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日本サッカーのしあわせな日々

 小学校の遠足も、初デートも、本番までがいちばんワクワクする。ぼくは年に1回か2回、東京ドームの巨人戦に行くが、それより高揚するのは、やっぱりサッカーの国際公式戦の応援だ。

 アジア最大のサッカー場、埼玉スタジアム2002へ向かう電車のなかから、日本代表のユニフォームが目立ち、雰囲気は次第に盛り上がってくる。浦和美園駅から会場へつづく専用ロードは1.2キロある。

 埼スタへ来るのは、ちょうど10年ぶりだった。スタジアムのこけら落としで、トルシエJAPANがイタリア代表を迎え撃った。中田英寿とローマの王子トッティが、戦いの前にセンターサークルで握手を交わした。結果は1:1のドローだった。

 ロードをかみさんと歩いていると、「NAKAYAMA10」という背番号を見かけた。古い! ゴン中山こと中山雅史選手の栄光のユニフォームだ。2002年日韓W杯に出場した。そのユニフォームを着るおじさんは、歴代代表の思いを込めて、今日のW杯ブラジル大会3次予選の初戦、北朝鮮戦に臨むのだろう。おおっ、「NANAMI10」も歩いている。1998年W杯フランス大会の司令塔・名波浩選手だ。

 沿道には夜店が並び、B級グルメ王者・富士宮やきそばや缶ビールが売られている。やはりお祭りなのだ。左側フェンスには、日本サッカー協会のエンブレムや主力選手の大きなプレー写真が飾られている。サポーターはそれをバックに記念撮影する。女子大生らしきふたり連れから、スマートフォンのシャッターを押すよう頼まれた。「どっから来たの?」「横浜で~す」「そう。応援頑張ろうねっ!」

 前日まで、台風12号が関東を直撃しゲームができない恐れもあった。台風は四国のほうへそれ、スタジアム一帯は怪しい雲と風はあるものの、どうにかできそうだった。

 ぼくは、電車のなかで『サッカー少女 楓』を読んでいた。『キャプテン翼』の作者・高橋陽一先生が、なでしこJAPANの澤穂希主将をモデルに書いた漫画付き青春小説だ。本田圭佑選手と長友佑都選手の名前が出てくるが、今日は、けがで欠場している。あるスポーツ紙は「飛車角落ち」と書いていた。

 ピッチの芝生は、カクテル光線に青く輝いていた。各席に白い厚紙を折りたたんだものが置いてある。「これ、何?」。かみさんが広げると、開会セレモニーのときバックスタンドに三本足の八咫烏(やたがらす)のエンブレムを人文字で描く用紙だった。

 練習風景を見ながら、駅ビルのスーパーで買った弁当を食べることにした。メインは海老カツの太巻き8巻だ。“圧巻”の試合運びで“勝つ”ための験かつぎで選んだ。

 ぼくは同時に、ポケットラジオで巨人対ヤクルト戦を聴いていた。今日からの3連戦で3連勝すれば、巨人は一気に首位に躍り出る。

 オペラ歌手・秋川雅史さんの君が代が朗々と大スタジアムにこだまする。この前の日韓親善試合のときの歌手は声量がしょぼく、ネットでさんざんたたかれていた。君が代斉唱はこのくらい迫力がなくちゃ。ぼくは、久しぶりに君が代を声に出して歌った。

 戦いの火蓋は切って落とされた。北朝鮮は引いて守り、日本は軽々とボールを回している。かみさんの右隣りの2席は空いたままだった。開始から6分遅れて、サラリーマン風のふたりが汗を拭き拭きたどり着いた。座ったまま、背番号なしの青いユニフォームに着替え、いきなり大声で声援を送り始めた。こりゃ、相当気合が入っているなぁ。

 ザックJAPANは攻めまくるが、ボールがゴールのバーをたたいたりして、大歓声のあとのため息が繰り返された。

 気がつくと、ラジオ中継も巨人戦からサッカーに切り替わっている。その解説者はやたら辛口だ。本田選手に代わって入った柏木陽介選手や長友選手に代わる左SBの駒野友一選手など、けちょんけちょんに言われている。生で観戦していると、完全な代役とはいかないまでも、それほど悪くはないのに。中継の言葉で試合の印象はずいぶん変わる。

 0:0で迎えた後半、売り出し中の清武弘嗣選手、日本に一家で帰化した194センチのハーフナー・マイク選手が相次いで入り、攻めのリズムが良くなった。それでも、ゴールが割れず、5万5000の大観衆がイライラしていたロスタイム、清武選手のクロスを吉田麻也選手が頭でたたき込んで勝負をつけた。

 スタンドは爆発的に吠えた。ぼくも、2007年、巨人がセリーグ優勝を眼前で決めた瞬間以来の大声で叫んだ。そして、隣りのサラリーマン風ふたりとがっちり握手した。「どっから?」「新潟県の長岡です」。おおっ、わざわざやって来たのだ。

 昨年、岡田JAPANがW杯ドイツ大会でベスト16になったころから、日本のサッカーは急坂を駆け上がりだした。ザックJAPANはアジア杯で、なでしこJAPANはW杯で優勝した。男子は9月6日、3次予選の2戦目、ウズベキスタンとの厳しいアウェーの戦いも、しぶとくドローに持ち込んだ。なでしこは、疲れてはいても自信の試合運びで、ロンドン五輪への切符を手に入れるだろう。U17など若い世代の才能も、つぎつぎと芽を出し、18歳の宮市亮選手はザックJAPANに初招集されそうだ。

 試合応援は本番前、スポーツも頂点を極める前が楽しい。いま、日本のサッカーはもっともしあわせな日々を送っている。

 --毎週木曜日に更新--

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