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尖閣諸島 朝日主筆のご高説は情けない

 尖閣諸島の「尖」という字は、島の尖っている形状からきているという。日本と中国が角を突き合わせている様を表すのに、あまりにもふさわしい名前だ。「尖」は、辞書によると、「物の先がとがって、するどいこと。転じて、思想・行動が急進的なこと。また、そのさま。」となる。「閣」は、だらしない閣僚、閣議、内閣を連想させる。

 昨年末ごろだったか、雑誌SAPIOで尖閣諸島を所有する埼玉県の人物が取材を受けていて、あの国益の象徴ともいえる島がいまでも民間の所有であることを改めて知った。その人物がわが息子の親友の親戚筋に当たるらしく、人一倍、尖閣問題に関心を持った。

 石原慎太郎東京都知事が2012年4月16日、突然、「尖閣諸島を都で買う」と言いだし、大騒ぎになった。民主党政権は領土問題への感覚がにぶく独立国の「内閣」として呈をなしていないのに業を煮やし、「政府が買わないなら都で買って領土・領海を守ってやる」ということだろう。

 こういう事態になると、テレビには必ず平和主義者だかなんだか知らないが、中国におもねり、力による対決を排除しようとする解説者や評論家が登場する。購入に反対する根拠として、「地元の合意ないし同意がなく頭越しの議論だ。これは米軍基地問題と同じだ」と繰り返し語っていた。

 だが、地元・沖縄県石垣市の中山義隆市長が、23日、都庁を訪れ、石原知事に「早く都で買ってほしい」と要請した。後日、都と共同購入する希望も伝えた。地元の声ははっきりしているのだ。

 自分で頭がいいと思い込んでいる人は、机の上で「平和とはどうあるべきか」なんて考えがちだが、別に日中間にかぎらず、世界の国境線では時に武力行使をともなうにらみ合いがつづいている。一部日本人の“平和ぼけ”によるひとりよがりの平和志向など、現実が吹き飛ばす。

 そのことを、一般国民はとっくに知っている。2010年9月、尖閣諸島付近で発生した中国漁船衝突事件で、日本の海上保安庁が中国人船長を逮捕しながら、弱腰政府の判断で釈放してしまったことを忘れてはいない。

 ネットユーザーの意見をすくうクイックリサーチ社は、2012年4月17日~4月27日に東京都の尖閣諸島買い取りに賛成か反対かを端的に聞いた。統計に基づく世論調査ではなくあくまでアンケートによる参考の数字にすぎないが、結果はくっきりと出た。

    賛成:92%( 204,243 票)
    反対:07%(  14,923 票)

 「わからない」と答えたのは2% (4,177 票)だった。ネット上では意見がナショナリズム に傾きがちで、賛成が多数派になることはある程度予測できる。それにしても、賛成が反対の13倍以上も占めているのをみると、世論の傾向ははっきりしている。

 石原知事が尖閣諸島の購入構想を明らかにして以降、4日間で約3,500件の意見が都に寄せられ、その約9割が賛成だった。購入金額は約12億円とされ、4月27日に購入資金への寄付を募ったら12日間で3億円を突破した。

 こうなってくると、左翼えせ平和主義のオピニオンリーダーである朝日新聞はどうするのか。4月23日の朝刊に若宮啓文主筆のコラムが載っていた。主筆というのは社論の総責任者で、まあ、一番えらい記者のことだが、そのご高説は情けない。

 若いころから反中派政治家だった石原氏の言動を短くふりかえって酷評し、こう書いた。

 <今度は言葉の問題ではないだけに、政府も無視はできない。むしろ直視しなければならないのは、長らく日中双方があうんの呼吸でしのいできた尖閣の問題が昨今大きく変化し、石原氏の言動に一定の説得力をもたせたという事実だ>

 でも、<石原氏が前面に出たのでは逆効果だ。むしろ(中国の)軍拡に拍車をかけかねない>とする。

 そして、<国が買うのもよかろう>とし、<その場合は領土への強い国家意思を示すというより、無用の混乱をさけさせるためだと中国側に分からせなければならない>と、訳のわからないことを述べる。

 国が尖閣を買うとなれば、領土への強い国家意思を示すこと以外の何ものでもない。

 コラムは、<両政府に求められるのは大人の対応である>としめくくる。<尖閣の問題が昨今大きく変化し>たのは、中国の軍拡・領土拡張路線のせいなのに、<大人の対応>などという意味不明、翻訳不能の言葉を持ち出してお茶をにごす。

 武器をかまえて乗り込んでくる相手に、「まあ、まあ、大人の対応をしましょう」ってか!?

 「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」という日本国憲法前文の呪文にかけられているから、こういう間の抜けた結論になるのだろう。諸国民は平和を望んでいるだろうが、国家としての中国や北朝鮮が平和を愛しているとは思えない。

 おなじ朝日でも4月21日の『天声人語』のほうが理解できる。<隣人との友好は大切だが、腫れ物に触るような毎度の外交では、先方がさらに踏み込んでくるかもしれない。こと主権に関しては筋を通し、争点はとことん話し合うのがまともな国だろう>

        ◇  追記  ◇

 上の原稿を書いた翌日、週刊文春2012年5月17日号が、くだんの若宮啓文主筆をめぐる醜聞をスクープした。中国出張の際、海外出張は内規でできないはずの内勤の女性秘書を個人的に同伴し、会社の経費でビジネスクラスに乗せともに高級ホテルに宿泊していたというものだ。

 これだけなら個人的なスキャンダルですむが、出張の目的のほうがより重大だ。若宮氏は、おもに日中間の歴史認識を題材にした自著『和解とナショナリズム 』(朝日選書)の中国語訳出版記念パーティに出席していた。

 問題はパーティの主催者で、中国外交部(外務省)の別動隊とされる中国人民外交学会だった。中国政府そのものと目される団体で、そのお歴々に嬉々として出版を祝ってもらったわけだ。これぞという日本人を巧みに取り込む中国のいつものやり方だ。

 日本の代表的なジャーナリストが、共産党独裁下で人権弾圧や軍拡路線をとる中国とつるんでいることが、改めて明るみに出たことになる。だから、請国参拝問題などでも、あの人の書くものは「どこの国の立場で書いているんだ」と思わせるものが多いのだ。中国の言論スパイみたいな役割をになっている。

 こんな人物が社論を牛耳る朝日新聞に、尖閣問題はもちろん平和や民主主義、人権について偉そうに書いてもらいたくない、と思うのはぼくだけではないはずだ。

 --毎週木曜日に更新--

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