が乗っていておいしいですよ」。ぼくたち夫婦の大好物パクチー(香菜)と白髪ネギ、ショウガの千切りが乗っている。胃袋のほうは限界に近づいていたが、あっさりした料理だから何とかいけた。

 ゲームで言えば後半ロスタイムに入るころ、小籠包が出てきた。これもかみさんのリクエストしたものだ。「スープのたっぷり入った本格派には、意外に出会わないから」。そして、締めは中華ちまきだ。これは娘が頼んでおいたという。もっちりとすごくうまいが、ぼくはとても食べきれない。息子に助け舟を出してもらった。

 デザートはカクテルグラスに入った杏仁プリンで、なんとツバメの巣が乗っている!

 お会計は、知らなかったが社員割引があり、総額12,585円だった。うそだろ。どう考えても、料理だけでひとり15,000円はするんじゃない?

 S支配人、A副料理長、ごちそうさまでしたぁ。ま、こんな役得もたまにはいいよね。

 --毎週木曜日に更新--

|

« 戦後、学校で教えずメディアも伝えなかったこと | トップページ | 日曜夜の密かな愉しみができた »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/540025/51017907

この記事へのトラックバック一覧です: ひな祭りは中華の“役得料理”で盛大に:

« 戦後、学校で教えずメディアも伝えなかったこと | トップページ | 日曜夜の密かな愉しみができた »