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続・消費者は、闘わなければ

 首都圏X市でひとり暮らしをしている娘からSOS電話がきた。「アパートの更新料と更新手数料の請求書がきたんだけど、いま手持ちのお金がないの」

 更新料は家賃1か月分、手数料は半月分プラス消費税という。勤めはじめてまだ2年の娘にとっては、けっこうな出費になる。

 ぼくは即座に答えた。「そんなお金、払うことないよ。こっちで直接、不動産会社にかけあってあげるから。うまくいけば、大幅減額かゼロになると思うよ」

 じつは、ぼくのオフィス兼自宅も賃貸で、2010年暮れの更新時にはY不動産会社、オーナーとかけあって、更新料、更新手数料ともゼロにした実績がある。

 話は、2010年5月27日にまでさかのぼる。ネットでニュースをチェックしていたら、産経新聞の大阪発で「『マンション更新料は無効』高裁判決3件目」という記事をみつけた。

 京都市北区の賃貸マンションの家主が、更新料を支払わない借り主に10万6000円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決が大阪高裁であった。裁判長は「更新料は賃貸人や管理業者の利益確保を優先した不合理な制度で、消費者契約法により無効」として、請求を棄却した1審判決を支持、家主側の控訴を棄却した。

 つまり、更新料というのは不合理な制度で、そんなものは払う必要はないという判断だ。この判決は使える、と思い、ぼくはパソコンに保存しておいた。

 さらに調べてみると、この大阪高裁判決の前年、京都地裁でも同じような判決があった。その判決を受け、借り主側の弁護団は声明を出した。「判決の流れは、もはや止められない。家主側は不当条項を速やかに見直すべきだ」

 そして、ぼくのオフィス兼自宅が更新時期となり更新料の請求がきたとき、その判決情報を武器にバトルをすることにした。

 まず、地元の消費生活センターに電話した。ぼくは駆け出しの新聞記者時代、消費者経済の担当をしていたこともあり、消費生活センターの裏表を知っている。それに司法記者をしていたこともある。電話に出たセンター職員はこうアドバイスしてくれた。

 「たしかに、流れとしては消費者保護を重視するようになっています。最高裁判所の判決が近く行われるとされているので、新たな更新料の請求に関しては支払いを保留し、最高裁の判断を待ったほうがいいのではないですか」

 センターではさらに、国土交通省所管の(財)不動産適正取引推進機構と、ある弁護士が主宰している賃貸住宅トラブル・ネットワークを紹介してくれた。

 推進機構の公式ウェブサイトをチェックすると、こんなQ&Aが載っていた。

 Q2 アパートを借りて2年間が過ぎ、更新することになりました。 不動産業者から更新料とあわせて更新手数料1か月分を払えと言われました。

 A2 一般には、不動産業者は大家さんから委託を受けて更新事務を行うものですから、その手数料は大家さんが負担すべきものです。(以上、抜粋)

 つまり、更新料は払わなくていい、という判決が相次いでいるだけでなく、更新手数料も借り主が払うことはない、と明言しているのだ。

 賃貸住宅トラブル・ネットワークに電話すると、O弁護士が丁寧に答えてくれた。「相次いでいる消費者有利の判決は、いずれも関西のものですが、こっち関東でもそれを参考情報として交渉してみる価値はあるでしょうね」

 ぼくは、Y不動産会社とオーナーに当てて、正式な書簡を送った。そのさい、もちろん、判決を伝える記事や推進機構の公式ウェブサイトのQ&Aを印刷して同封した。

 どう言ってくるかな、と思ったら、こっちが期限として指定した日ぎりぎりに不動産会社から<全面降伏>の電話がきた! 判決は最高裁で確定しているわけではないが、理詰めで支払い拒否をしてくる借り主には、案外かんたんに折れるものらしい。

 さて、娘のアパートのK不動産会社にも、同じように書簡を送った。後日、支店長と名乗る人物から電話があり、「更新料をなくすなら、代わりに家賃をいくらか上げる方向でどうですか」と言ってきた。しかし、ぼくは即座に拒否し「オーナーはどういう考えですか。よく話しあってからもう一度電話をください」と言って切った。内心は、2年契約だから、毎月、家賃の36分の1くらいの値上げが落としどころかな、と思っていた。

 ところが、数日後、「更新料も更新手数料もいただかないことになりました」と、こちらからも<全面降伏>の電話がきた!

 ぼくが言うのもなんだが、インドとドイツで暮らした経験から、日本人は、政治家をはじめ交渉ごとがほんとにへただと思う。落としどころの発想がない。判決や権威ある機関の見解などをもっともらしく持ち出されると、すぐに折れてしまう。だから、国際社会で馬鹿にされやすいのだ。

 ただし、入居時に更新料を払わないと宣言するのはやめたほうがいいだろう。入居を認められない恐れがある。更新時になってから、ぼくがやったように「消費者契約法第10条や判決のことを最近知った」と言って突っぱねればいいのだ。

 ぼくは、浮いた娘分の更新料と更新手数料にいくらかを足して東日本大震災への寄付金とし、その旨をK不動産にもメールで伝えた。それでいいでしょ。

 --毎週木曜日に更新--

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