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日曜夜の密かな愉しみができた

 リオーッ! リオーッ! その選手がボールを持つと、スタンドから大歓声が沸き起こる。ユニフォームの背には「ryo」と書かれているが、欧米人には「リョウ」の発音はむずかしく、「リオ」と呼ばれる。

 オランダサッカーの名門フェイエノールトで、2011年2月6日にデビューしたFW宮市亮選手だ。まだ愛知県・中京大中京高校の3年生で、フィギュアスケートの浅田真央ちゃんや安藤美姫選手の後輩にあたる。

 左のウィングでプレーし、スピードとドリブルが素晴らしい。日本にこんな高校生がいたのか、と驚かされる。守備にはまだ課題がありそうなものの、才能とスケールの大きさは、ドイツで活躍する香川真司選手(21)以上かもしれない。試合終盤に足が止まり疲れたのかなと思っていると、突然、60メートル、70メートルもドリブルで持ち上がり、相手DFを翻弄して見せ場を作ったりする。やや破天荒なプレーぶりがまたいい。

 ヨーロッパのサッカーは、時差の関係で日本の未明にキックオフされるのがふつうだが、日曜に行われるオランダのサッカーは幸いこちらの午後8時半とか10時半から始まるので、生で観るのにちょうどいい。

 といっても地上波での放送はまだなく、ぼくはネットの『ニコニコ動画』で観る。もともと、イタリアで輝く長友佑都選手(24)が世界的ビッグクラブのインテルミラノに移籍したのをきっかけに、月額税込み525円を払う会員になった。ヨーロッパのサッカー中継の他、売れていない芸人のお笑いやエロものまで多くの番組がある。有料会員は110万人を突破したとかで、ネットメディアとしてNHKも提携番組を企画したほどだ。

 日曜の夜は、その動画サイトで宮市選手のプレーを観るのが何よりの愉しみとなった。フェイエノールトは、1月、ライバルのPSVに0対10で歴史的大敗をしたのをふくめ、3戦3敗と絶不調で、2部降格の瀬戸際に立たされていた。そこへ宮市選手が入ると、3勝2分けと調子を取り戻し、リオはクラブサポーターから「救世主」と呼ばれるようになった。日本で試合が中継されたことはないのに、新聞やニュースで急に取り上げられられるようになり、知名度は赤丸急上昇中だ。

 ニコニコ動画のサッカー中継は、画像の質が悪く怪しげなムードを漂わせる。VHSでダビングを重ねたアダルトビデオのような感じだ。視聴者も1,000~2,500人ほどと限られている。試合を観ながらコメントを書き入れることができ、それが瞬時に画面の右から左へ白い文字で流れていく。同時にたくさんのコメントが入ると、“流しそうめん状態”で画面をふさぐ。それがまたアングラっぽくていい、という人も多いらしい。

 ニコニコ動画のシステムはよくわからないが、厳密にいえば著作権を侵しているようだ。あるときは、「主」と俗に呼ばれる番組運営担当者が、オランダでの試合なのに「ロシアの人の画像を受信してお送りしています」とコメントしていた。

 その主も、サッカーの知識が豊富とは限らない。時によっては、「ベルギーの首都はどこでしたっけ。アルジェリアはアルジェでしたよね」とか、サッカーとまったく関係がない雑談がつづくこともある。ネットならではの、ゆるーい世界だ。

 ニコニコ動画の生中継には欠点も少なくない。画像の質の悪さが筆頭だが、たいていの場合、30分で番組枠が終わってしまう。試合の途中でも切れるので、自分で新たな中継チャンネルを探さなければならない。

 ぼくは、Jリーグで特別に応援しているクラブがあるわけではないが、“代表監督の目”で、ザックJAPANに招集できそうな選手を探すのが趣味といえば趣味だ。その目で見れば、宮市選手はぜひ早く日本代表でプレーして欲しい。

 そう思っていたら、3月4日付け朝日新聞のJリーグ開幕特集で、サッカー担当の3記者が、気の早いことに、2014年W杯ブラジル大会の先発メンバーを予想していた。その1トップとして、何と3記者とも宮市選手を挙げているのだ。まだ日本代表で1回もプレーしたことのない18歳の選手に対し、いかに大きな期待がかけられているかがわかる。

 3月6日の試合で、フェイエノールトは1月ごろの不調を再現するかのように、ひどい出来だった。アウェイでもあり、敵に雨あられとシュートを打たれた。それをGKがかろうじて防ぎ、カウンターアタックで何とか1点をもぎ取って勝った。

 そのとき、宮市選手はボールを持つ味方FWに平行して猛然とダッシュし、ペナルティエリアですっと左へ流れた。しつこくマークしていた相手DFは、それにつられて左へ開き、中央にぽっかりスペースができてゴールに結びついた。

 「宮市やったぁ」「あの俊足、やっぱりすごいねwww」

 ニコニコ動画の画面には、“流しそうめん状態”でコメントが殺到した。サポーターの感動を字として見ることができるのは、ニコニコ動画ならではだ。

 宮市選手たち18歳にはG大坂の宇佐美貴史、横浜Fマリノスの小野裕二両選手など逸材が多く、プラチナ世代と呼ばれる。Jリーグの新人には、スピードで宮市に負けない名古屋グランパスの永井謙佑選手(22)もいる。

 日本も特別招待された今年7月のコパ・アメリカ(南米選手権)やW杯ブラジル大会に向け、楽しみは増すばかりだ。行けーッ、リオ!!

 --毎週木曜日に更新--

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