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大震災 国民の真の悲劇とは

 2011年3月11日の東日本大震災に際し、テレビに映し出される津波とその爪跡を観て、巨大な喪失感、無力感に襲われた。2日後、世界中のサッカー関係者から日本を励ます声をネットで読み、涙が出た。同じ日、就職してひとり暮らしをしている息子も、別のサイトで世界中の人びとが日本を応援してくれているのを知って泣いたという。

 被災したシンガーソングライターなどが、それでも立ち上がろうといろいろな曲を作っている。だが、個人的には、中島みゆきさんの『時代』がこの状況にいちばんふさわしいと思う。

 ♪今はこんなに悲しくて 涙も枯れはてて
   もう二度と笑顔には なれそうもないけど…… 
 
 大変な国難ではあるものの、時間とともに復興はできるだろう。ジャーナリストの田原総一郎氏などは「第2の敗戦」と呼んでいるが、はたしてそうか。手元の資料と大震災の被害状況を伝える新聞報道を比べてみると、今回の人的、物的な被害は、第2次大戦に負けたときのざっと40分の1くらいに過ぎない。

 大震災ショックで、みんなかなり悲観的になっている。しかし、物事は歴史をふりかえり、未来をみすえ、冷静にみなければならない。

 1945年、広島、長崎に原爆が落とされ、「100年間は草木もはえない」と言われた。ちょうど20年後に、ぼくは広島へ修学旅行で行った。原爆ドームと平和記念資料館を除いて、原爆で都市が壊滅したというのはほんとうだろうか、とさえ思った。

 今、いちばんやっかいなのは福島第1原発事故のその後だが、それも時間の経過とともになんとかなるだろう。

  ♪そんな時代もあったねと いつか話せる日が来るわ
 
  4月12日、首相官邸での記者会見で、時事通信社記者が菅直人首相に辞任について質問したが答えなかったという。産経新聞社の記者がそれを引き継いで厳しく追及した。
 
 「首相は、辞任するのか、との質問に答えなかったが、現実問題として与野党の(連立)協議にしても首相の存在が最大の障壁になっている。震災対応も後手に回り首相の存在自体が国民の不安材料になっている。いったい何のために、その地位にしがみついているのか」

 霞ヶ関の官僚たちからは、「よくぞ言ってくれた」との声があがったという。首相はそれでも続投の姿勢を示した。

 そして、香港のテレビ局が記者会見のやりとりを報道し、ネット経由で中国大陸向けに配信された。言論・報道の自由のない中国の多くの人たちは「思ったことを言える日本は素晴らしい」と、ネットに絶賛する書き込みをしたという。

 だが、肝心の日本国内では、会見のこのやりとりが新聞・テレビでは報道されなかった。政府とマスメディアの馴れ合いが、震災被害を増幅しているかもしれないことを、当の記者たちはわかっていない。読売OBのぼくは主に国際報道を担当していたから、国内の権力にはほとんど触れなかったが、マスメディアの体質は内部からみていてよく知っている。報道を“自粛”する国にあって、首相は無様に政権の延命を図っている。

 菅首相には、誰がみても今の国難に対応する器がない。

 ぼくは、駆け出し記者のときに赴任地の長野市で起きた小1袋詰め殺人事件を思い出す。平和な信州にあって、警察幹部はそれを「10年、20年に一度あるかないかの大事件」と呼んだ。

 事件が発生すると、ぼくの上司のKデスクは宣言した。「俺は大きな刑事事件はほとんど取材したことがないから、指揮は本社から応援に来るデスクに任せる」。頼りない人だな、とは思ったが、後で考えればとても勇気のある英断だった。おかげでスクープを連発でき、ぼくは生まれて初めて本社部長から特ダネ賞をもらった。

 有事にあって、力のないものが上に立てば、戦うものも戦えない。Kデスクのようにあえて身を引くのは、器の大きさかもしれない。

 その点でも、菅首相は最低の指導者としか言いようがない。西岡武夫参議院議長は、菅首相に「即刻、辞任すべきだ」とする書簡を送った。記者会見や読売新聞への寄稿でも、その主張を繰り返している。三権分立を定めた憲法の下で、一方の三権の長がもうひとりの三権の長を引きずりおろそうとすることに対し批判の声もある。

 読売は露骨に“菅おろし”に走り、朝日は「危機の中で『倒閣』の愚」と社説に書き、西岡議長らを批判した。

  「首相の存在自体が国民の不安材料になっている」という産経記者の言葉は至言だ。

 だが問題は、首相を下ろし大連立政権を組むにしろ、有事のトップにふさわしい人材が永田町にいないという現実だ。それこそが、本当の国民的悲劇ではないか。

 --毎週木曜日に更新--

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