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超光速ニュートリノ ドラえもんはもう古い

 2011年は、「ついにこの日が来たか」と思わせられる出来事が3回あった。最初は東日本大震災で、次は姉の死だった。

 3つ目は、9月23日、世界の素粒子研究でもっとも権威のある機関のひとつCERNが「光より速い素粒子を観測した」と発表したことだ。

 1905年、アインシュタインが「物質は、光速を超えられない」という、有名な特殊相対性理論を発表した。その後、相対論の“正しさ”は、数々の実験や宇宙観測で確認されてきた。

 でも、ぼくは少年時代から宇宙論のファンで、いずれアインシュタインの相対性理論が破られる日も来るのじゃないかと夢想していた。

 光速より速く飛ぶ物体は、理論上、時間をさかのぼる。マスコミでは「すわっ、タイムマシンができるか!?」と大騒ぎしている。たしかに、そういう話はわかりやすい。

 超光速ニュートリノの存在が事実とすれば、100年に一度の大発見で、現代科学の基本原理がくずれる。自然科学にとどまらず、哲学や文学にも計り知れない衝撃を与えることになる。

 この大発表に当たっての科学者の反応が興味深い。CERNの国際研究グループのメンバーである小松雅宏・名古屋大学准教授は実験結果に自信を見せる。一方、グループのなかでも丹羽公雄・名古屋大学名誉教授らは、発表論文に名を連ねることを拒否したという。常識にもとづいた慎重さといえばそれまでだが、信じてきた相対論が否定されることになれば、人生を否定されることになると感じるのかもしれない。

 ぼくはどうしても、地動説を唱えたコペルニクスやガリレオ・ガリレイへの拒否反応を連想してしまう。旧約聖書の記述を疑うことなどありえず、天体は地球を中心として動いていると信じてきた人びとにとって、地球のほうが動いているという学説は受け入れがたかった。今起きていることは、そういう“神学論争”に発展する可能性も高い。

 たとえば、ユークリッド幾何学は、家を建てるのには何の問題もないが、地球規模では使えない。少年のころ読んだ本には、こんな例があげられていた。

 仮に、直角に曲がって飛べる飛行物体があったとする。ある地点を飛び立ち、東へ真っ直ぐ1,000キロ飛び、次に南へ1,000キロ、さらに西へ1,000キロ飛ぶ。そして、北へ1,000キロ飛んだらどうなるか。

 ユークリッド幾何学で考えれば、元の地点にもどるはずだが、実際には決してそうはならない。この距離になると、<まっすぐに飛ぶ>こと自体が不可能だ。地上を同じ高度で飛べば地球の丸さに沿って飛ぶことになり、空間に対してまっすぐではない。

 ニュートン力学も地球やせいぜい太陽系のことを考えるのに少しは使えるが、宇宙規模ではお手上げだ。

 太古の人びとにとっては、今でいう遺跡を作るのに、ユークリッド幾何学でじゅうぶんだった。近代科学もニュートン力学のおかげで発達した。そして、アインシュタインが登場し、現代科学の基礎を作った。

 つまり、今、アインシュタイン理論を超え新しい宇宙論が生まれようとしていると考えれば、不自然ではない。いつの時代でも、それまで自分が信じてきたものがくずれるのに耐えられない頭の固い人はいるものだ。

 高名なホーキング博士は、かつて、一般論としてこう述べている。

 <実験結果はやはり事実であるということが分かっても、そのモデルは捨てずに、(理論に)変更を加えることによって生き永らえさせる道を模索することがよくあるのです。物理学者も自分たちが認めた理論に固執し、まずそれをなんとか救えないか努力します>

 CERNが観測したニュートリノについて、「観測結果が事実なら、我われの知る次元を超光速で飛んだというより、異次元を飛んだのでは」という見方も出ている。

 我われは、前後、左右、上下の3次元空間に時間をあわせた4次元時空に生きていると考えられてきた。しかし、近年、一部の理論物理学者のあいだでは、その時空の陰にふつうは感知されない複数の未知の次元(extra dimensions)があるのではないか、とされている。

 ニューヨークタイムズ9月25日付けは、アメリカ政府系高エネルギー素粒子物理学研究機関Fermilabの専門家Joe Lykken氏のこんなコメントを紹介している。

 「特殊相対論は、フラットな宇宙にだけ当てはまる。だからもし、ワープした第5の次元があれば、光速も異なる可能性がある」

 ワープは曲がっていることを意味し、松本零士さんのアニメ『宇宙戦艦ヤマト』で描かれるワープ(超光速航行法)がよく知られる。まさに、アニメ、SFの世界が現実になるかもしれないのだ。

 ぼくはさらに空想をふくらませる。新しい次元が発見され、神、霊魂や輪廻転生、未来予知や遠隔透視、UFOなども“科学的”に解明される日が来るのではないかと。

 超光速ニュートリノは、ぼくたちの人生観、世界観、宇宙観を変える強烈なエネルギーを秘めている。四次元ポケットのドラえもんは、もう古いのだ。

 --毎週木曜日に更新--

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