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日の丸を背負い、カンボジアの地雷原に挑む④

 霞が関でキャリア官僚をしているSさんが、嘆いていたことがある。

 「いろんな団体などからお声がかかり、仕事がらみのテーマで講演に行くんですが、謝礼を受け取るとワイロと見なされるおそれがあります。だから、せいぜい美味しいお店に連れて行ってもらうくらいですね」

 公務員は、もちろん、兼業やアルバイトを禁止されている。うちの息子は民間人だが、アルバイトは上司が公認した本業関連のもの以外はだめだ。兼業などとんでもない。

 その点、ぼくが勤めていた新聞社は懐が広かった。新聞記事を書くために集めた情報を使って、個人で本を書いたり講演をしたりするのは、まったく自由だった。 マスコミっていうのは、こんなアバウトなところがいい。

 ある政治記者など、本業の記事を書くより個人で政治の裏話本を書くのが忙しかった。社内で唯一、社員としての年収を印税が上回っている、とうわさされていた。

 ぼくの場合、印税や講演料はちょっとした臨時収入にすぎないから、全額または半額をかみさんにお小遣いとして渡すのが常だった。

 とはいえ、同じ新聞社でも長野県の信濃毎日新聞のように、本を個人で出すのは固く禁じられているケースもないではない。信州人気質というか、ヘンにお堅い。本を書けば、情報収集能力や筆力をアップするメリットもあるのに。

 カンボジアの首都プノンペンに駐在する谷川保行さんからのメール『カンボジア便り』を読んで、兼業やアルバイトのことを考えた。谷川さんは、日本政府のODAなどによって設立されたJMAS(日本地雷処理を支援する会)のカンボジア現地統括代表だ。

 地方の地雷処理現場へ出かけるときは、運転手つきのランドクルーザーを調達するのだという。悪路が多く、普通車などでは立ち往生する恐れがあるらしい。

 1回の出張は3日から1週間くらいだそうだが、問題は運転手だ。

 <何と運転手は、アルバイトの陸軍中佐、そして陸軍のヘリ整備エンジニアです。陸軍中佐は2人いて、国防省人事局勤務と陸軍参謀本部人事部勤務、ヘリ整備エンジニアは文官です。驚きました>

 陸軍中佐はこんなことを言っていたという。

 「給料は250米ドル。プノンペンで子どもを塾に通わせ、少しはまともな生活をするためには500ドル必要。上司も了解済みでみんなやっている」

 副業に励むのは、軍人だけではない。谷川さんがバッタンバン出張の際にいつも泊まるホテルのマネージャーは、州教育局の次長だそうだ。

 <田舎の小学校では、先生の給料は60ドル前後で、教えるよりも副業、様々な名目を付けて生徒の親から金銭を徴収することに熱心です>

 もともと、公務員の給料が低いため副業は当たり前になっている。<公務員のワイロ要求が日常茶飯事なのも同根です>

 ぼくがかつて駐在していたインドでも、事情はだいたい同じだった。中国でも、公務員の汚職が深刻で、2012年11月に国の新しいトップとなった習金平・第5代党総書記も、就任演説で「汚職根絶」を重要課題にあげていた。

 とはいえ、現役の軍幹部が休暇をとって堂々と運転手のアルバイトをするなどということは、少なくともインドでは聞いたことがない。

 カンボジアの金をめぐる話は、それだけではおさまらない。官僚や軍人トップ、政治家は、既得権益にありついた者が多く、そうでなければ資産家、あるいは、成功したビジネスマンという半面を持っており、一般にとても裕福だそうだ。

 谷川さんのレポートは示唆深い。

 <私の知っている陸軍の将軍は、自分の周りのスタッフに正規の給与以外の手当てを個人的に払い、車を買い与えている人がいますが、普通のことのようです。この国で出世するには、人脈に加え、金脈、そして、独裁色を強めつつある人民党という色が必要です>
 この話でのポイントは、“人民党という色”だ。

 中国でも、共産党員は8,000万人もいるとされ、その全員が、「改革開放」の流れに悪乗りして何らかのビジネスにからんでいるという。マルクス・レーニン主義という党是・思想などどっかへ追いやって、皆、金稼ぎに狂奔しているのだ。

 中国共産党は、たしかに、日本軍と戦い、革命を成就させ、農奴を解放して国民に読み書きを教えるなど功績の部分もあった。でも、超肥大化した党組織は、国を吸い尽くす寄生虫となりはてた。

 カンボジアでは、1993年に自由選挙による総選挙が行なわれた。人民党は第2党となり、第1党と連立政権を作った。立憲君主制をとる新憲法を採択、シアヌークが国王に即位した。1998年の総選挙で第1党となった人民党は、連立をつづけてはいるものの、年を追うごとに独裁色を強めている。谷川さんの観測通りだ。

 その人民党が、中国などとおなじで、獅子身中の虫と化している。

 <行政全体がスポイルされているわけですが、社会がこれに意外と寛容であることに危惧を感じています>

 --毎週木曜日に更新--

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