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中央アジアにもサムライがいる

 小さいころ、将来は何になろうと思っていたか。<巨人大鵬卵焼き>の時代であり、長嶋茂雄などプロ野球選手に漠然とあこがれてはいた。しかし、ぼくにははっきりした職業観というものがなかった。

 それでも、小学3年生の時か、周囲の人たちが行ったことのない外国へ行っていろいろ調べその結果をみんなに伝えたい、と考えていた時期がある。

 だから新聞記者になったのではない。その時期のことを思い出したのは、新聞記者を辞めてしばらく経ってからのことだった。

 ぼくたちの子どものころには、まだジャーナリストという言葉が一般的ではなく、ひとつの職業としては意識しなかった。

 学校でシルクロードについて学んだのをきっかけに、何となく中央アジアのことを想像していた。ぼくにとっての「外国」というのは、その辺りのことだった。

 ニューデリー特派員になり、パキスタンへ13回、アフガニスタンへ4回入り、現地の様子を紙面でみんなに伝えた。子どものころの夢は叶っていたのだ、といま気づく。

 2011年10月11日にザックJAPANが大阪長居スタジアムでタジキスタンと対戦することになり、子どものころの思いがよみがえった。タジキスタンに行ったことはないが、アフガニスタンの北隣りであり、同じイスラム教国だ。きっと似たところはあるのだろう。いつものサッカー観戦以上に期待し、興味を抱いていた。

 タジキスタンがW杯アジア3次予選に進んだのは初めてだった。試合でアジア王者の日本代表は、面白いようにゴールを決めていった。相手はやけくそになってラフプレーに走ってもおかしくないところだ。でも、タジキスタンは汚いファウルを一切しない。

 結局、8:0で日本が大勝した。レッドカードはもちろんイエローカードさえ1枚も出ない、さわやかな戦いだった。

 試合前、タジキスタンのラフィコフ監督は、こう語っていた。「勝利できる可能性は1,000分の1だろう。謙虚に世界レベルのプレーを勉強したい」

 試合後にはこう言った。「ベストメンバーで戦ってくれた事に感謝している。日本はビッグなチーム。私たちは勉強しにきた身分だ」(サーチナから)。「ラフプレーには走らない、クリーンなプレーを心がけるというのを選手たちは理解している。日本はもっと高い目標を置いているチームなので、こんなところでけがをさせては申し訳ない」(footballnetから)

 潔く戦う精神、強い敵に学ぼうとする姿勢をみせた。まさに、武士道を思わせる。アジアの戦いでこんな言葉を聞いた覚えがない。まずは中国のサッカー関係者に聞かせたい。

 ネットをさぐると、2008年2月20日の東アジア選手権、中国対日本戦での中国のラフプレー集がアップロードされていた。その動画にはこんなコメントがついている。「アメフトや格闘技ではなく、サッカーの試合です。レッドカードは0枚です」

 えげつないプレーをする選手も選手だが、それを厳しく判定しない審判も審判だ。レフェリーは買収されているんじゃないか、と疑わせるゲームが少なくない。

 2011年4月10日、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)グループリーグ最終節で、セレッソ大阪と中国のクラブチーム山東魯能が戦った。山東は0対4と完敗した。悪質なファールを連発し、イエローカード7枚、レッドカード1枚を受けた。

 そのゲームについて、さすがの中国メディア瀋陽晩報もこんな記事を載せた。「サッカーで負けた。人間としても負けた」。半島晨報も「最も醜い敗戦」と厳しく批判した。中国にだって、実力のなさをラフプレーでごまかそうとする自国の戦いぶりを情けなく思ってはいる人びとはいるのだ。

 中国選手のひどさは世界中に知れ渡っている。かつて、フランスのジダン選手は、中国遠征を拒否したことがある。「中国のラフプレーでけがをしたくないから」

 韓国だって似たようなものだ。ごく最近でも、2011年9月27日、ACLの決勝トーナメントで、韓国の全北現代はセレッソ大阪を相手にラフプレーを連発した。セレッソの選手は頭突きで鼻骨を折られ退場した。こういう例は枚挙にいとまがない。

 スポーツ以前の国民性の問題だろう。日本人選手が決して汚いファールをしないのは、それを良しとしない文化があるからだ。

 タジキスタンのラフィコフ監督は、ザックJAPANを迎え撃つ11月11日のホームゲーム前にも、改めてこう言った。「日本は北朝鮮戦という大事な試合も控えている。応援しているし、ケガをさせないように気をつけたい」(nikkansports.comから)

 試合に入ると、守備一辺倒だった長居での戦いとは打って変わって、がんがん前にきた。ミドルシュートを2度、3度と浴びせ、そのうちの1本はゴールポストを叩いた。

 ある日本人のブログには、タジキスタンをひとり旅し、ものすごく親切にされた体験がつづられている。かの国にも特有のホスピタリティーがあるだろう。ぼくも、シルクロードの行く先々で、歓待された経験があるからよくわかる。

 テレビの前で、日本を応援しながらも、あっぱれなタジキスタンよ頑張れ、と思ったのはぼくだけではないだろう。

 --毎週木曜日に更新--

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