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日本に新しい右翼の潮流が生まれつつあるのか

 平和ボケのうえに草食系がはびこる日本で、この2011年の夏、ちょっと珍しい社会現象が起きた。“きっかけはフジテレビ”だった! 7月下旬に俳優の高岡蒼甫さんがツイッターでこうつぶやいた。<8はマジで今見ない。韓国のTV局かと思うこともしばしば>。「8」はフジテレビのことで、韓流ドラマを盛んに放送し韓流スターをとりあげている姿勢を批判した、と受け止められた。

 J-CASTニュースによると、8月7日午後、東京・お台場のフジテレビ周辺に、「反韓流」「反フジ」などのプラカードや日の丸を掲げた人たちが少なくとも500人以上現われた。「韓流やめろ」などと約1時間に渡って騒ぎ、一帯は騒然となった。2ちゃんねるやツイッターなどの呼びかけを通じて集まった人びととされる。

 ある参加者は、「韓国の手から、フジテレビを取り戻すために我々は集まったのです!」と叫んだ。日の丸を掲げた男性は、「こうしたマスコミを直接攻撃するデモは画期的。政治家や外国を批難するデモよりも反響は大きいのでは」と主張した。デモ参加者の中には「韓流フジ潰れろ」「朝鮮人は半島に帰れ」などと過激な叫びを上げる人もいたという。

 この騒ぎは、マスメディアでは一切報道されず、J-CASTニュースなどのネットメディアや2ちゃんねるといったネットの上と、ごく一部のスポーツ紙、週刊誌でだけ伝えられた。

 さらに、21日にもフジテレビ周辺で同様のデモが行われ、主催者発表では約6000人も参加した。動画サイトでの生中継には、デモ開始前から約2万人の視聴者が集まり、ツイッターでも刻々とコメントが寄せられた。

 前回はデモの許可を得ておらず「散歩」と称していたが、この日のデモは主催者が、東京都公安委員会からのデモ許可証をネット上にアップして「正当性」をアピールした。

 スポーツ報知は、「代表となった30代の男性会社員によると、今後はテレビ局を管轄する総務省への抗議活動も検討しているという」と伝えた。

 デモ主催団体の代表はJ-CASTニュースの取材に対し、「デモはあくまでフジの『偏向報道』や韓流のごり押しに対する抗議。『反韓』『嫌韓』という主張ではありません」と答えた。

 スポーツ紙など中規模メディア(メディメディア)をのぞき、テレビ、大新聞のマスメディアがこの騒ぎを報道しなかったため、マスコミの悪弊を指摘する声が相次いでいる。

 ごもっともだ。欧米では一般的に、言論を多様にしメディアを相互チェックさせるため、新聞と放送が系列化する「クロスオーナーシップ」を制限・禁止する制度が設けられている。しかし、日本では事実上それがないため、ある種のテーマについて、マスメディアがそろって沈黙したり偏向報道してしまう現象が起きる。

 ぼくもマスメディアの記者出身だから、その点はいやというほどわかっている。「国民の知る権利」などとことあるごとに叫ぶくせに、肝心のことになると横並びで沈黙する。日本社会の病理としか言いようがない。今回の対フジ抗議デモもその典型ではある。

 でも、もうひとつの重い問題は、まったくと言っていいほど指摘されていない。いくら主催者が「『反韓』『嫌韓』ではない」と主張しても、なら、日の丸を掲げた参加者をたしなめたのか、ということになる。「朝鮮人は半島に帰れ」と叫んだ人物もいたというが、それが本音なのではないか。参加者の中には中学生くらいの少年や幼い子どもを連れた母親、カップルの姿もあったと伝えられるものの、彼らはことの重大さをわからないままノリで参加したのだろう。

 うちのかみさんは以前から韓流ドラマが大好きで、ぼくも次第に取り込まれていった。高句麗を建国した大王を描く『朱蒙(チュモン)』、その孫の物語『風の国』などは、すごく面白かった。いまNHKのBSで放映している、奴婢から李朝の国王側室にまで上り詰める女性の話『トンイ』も、実によくできている。

 韓流を最初にわが国で流行らせたのはフジかもしれないが、NHKをふくめいまではどの局でも複数の番組を放映している。韓流ドラマは面白く、韓流ミュージシャンのクオリティも高いから使うのではないか。

 この夏のデモは、言ってみれば、“文化侵略”に対するバックラッシュという側面がある。主催者の人びとがどれだけ意識しているかは別にして、「韓国の文化が大和の国でわがもの顔に振舞っているのが気に食わない」のだろう。たとえば、アメリカのドラマや音楽がテレビでどんどん流れても、同じようなバックラッシュが起きただろうか。

 日本の既存の右翼は、諸外国に比べると勢力がものすごく弱い。2005年に中国で反日暴動が起きたときでさえ、日本の右翼はほとんど動かなかった。仮に、かつてヒトラーが侵略・占領したポーランドでいま反独暴動が起きれば、ドイツの極右は大騒ぎをするだろう。なにしろ、5000人くらいならすぐ動員できる団体が複数あるのだから。しかも、極右が議会にどんどん進出している。その一因は、ほとんどイスラム教徒のトルコ系移民が200万人以上もいる現実にあるとされる。

 お台場での反韓流デモは、日本にも新しい形の右翼勢力が台頭する可能性をほのめかすものだ。わが国で右翼が大きな政治勢力を持つとすれば、アジア系移民を大量に受け入れ“異文化流入”が顕著になったときだろう。

 --毎週木曜日に更新--

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