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日本の花火をクールジャパンの平和な核弾頭に

 新潟県長岡市の大花火大会は、いきなり「フェニックス」ではじまった。幅が2.8キロにもおよぶ超ワイド、圧倒的スケールのスターマインだ。

 もともと、この花火は、2004年の中越大地震からの復興を祈願して制作されたそうだ。不死鳥とは、よくも名づけた。

 素晴らしいのは、これを打ち上げるためのコスト約1000万円をはじめ、花火の作品群を打ち上げるためのコストが、一般市民や地元の企業、団体の寄付、協賛によって行われているという事実だ。花火の迫力だけでなく、毎夏、それだけのお金が集まっていることにも感動する。いかに、長岡市民が、フェニックスをはじめとする花火を誇りにしているか。

 夏休みをとって、かみさんと新宿発の花火バスツアーに参加した。関越道を走りつづけて5時間近くかけ、長岡市へ着いた。市内はすでに渋滞しており、臨時バス駐車場へたどり着くまでさらに時間がかかった。

 信濃川河川敷の観覧席へは、約1キロ歩かなければならない。ぼくたちの観覧席は、6人用のマス席で、50代のおばさん4人グループといっしょだった。おばさんたちは、凍らせたゼリーやビール、オードブルのおつまみなどを大量に持ち込み、早くも宴会ムード満開だ。まったく、よくしゃべり、よく食べる。

 花火が打ち上がるまでには、まだまだ時間があるが、することもないので、引換券で受け取った特製弁当を開く。見た目、原価は300~400円くらいか。ツアー代金から考えると、かなりのぼったくりに思える。とはいえ、何とか花火大会が開かれるだけでも幸運だった。

 わずか3日前、新潟・福島を豪雨が襲った。テレビニュースで見ると、信濃川も大洪水で、とても花火どころじゃないと思えた。翌日になっても水が引いた様子はなく、長岡市観光課に電話してみた。

 「決行するかどうか、いま協議しているところです。雨は小降りにはなっていますが、まだどうなるかわかりません。河川敷の観覧席も水没していますし」

 そのときは絶望的にも思えたが、水は引き、どうにか間にあった。突貫工事でヘドロを取りのぞき、砂や石灰をまいて会場を設営しなおしたそうだ。

 ツアーの添乗員さんが、ぼくたちの観覧席に来て言った。「団体客のキャンセルがありました。ここは混みあっていますから、席を移られてもいいですよ」

 かみさんとぼくは、4人組に別れを告げ、さっそく移動した。「1マス2万円」と長岡市のウェブサイトにはあったが、それをふたりで独占することができた。ひとり1万円の超特等席だ。夕方になって、空の色、雲の形が刻々と変わる。ぼくたちは仰向けに寝そべって大空を見上げた。野外で寝そべるなんて、何十年ぶりだろう。視界をさえぎるものはなにもなく、時おり、コウモリが飛んでいく。

 正規の開会の前に、<メッセージ花火>というのがあった。個人がポケットマネーを出し、誰かへのメッセージを込めて打ち上げてもらう。場内アナウンスを聞いていると、兄の霊に向け弟妹が連名で5号、7号、10号を上げた。亡き母への花火もあった。グレープの歌『精霊流し』のように、いとしい人が空の上から見ているのだろう。こんな企画も悪くない。

 フェニックスはそのあと炸裂した。前夜には、宮城県石巻市で長岡の花火師らがミニ版のフェニックスを打ち上げたのだという。石巻市に持ち込まれたのは、もちろん東日本大震災からの復興を祈ってのことだ。そのため、長岡市でもこの夜、本番1発目に選ばれた。

 デザイン的にもっとも素晴らしかったのは、19番目に打ち上げられた「天地人花火」だった。2009年の大河ドラマ『天地人』を記念して、長岡にゆかりのある戦国武将、直江兼続の生涯をテーマに作られたものという。七色の光線がリズムよく飛び交い、同時に打ち上がる大中小の花火の炸裂音が腹に響く。ド迫力、華麗、あまりにも華麗な作品だった。

 地元の企業40社が名を連ねて、この花火に協賛していた。長岡市の花火大会は2日間にわたり、計2万発が打ち上げられる。人口28万3000人というから、そう大きな市ではない。花火大会による経済効果が期待されるとはいえ、ひとつの地方都市でこれだけの規模、質のイベントを毎年挙行できるのは、やっぱりすごい。

 森民夫市長のスピーチによると、真珠湾攻撃を指揮した山本五十六・連合艦隊司令長官が長岡市の出身で、その縁からハワイのホノルル市と交流を深めており、来年3月、その地で長岡花火を打ち上げるという。4月には、ワシントンDCポトマック河畔の桜祭りでも打ち上げるそうだ。どんどん世界に進出すればいい。

 ぼくは、ドイツのボンに住んでいるとき、わが家のすぐ近くで行われたライン川花火大会に、たくさんの在留邦人家族を呼んだ。大いに期待していたのに、「え、これだけ?」というしょぼいレベルだった。アジアの2、3の国でも花火大会を見たことがあるが、質も量も日本の花火には遠くおよばなかった。

 外国人が、日本の花火大会を見れば、大感激するのはまちがいない。日本の繊細な技術力や美的センス、チームワークがもっとも華麗に凝縮されているのが花火だ。

 政府は、外国人観光客の誘致に力を入れている。各地の花火大会を<クールジャパン>の目玉に加え、日本ファンの度肝を抜けばいい。まさに、“平和の核弾頭”として。

 --毎週木曜日に更新--

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