« 香川真司に立ちはだかる数々の敵 | トップページ | 格安フライトの話は、頭に血がのぼる »

恋人でもない男女ふたりがルームシェア

 三寒四温の日々がつづき、2012年3月も半ばになった。入学や就職で新しい部屋さがしをしている若者もたくさんいるだろう。そういえば、転職してマンションを引き払いわが家で居候している娘も、不動産屋のウェブサイトをのぞいている。「もう一回、ひとり暮らしをした~い」

 娘が住む予定の地域の最寄駅は、親友の女の子Kちゃんが通勤で乗り換えるところだ。娘の住まいが決まったら、「月に半分くらいは泊めてほしい」とKちゃんは言っているそうだ。セミ・ルームシェアといったところか。

 そういえば、日本のルームシェア事情はどうなっているんだろう。ネットサーフィンしていたら、推定20代半ばの女性のブログにこんなつぶやきがあった。

 <一人暮らし始めてから5年が経つんすけど、最近、非常に誰かと暮らしたい。男子でも女子でもいーから、一緒に暮らしたいっ!! 男子だったら、セックスなしのただの同居人的な? 理想は、瑛太と上野樹里がドラマでやってた感じのルームシェア。よくね? 家賃も半分だしさ~。寂しい時は話し相手にもなるし、Wゲームの相手も出来る。誰かいないかな~>

 ドラマというのは、2008年春にフジテレビ系で放送された『ラスト・フレンズ』のことだろう。長澤まさみさん、上野樹里さん、 瑛太さん、水川あさみさん演じる4人の男女がシェアハウスでいっしょに暮らす。

 ルームシェアやシェアハウスというのは、本来他人の者同士が賃貸住宅の家賃を割り勘(シェア)にしていっしょに暮らすことをいう。

 物語は意外にどろどろしていたが、同居の男女がデキるという話じゃない。ぼくが注目したのは、日本でもついにこういうルームシェアのドラマが生まれたのか、という点だった。ドラマの設定になるというということは、それがトレンディだからなのだろう。

 ぼくは、1994年春、ドイツのボンへ特派員として赴任した。引き継ぎのとき、前任者が「ドイツに住んでいちばんびっくりしたこと」として挙げたのが、このルームシェアだった。

 「ほう、それはどんなもの?」と尋ねた記憶があるから、当時、日本ではほとんど耳にしないことだったのだろう。

 前任者はこう言った。「まあ、すぐにわかりますよ。ドイツ人の人間関係とか男女関係をあれほどストレートに表しているものはないんじゃないかなぁ」

 短髪でスポーティなイメージの取材助手クラウディア嬢と雑談していたときのことだ。「ところで、ドイツではルームシェアが一般的らしいけど、どんな感じ?」「ああ、かなりの大学生がシェアしてますよ。ボンは大学町だけど意外に家賃は高いし、シェアしたほうが経済的だから」

 聞けば、クラウディア嬢自身、ある男性といっしょに暮しているという。でも、彼女の場合は、その男性と恋人になり「じゃあ、いっしょに住もうか」ということになったそうだ。それはつまり、日本語でいう同棲だろう。驚くことでもなんでもない。

 ドイツのルームシェア事情のポイントは、恋人同士でもなんでもない男女がふたりで、一つの住まいをシェアしているケースが一般的なことだ。もちろん、トイレもシャワーもキッチンも冷蔵庫も共同で使う。

 ぼくのような昭和のおじさんは、若い男女がひとつ屋根の下で暮していればアヤマチが起きやしないか、と考えてしまう。ところが、クラウディア嬢は、ぼくの日本人としての当然の質問に当惑してしまった。

 少し考えてから答えてくれた。「男女がいっしょに暮していて自然と愛し合うようになるということはあり得るかもしれないけど、私自身はそういうケースを聞いたことがないですね。逆に、恋人のいる女の子が全然別の男の人といっしょに暮していても、彼氏はなんとも思わないのがふつうですよ」

 ドイツに住んでみてつくづく感じたのだが、ドイツ人社会では個人主義がほんとに徹底している。女子大生がシャワーを浴びていても、同居している男は平気なのだ(たぶん)。

 サッカーでも職場でもそうらしいが、ドイツ人は各自のテリトリーをとても尊重する。この部分は共同でやる、この部分は各自が責任を持つ、ということが徹底している。自分のテリトリー以外で起きていることには関知しない。

 ベルリンに移り住んでも事情はおなじだった。知り合いの日本人留学生K嬢は、20歳くらい年上のドイツ人男性とルームシェアしていた。「私はパジャマを着てキッチンなどをぱやぱや歩き回ってる。おじさんは自室でワインを飲んでいる、って感じですね」

 アヤマチが起きそうな空気なんてこれっぽっちもないそうだ。もっとも、日本の両親に国際電話で事情を話したら、ひっくり返りそうになったという。すっかり“ドイツ人化”しているサバサバ系のK嬢だからできることだ。日本から来てまもない女の子などは、やはり万一を警戒して、必ず女性とシェアするらしい。

 日本の大都市でも、いまやルームシェアは急速に増えているそうだ。しかし、恋人でもない男女がふたりでシェアする、というのはあるのだろうか。

 --毎週木曜日に更新--

思わず笑っちゃう木佐芳男の電子書籍、アマゾンで好評発売中『ブーゲンヴィリアの祝福 日本人カースト戦記』

|

« 香川真司に立ちはだかる数々の敵 | トップページ | 格安フライトの話は、頭に血がのぼる »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/540025/54226079

この記事へのトラックバック一覧です: 恋人でもない男女ふたりがルームシェア:

« 香川真司に立ちはだかる数々の敵 | トップページ | 格安フライトの話は、頭に血がのぼる »