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未明に月1回、傑作なサッカー番組をやっている

 「俺だッ、俺だッ、俺だッ!」。お笑いコンビ・タカアンドトシのタカが、両手で拳を作り、親指を突き出して自分の顔のほうに何度も動かす。あの人気のギャグを、オランダのピッチでやったプロサッカー選手がいる。

 オランダリーグ・VVVフェンロでセンターバックとして活躍する吉田麻也選手(23)だ。2012年2月18日、コーナーキックからヘディングで自身の今季3点目をあげると、ベンチの仲間に駆け寄りギャグを繰り出した。

 そのシーンを放送したのは、4月1日午前2時30分からの日本テレビ系『タカアンドトシ&城彰二の「月刊サッカーアース」』だった。未明の1時間番組で、ぼくはいつも録画して観る。特にこの回は、ぼくが今年に入って観た全テレビ番組でも最高傑作だった。

 数あるサッカー番組のなかでも日本で唯一、月1回だけ放映する。かつて、日本を代表する月刊誌『文藝春秋』の編集長に聞いたことがある。「ニュースの行方を読み、企画に知恵をしぼってしぼって絞り出し、へとへとになるから、任期は2年が限度」

 サッカーも、毎週のリーグ戦をベースにチャンピオンズリーグやカップ戦があり、情勢は時々刻々と変化する。ひと月に一度という番組作りは大変だと思う。

 サッカーアースは、それを承知で勝負をしている。数々の仕掛けがあって、特にサッカーにお笑いをかけあわせたところが斬新だ。

 MCをタカアンドトシが務めている。タカが突然、「俺だッ、俺だッ、俺だッ!」などとギャグをかましてムードを高め、トシがかるく突っ込みながら、番組は進行していく。

 そこへ、解説役の元サッカー日本代表ストライカー城彰二さんが、おとぼけを入れながら絡み合っていく。「城さんって、あんなキャラだっけ?」と思わせるほど、この番組に出るようになってからはじけた感がある。

 マスコットガールの『non-no』専属モデル佐藤ありさちゃん(23)も、おとぼけとちょっとしたお色気をただよわせ、サッカー談義をガールズトークに持って行く。

 そして、最大のユニークさは、「サッカーアース欧州組広報部長」を自称する吉田選手だろう。パソコンのカメラに向かい自宅で収録したVTRで、堂々“レギュラー出演”する。

 「俺だッ、俺だッ、俺だッ!」のギャグは、以前、「ゴールを決めたらやります」と約束していたものだ。番組では、そのシーンをスローで再生し、ナレーションが盛り上げた。「…そして歴史的瞬間が訪れる。ギャグは伝道師によって世界へはばたいた」

 吉田選手本人によると、チームのミーティングでもその映像が流され、「あれはなんだ?」とチームメイトに突っ込まれた。「いま日本でもっとも人気があるコメディアンの有名なジョークだよ」と説明したが、「みんなにはメチャクチャ馬鹿にされました↓」

 だから今度は、ザックJAPANの試合でゴールを決めて「俺だッ、俺だッ、俺だッ!」をやると約束した。いわゆる<サッカー調子のり世代>の代表でもある彼なら、ほんとにやっちゃうだろう。なでしこJAPANじゃないが、サッカーは楽しくやらなくちゃ。

 4月1日放送回の目玉は、英プレミアリーグのボルトンで、1部リーグ残留争いの救世主となっている宮市亮選手(19)の特集だった。トシが「いまわれわれが一番見たい選手」と言うまでもなく、最大の注目株だ。ぼくがチェックしているかぎり、他の番組に先駆けての特集となり、実に興味深い。

 名将ヴェンゲル監督に才能を見いだされ、高校在学中に名門アーセナルと契約した。いまはボルトンにレンタル移籍している。3月17日には英紙で1ページ全面をつぶした特集記事が組まれ、「(俊足で鳴らす)ウォルコットより速い」と大絶賛されたという。

 ありさちゃんは「イケメンだし、カッコいいし、かわいい」とガールズトーク丸出しだ。

 英紙によると、宮市は100メートル10秒6という。では、J2ガイナーレ鳥取の野人・岡野雅行選手(39)とどっちが速いか、という話になる。野人がVTRで登場し、訳のわからないことを言ってうそぶいた。「大学時代、寝起きにバスケットシューズで走って10秒8だった。全盛期だったら、負ける気がしない。野人は負けられない」

 それなら、J1名古屋グランパスの永井謙佑選手も呼んで、番組で現役3人のスピード比べをやったら面白い。

 宮市特集で、[実はスピードより○○力がすごい]というクイズが出されると、タカは「長州力がすごい」とトボけた。トシがすかさず「プロレスラーか! 文章としておかしいだろ」と突っ込む。正解は「吸収力」。

 中学時代のチームメイトは証言する。「各世代の日本代表にコンスタントに選ばれていて、そこで上手い選手からいろんなことを吸収し、成長してチームに帰ってきた」

 超高校級ストライカーの弟・剛君(16)は、「すごいわがまま。ねぎと玉ねぎが大きらいで絶対食べない」とばらした。まあいいじゃないか。中田英寿氏も野菜嫌いだった。

 高校時代の親友は、「女の子としゃべっていると、顔が赤くなって汗が出てしまうぐらい恥ずかしがり屋」ながら「超男気がある男」だと語った。ありさちゃんは「そういうタイプに女子は弱い。わたし、やられちゃう」。番組スタッフは、わざわざ「ありさ23歳」とテロップを出した。お姉さんもメロメロにするスター性がある。

 この番組は、サポーターはもちろん、非サポーターも必見だ。

 --毎週木曜日に更新--

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