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消費者は、闘わなければ

 娘は、首都圏のX市でアパート暮らしをしている。職場とたまに帰る実家のパソコンを使っていたが、自分のがないと不便だということで、前から買いたがっていた。

 とはいっても、仕事の都合でいつ引っ越すかもわからず、光回線やADSLなど有線のものは契約しづらい。

 ある日、X市のショッピング・モールへ行くと、一見、うってつけのキャンペーンをしていた。<ソフトバンク ポケットWiFi>という公衆無線LANサービスの一種を契約すれば、モバイルパソコンがただでついてくるという。

 パソコンにてのひらよりも小さい装置をつなぐと、無線でインターネットが使え、ネットを接続するプロバイダーとの契約も不要という。セキュリティソフト代を入れても、最大で月額5000数百円だ。有線方式の6割くらいでネットが使い放題という計算になる。

 販売員に自分の住所を伝えると、「ああ、その場所なら十分使えます。山の中などではむりですが」と言われ、クレジットカード払いで契約した。

 娘は、アパートに持ち帰り、わくわくしながら説明書とおりにセッテングした。しかし、携帯電話とおなじように無線のアンテナが立つはずなのに、1本も立たない。泣きそうな声で実家に電話してきた。

 話を聞いて、ただより高いものはないっていうからなぁ、と思った。セッテングがまちがっているのか、機械的なエラーがあるのか、それとも無線が弱いかだ。

 職場に持ち込んで試させると、オフィスでも1本も立たないが、建物の入り口付近なら1本か2本立ち、かろうじてインターネットにつながったという。でも、そんな場所で私用のパソコンを使うわけにもいかない。

 今度の休みの日に実家へ持ってきて試してみて、それでもだめだったら、解約するようアドバイスした。

 わが家で電源を入れると、アンテナは2本立ち、速度はやや遅いがネットを使えないことはない。娘はしばらく、お試しで何件か検索をした。だが、アパートで使えなければ意味がない。実用に耐えないから解約しよう、ということになった。

 契約書をよくチェックすると、ソフトバンクそのものではなく、販売代理店J社の名前が載っている。娘では軽くあしらわれる恐れがあるから、ぼくが交渉することにした。

 代理店に電話すると、若い女性が出た。「よほどの僻地でもないかぎりつながるはずです」「でも、げんにアンテナが立たないんだから、欠陥システムじゃないですか」「それでは、アパートの住所を教えてください」

 その住所なら、ソフトバンクWiFiのサービスエリアに入っているという。「エリア内でも、実際には空白域があるんじゃないですか」「ソフトバンクの携帯がつながるところなら、大丈夫なんですけど」「うちはソフトバンクは使ってないから、わかりません」

 都心から10キロほどのわが家でも、アンテナ2本がせいぜいということは、かなり電波が弱いことをうかがわせる。かつて、日本で携帯電話が普及し始めたころ、銀座のど真ん中でも電波の強いところを探して通話しなければならないような時期があった。<ソフトバンク ポケットWiFi>は、いままさにそういう段階にあるのじゃないか。ただでモバイルパソコンをつけるというのも、実験台にするつもりからじゃないのか。

 らちが明かないので、ちょっと強い口調でと要求した。「ソフトバンクに直接、娘の住所を伝えてほんとにサービスエリアに入っているかどうか確認してください」

 しばらくして、折り返し電話がありトーンが変化してきた。「ビルの陰などでつながりにくい可能性はあるようです」
 「そんな使えない商品、キャンセルが相次いでいるんじゃないですか」「ええ、まあ」

 ぼくは別の分野の営業マンに聞いたことがあるが、ノルマがきびしく、商品がほんとにその人に有用か、実際に使えるかなんてことは気にしないで、とにかく売りつけるのが第一だという。

 X市でキャンペーンをしていたJ社販売員もそうしたたぐいだろう。代理店の女性はこんなことを言う。「お使いになった電話料を払っていただければ、返品に応じます」

 ぼくは少し頭にきて、「実際に娘が使った電話料なんてたかがしれているけど、それもお試しでやった分だから、こっちが払うというのは筋がちがうんじゃないですか」

 がんがん言ってやると、相手は「もう一度、ソフトバンクに相談してみます」ときた。こういう馬鹿げたことに費やす時間と労力がもったいない。

 結局、機種本体と付属品など一式を着払いで返送すれば、電話料金も請求しないという当たり前のことで落着した。面倒臭い話だが、これも娘にとっては人生勉強になった。

 後日、日本最大の家電売り場面積を誇る某量販店へ、娘と行った。「ああ、ソフトバンクはまだ無線網が弱くてだめです。実用的なのはやっぱりドコモですね」。半年前の型落ちパソコンを格安で買い、ドコモの無線LANを契約した。そのほうが、“ただのモバイル付き”より実は安い。

 娘のアパートでも、ネットはサクサクと動き、モニターでテレビも観られて快調という。消費者は闘わなければならない。

 --毎週木曜日に更新--

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