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日本のマスメディアは“東スポ化”している

  連合赤軍による「あさま山荘立てこもり事件」から、まもなく40周年を迎える。

 連合赤軍は、学生運動が下火になった1971年、金融機関からの強奪などによって資金が潤沢な共産主義者同盟赤軍派と、武器を入手していた日本共産党(革命左派)神奈川県委員会の、それぞれの軍事組織が合体して結成した極左過激グループだ。

 警察に追われていた連合赤軍のメンバー5人は、1972年2月19日、軽井沢にあるあさま山荘に侵入し、管理人の妻(31)を人質にとって立てこもった。10日後の28日、警官隊が強行突入し、犯人は全員逮捕され人質は無事保護された。この事件では民間人と警察官計3人が亡くなり、27人が負傷した。逮捕後、同志の凄惨なリンチ事件も明らかになった。

 忘れもしない、ぼくはわずか4日後に第1志望大学の受験をひかえていた。立てこもり以来、マスメディアは大々的な報道をつづけ、警察が突入する模様はテレビ各局が生中継した。ぼくは一日中、テレビの前から離れることができなかった。視聴率はNHKと民放を合わせ、最高約90%にのぼった。

 ぼくの高校でも、大学生の影響を受けて学生運動らしきものが盛り上がったことがあった。学生らはもともと大学の制度、ひいては政治と社会を改革するために立ち上がったはずだった。最盛期には革命の高揚もあった。しかし、各過激派は暴力やテロに走り、なかでも連合赤軍は最悪の帰結だった。

 固唾を飲んでテレビ中継を見守り、学生運動とはなにか革命とはなにか、と受験生なりに考えさせられた。第1志望の大学には落ちた。あさま山荘事件のせいだとは言わないが、ぼくの人生を大きく変えた出来事にはちがいなかった。

 それから40年の歳月が流れた。朝日新聞は2012年2月5日の朝刊読書のページ『ニュースの本棚』欄で、新右翼団体『一水会』顧問の評論家・鈴木邦男氏によるコラムを載せた。長い文章の最後でこんなことがつづられている。

 <40年前は、ただの「悪」だったし「犯罪」だった。だが、その中には、革命への夢も希望もあった。愛もあった。<<全て>>があった。それが極端に走ったが故の悲劇だった>

 <しかし今、それらは忘れられ、「負の遺産」だけが受け継がれている。閉鎖的、排外主義的で、人の話を聞かず、異なる存在を許さず、感情的に罵倒し、小さな同一性だけを守ろうとする社会。まさに現代は、「連合赤軍化する日本」ではないか>

 あの事件の総括を、いまだに左翼っぽさが抜け切らない朝日が、新右翼の筆に任せるとうのも変な話ではある。いち評論家がいまの日本社会をどう見ようと勝手だが、朝日が「『連合赤軍化』する現代日本」と見出しをつけているのには首をかしげる。はっきり言って、このコラムの説明だけでは意味不明であり、竜頭蛇尾だ。

 ぼくは、こういう記事や新聞社の姿勢を“東スポ化”と呼ぶことにしている。東京スポーツ新聞社が発行する夕刊スポーツ紙、略称「東スポ」は、“飛ばしの東スポ”と呼ばれる。プロレス、競馬、風俗などで強みを発揮し、しばしば「宇宙人化石発掘!」「遠野で河童を発見!」など、とんでもないヨタ話を一面にどでかく載せる。

 “飛ばし”というのは新聞業界用語で、先走った記事や針小棒大の記事をいう。東スポへの好き嫌いは分かれるだろうが、そういう新聞もあっていい。ヨタを承知で人びとはスタンド買いし、お笑いとして楽しむのだ。

 しかし、まじめな読者が多い朝日が、しかも自分たちで権威があると思っている読書欄にヨタ話を載せ、ヨタ見出しをつけて“東スポ化”していいのだろうか。拙著の解説をトップで扱ってくれたこともある欄だけに、なんだか悲しく空しい。

 ところが、もっとひどい“東スポ化”があった。読売は1月23日の朝刊1面トップで「首都直下型 4年内70%地震活発 切迫度増す」と報じた。東大地震研究所の平田直教授への取材にもとづくものだとした。他の新聞、テレビも一斉に追随し、「4年内70%」をおそらくほぼ全国民が信じた。ぼくだってそのひとりだ。

 その大ニュースの舞台裏はどうだったか。週間ポスト2月17日号は、当の地震研がホームページで報道の打ち消しに走っていたことを明らかにした。えーぇ、そうなの!?

 地震研のホームページをすぐに調べたが、それについての記載はもうなかった。だが、ポストによると、1月23日から31日まで、こんなメッセージが掲載されていたという。

 <(この試算は)発表以外に専門家のレビューを受けていません。また、示された数字は非常に大きな誤差を含んでいることに留意してください>

 それだけではなく、無責任としか言いようのないメッセージもあったらしい。

 <このサイトに掲載されたからといって、地震研究所の見解となるわけではまったくありません>

 実は、政府が昨秋「30年以内」と発表したのと同じデータに基づいている、とポストは伝える。じゃ、地震研のホームページは誰がどんな責任で書いているのだろう。平田教授は地震研内の「地震予知研究センター長」という肩書きを持つというのに。

 一番の問題は読売であり、その報道のウラもろくに取らず追随した他のメディアもひどい。「同じデータで、なぜこうも予測がちがうのか」こそ追究すべきことの本質なのに。 こぞってこんなセンセーショナリズムに走るとは、東スポよりたちが悪い。

 --毎週木曜日に更新--

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