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国王スキャンダルにみるスウェーデンの本当の顔

 北欧スウェーデンが、カルル16世グスタフ国王(65)をめぐるセックススキャンダルで揺れている。その空騒ぎぶりをみると、いかにもかの国らしい。

 現地の報道内容には一致しないところもあるが、総合すると、およそ次のようないきさつがあった。

 あるとき、グスタフ国王が複数の友人らと首都ストックホルムのストリップクラブへ行き、踊り子ふたりのレスビアンショーなどを愉しんだ。その様子を、恐らくはクラブ関係者が撮影し、金銭あるいは政治目的で利用しようとした。

 その動きを知った国王の親友アンデルス・レットストレーム氏は、2010年11月、マフィアのボスであるミラン・セヴォに接触し、「クラブオーナーが写真を公表しないよう働きかけてくれ」と頼んだ。一部報道では、多額の現金で買い取ることを申し出たが、法外な額をふっかけられたため交渉は不備に終わったという。

 そして半年後の2011年5月19日、国王のストリップ鑑賞と親友の裏交渉の事実が国内メディアによって報道され、大騒ぎとなった。

 民放のTV4は、クラブオーナーに取材したさい、国王がレスビアンショーをみている写真を確認した、と報道した。それによりスキャンダルの信憑性が一気に増した。

 5月23日、レットストレーム氏は各メディアにメールを送り、マフィア組織と接触したことを認めた。そこで問題は、国家元首である国王がストリップクラブに行ったというスキャンダル疑惑にとどまらず、マフィア組織と国王の関与疑惑に発展した。

 国王はすぐに関与を否定する声明を発表したが、メディアからの質問は拒否したため、疑惑は高まる一方となった。

 5月30日、国王はTT通信のインタヴューに応じ、「問題のクラブや、国家元首として行くのが“不適切”な他のいかなる場所へもへ行ってはいない」と語った。さらに、「そんな写真は存在していない」とし、「(マフィアと交渉したとされる)レットストレーム氏の行動にも関与していない」と全面否定した。だが、メディアも多くの国民もその発言をほとんど信じなかった。

 英字メディア、ザ・ローカルによると、スウェーデンでは先ごろ、暴露本『カルル16世グスタフ いやいやながらの君主』がベストセラーとなった。この本のなかで、国王は、有名女性歌手と1年あまり愛人関係にあり、世界各都市でストリップ劇場を訪れていたなど、セックスがらみのスキャンダルが暴露され、国民の顰蹙を買っていたところだった。

 今回のストリップ写真問題の渦中5月28日に公表された世論調査によると、「国王はその地位にとどまるべきだ」と考える人は44%で半数を下回った。また、41%は「娘のヴィクトリア王女に譲位すべきだ」と答えた。1年前の世論データでは64%が国王を支持し、譲位待望論は17%にとどまっていた。今回は、君主制そのものへの支持も、2010年3月の74%から66%にダウンした。

 「どうしてそんなに大騒ぎするの。スウェーデンはポルノもずっと前から解禁されているしフリーセックスの国なのに。国王だって男だから、ストリップくらいいいのでは」

 日本では、こんな感想を抱く人も多いかもしれない。国王の親友が犯罪組織のボスと接触していたという事実をのぞけば、「まあ、そんなこともあるでしょ」と。

 しかし、スウェーデンは、下半身問題に、ある意味日本よりずっときびしいお国柄だ。わざわざ国王の親友が“証拠写真つぶし”を試みたところにもそれがうかがえる。

 ぼくは、1996年の夏、1週間ほどストックホルムを取材で訪れた。人口78万人しかいない、日本でいえば大きな地方都市ほどの規模で、数日歩き回ればだいたいのことが分かる。そして気づいたのだが、この都市には猥雑さや隠微さといった、世界のどの都市にでもあるはずのものがない。リトル銀座はあるが、歌舞伎町も吉原も新宿2丁目もない。

 海があり、石畳の道路があり、洒落て風格のあるビルがたたずんでいる。ある日本の旅行ガイドブックによると、<ヨーロッパで日本人女性観光客に人気No.1の都市>だ。

 でも、ぼくには“隙”のなさがなんだか気に入らなかった。歩いた限り、「ちょっと一杯」といった居酒屋さえみつからず、息がつまりそうだった。滞在最終日の夕食を、ある日本食レストランでとった。カウンターに座り、1970年代の初めにストックホルムへやって来て、以来住みつづけているという日本人の板前さんと話した。

 「そうなんですよ。この国はヘンに整っていますね。フリーセックスとか言ったって、それは日本人が想像しているような、誰とでも寝るといったことではないですからね」

 当然と言えば当然だが、愛し合っているか、少なくとも気に入った相手としか深い関係にはならない。一方で、街には、男性が発散できる風俗産業が、少なくとも表向きはないという。「もてる人はいいですけどね。この国は男性天国どころか、ある人たちにとっては地獄かもしれない」と板前さんは言った。

 国王が訪れたというストリップクラブが、合法か非合法かはわからない。ただ、マフィアのボスが登場するところをみれば、怪しげな場所であるのはまちがいない。

 グスタフ国王のモットーは「スウェーデンのために、時代と共に」だそうだが、きれいごとの国にうんざりしているのは、国家元首その人かもしれない。

 --毎週木曜日に更新--

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