« 2012年12月 | トップページ | 2013年2月 »

2013年1月

日本はどうする 医療用マリファナ研究の後進国

 ♪ 君だけにぃ 君だけにぃ♪ 懐かしのグループサウンズ『ザ・タイガース』が、2013年1月、オリジナルメンバーで再結成された。実に44年ぶりだ。ボーカルとギターの加橋かつみさんも、もちろん加わっている。

 東京ドームをはじめとする全国ツアーで、オールドファンは涙ながらに声援をおくることになるだろう。あの輝いていた青春の日々を脳裏によみがえらせて。

 再結成の話を聞いて、ふと思い出したことがある。トッポこと加橋かつみさんは、1970年、あるミュージシャンの大麻パーティに参加し、大麻取締法違反容疑で逮捕され、懲役3年執行猶予2年の有罪判決を受けた。

 大麻(マリファナ)を所持していると、日本では、最大10年の懲役という大罪になる。大麻を吸うのはそんなに悪いことなのだろうか。オランダではカフェで売られている。イタリアでは薬局で買える。インドには政府の直売所がある。

 健康問題に関し世界でもっとも権威がある世界保健機構(WHO)は、くしくも加橋さんが逮捕された1970年、11人の研究者による討論を行い、痳薬やアルコール、大麻の身体に与える影響についてレポートを作成した。

 そこでは、奇形の発生、衝動的な行動、大麻を吸っているうちに吸う量が増えるというような激しい障害や習慣性はなく、禁断症状もないことが報告されている。

 それでも1972年、ニクソン米大統領は、「大麻を厳しく取り締まらなければならない」と保守の立場から委員会を設けた。そこでの結論も、WHOレポートと大差なかった。「マリファナを吸うことで起こる身体機能の障害について、決定的な証拠はなく、きわめて大量のマリファナであっても、それだけで致死量に達することは立証されていない」

 同時に、遺伝的欠陥、攻撃的行為も否定された。ニクソンの目論見はみごとにはずれたのだった。他の研究機関でも、ほぼ例外なく、マリファナの害については否定している。

 それなのに、法は法だ。特に日本では、悪法も法としていまに至っている。メディアは「大麻」というキーワードから「麻薬」というキーワードを連想し、芸能界の麻薬汚染などというもっともらしい特集記事が組まれたりする。

 大麻とマリファナでは、本来、定義がちがう。そのマリファナでも成分によって「カンナビノール=THC」と「カンナビジオール=CBD」がどれだけの割合でふくまれているか、いないかで心身への作用がちがう。だが、日本では、マスメディアでも司法でも、こと大麻、マリファナに関しては思考停止で、何でもかんでも罪に問おうとする。

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、1月15日、アメリカでいまもめているマリファナ裁判について書いていた。

 全米50州のうち18州で医療用またはリクリエーション用マリファナが認められている。だが、連邦法では非合法とされていて、問題がややこしい。

 デイヴィスという男性は、マリファナを合法とするカリフォルニア州で営業許可を取って販売し、年に800万ドルの売り上げを出すまでになった。

 しかし、連邦司法局は、現在34歳になったデイヴィス氏を起訴し、2000本近くの大麻草を証拠として押収した。有罪となれば、5年以上の懲役となる。当然、デイヴィス氏の弁護士は「州法にしたがって事業をしたまでだ」と無罪を主張している。

 大麻問題に詳しい武田邦彦・中部大学教授によると、アメリカでは1930年代、禁酒法が廃止され、取締りスタッフの再就職先を確保するため(!)大麻に目をつけたそうだ。WHOやニクソン委員会の結論など無視して、いまも大麻を取り締まろうとする。つまり、医学ではなく政治的な理由から、大麻は「悪」なのだ。

 デイヴィス氏の事件はまだ審理中だが、人はときに、科学的根拠に欠ける馬鹿げた理由によって罪人にされる恐れがある、といういい例だ。

 一方、NYTの1月3日付けでは、別の記者がイスラエルのマリファナ事情についてリポートしている。

 イスラエル北部のガリレーという丘に、政府が認めている医療用マリファナの農場がある。この国でも、マリファナは非合法で危険なドラッグと法律で規定されてはいるが、医療用に使うことは禁止されてはいない。保健省は現在、約1万1000人の患者に使用を認めている。

 イスラエルは、すでに1960年代、THCの抽出に成功し、つづいてCBDも開発し、過去数10年にわたってマリファナ研究の先駆者となってきた。

 がん患者の苦痛を和らげ、食欲不振を治し、PTSDに苦しむ患者の生活の質(QOL)を改善する。心臓発作にも有効という。92歳のホロコースト生き残り女性は、両手両前腕がしびれ腕がねじまがったままだったが、医療用マリファナのおかげで太極拳のクラスに参加できるまでになった。

 日本では、医療目的の研究さえ許されていないという。国・官僚機構そしてマスメディアや一般国民も、大麻に関して思考停止しているからだ。医療用マリファナがどれだけの人を救うかなど、誰も考えない。

 国がちがえば、トッポかつみも、前科一犯になどならずに済んだかもしれない。

 --毎週木曜日に更新--

| | コメント (1) | トラックバック (0)

世界の嫌われ者と気づかない中国

 新聞・雑誌であれネット上のニュースサイトであれ、見出しを目にしただけで吹き出してしまう記事など、そうあるものじゃない。テーマやタイミング、背景、状況といったものが、よっぽどうまく合わなければ、笑いは生まれない。

 中国メディアをウォッチしているサイト『サーチナ』の、2013年 1月17日の記事には、思わず笑わせられた。こんな見出しだった。

 <我が国はなぜ周辺国と「近いのに親しくない」のか=中国メディア>

 中国という国は周辺国と親しくしたいと思っている、ということだ。好かれたい愛されたい、というのだ。正直言って、ぼくは、かの大国の人がそんな気持ちを抱えているとは、まったく想像もしていなかった。

 クラスのとんでもないいじめっ子なのに、その自覚がまるでない。『ドラえもん』のジャイアンなら可愛げがありどこか憎めないが、国際社会での中国の振る舞いに可愛げな面などまったくない。

 “お笑い記事”を大真面目に載せたのは、新華社通信のウェブサイト『新華網』だった。「中国と周辺諸国との『近いのに親しくない』状態を、なぜ解決することができないのか」とする専門家の評論記事を掲載し、その日のうちにサーチナが取り上げた。

 専門家として評論を書いたのは、中国公共外交協会の宋栄華・事務局長という人物だ。中国は陸上で14、海上で6つの国と隣りあい、そのうち多くの国にとって中国が最大の貿易パートナーとなっている。それなのに、というわけだ。

 「建国以降、善隣友好を旨とする対周辺国対策を続けてきたにもかかわらず、日本、ベトナム、フィリピン、モンゴル、ミャンマー、インドなど周辺国と『近いのに親しくない』状態が一向に解決できないのはなぜか」

 中国が善隣友好の外交政策を取ってきたというのは、意外に“新鮮な”説だ。

 南沙諸島の領有権をめぐり中国が軍艦を使って威圧的な外交を展開している事実は、アジア諸国のみんなが知っている。中国公共外交協会の事務局長ともあろう人が、そういうことを知らないのだろうか。

 先に台湾へ出張したとき、世界4大博物館のひとつとうたわれる『故宮博物院』へ行った。中国清朝時代などの貴重な宝物がいやというほど展示されている。

 館内には、中国大陸からの団体さんが大挙して押し寄せていた。たくさんの係員が「静粛に」と書いたうちわのようなものを掲げて監視しているにもかかわらず、まったく無視し大声でのし歩く。

 うちわの裏には、カメラ禁止とひと目でわかるイラストが描かれている。それでも、デジタルカメラで堂々と撮影する。

 ぼくの目の前で、シャッターを切りまくっている観光客のおばさんを、清掃係のおばさんが強い口調でたしなめた。すると、カメラのおばさんは、大声をあげて反論した。

 どっちに非があるか言うまでもないが、中国大陸からのおばさんに謝ろうなどという気持ちはまるでない。

 その光景をいっしょに見ていたぼくのかみさんは言った。「うちの会社でも、あんなのはしょっちゅうよ」

 かみさんの職場は、日系ブラジル人、ネパール人、スリランカ人、韓国人など国際色豊かだが、ことあるごとに同僚のひんしゅくを買っているのは中国人だという。

 「自己主張が強く、自己中心的で、他人を恫喝するような物言いをする。同じ中国人でも出身地がちがうと仲が悪いのに、他の国の人と対決するときだけは、中国人でまとまるから始末が悪いのよ」

 故宮博物院でちょっと不快な思いをしたあと、広大な敷地の正面で客待ちをしているタクシーに乗った。「あいつら、まるでマナーがなってない」と、台湾人の運転手さんも大陸中国人の悪口を盛んに話した。

 アジアでの領有権摩擦では、たいてい中国が一方的にけちをつけて外交問題にする。尖閣諸島をめぐっても、本当に根拠があるなら国際司法裁判所に訴えればいい。そうはいかないから、海軍、空軍を動員してわざときな臭くする。

 サーチナの記事によると、宋事務局長は、「(アジア各国が中国に対して)優位に立つために、地域外の力を呼び寄せて中国と争おうとさえするのだ」と論じたそうだ。「地域外の力」というのは、まあ、アメリカのことだろう。

 J-CASTニュースは 1月19日、「死を招く」微細汚染粒子「PM2.5」が中国から日本列島に飛んでくる、というトピックを掲載した。車の排ガスなどに含まれる直径2.5マイクロメートル以下の超微粒子物質が、北京などでは国際基準の3倍近くまで上昇していた。ぜんそくや肺炎の原因となり、中国では死に至った例もあるという。微細なため、マスクでも防ぐのは難しいそうだ。

 社会主義市場経済などという訳のわからない国策で、金もうけにまい進し、環境対策などほったらかしできた。覇権意識丸出しのうえに汚染物質まで世界にまきちらしているのだから、嫌われるのは当然だ。それにまったく気づいていないのは中国人だけだろう。

 --毎週木曜日に更新--

| | コメント (0) | トラックバック (0)

インターネット実名制で、中国社会の不満はいずれ爆発する

 匿名だからこそ自由な言論が生まれる。いや、匿名は無責任で誹謗中傷に泣く著名人、市民は数知れない。――インターネットをめぐる基本的な論争は果てしなくつづく。

 韓国では、2007年、悪意のある書き込みなどによる社会的な弊害を防止する目的で、ネット実名制が導入された。

 しかし、2012年8月、憲法裁判所は裁判官8人の全員一致で、本人確認制の基となる実名制条項が、過剰禁止の原則に背き、表現の自由や個人情報の自己決定権、言論の自由などを侵害するとし、違憲と判断した。

 ぼくは、個人的には、実名化を支持してきた。名前を隠した言論なんか言論じゃない、という気持ちが強かった。ブログも実名でするのが本筋だ、と。

 しかし、あるときひとつの意見を聞いて、問題はそう単純ではないと気づかされた。「中国のような言論の自由を縛っている国で実名化が強制されたら、民主化の芽はつぶされてしまう」

 それが、現実になってしまった。

 全国人民代表者大会(全人代)の常任委員会が、2012年末、ネットユーザーはプロバイダーに対し実名を明かさなければならない、との規則を作った。インターネット会社に対しては、法で禁じられた掲示板への投稿などを削除しその事実を当局に通告しなければならない、とした。

 ネット上でハンドルネームを使うことは許されるが、その前に、実名を登録しなければならない。

 多党制による民主化の主張や地方公務員の不祥事の暴露など、政治的に微妙な発言、投稿をした者は、当局によって拘留または投獄される。

 常任委員会の投票では、145人の委員のうち5人が棄権、ひとりが反対しただけで、圧倒的多数によって支持された。ひとりでも反対者がいたというのはかすかな救いだが、強大な権力の前ではその抵抗もむなしい。

 これによって、中国版ツイッター『微博』上での活発な意見・情報交換などが冷え込んでしまう、と懸念されている。

 ぴりぴりする中国政府は、なりふりかまわず言論・外部情報の締め付けを強めている。今回の措置はその最終ステージに入ったことを示すのだろうか。

 中国では、2012年末、セックスや金銭上のスキャンダルで、少なくとも10人の地方公務員が辞任したり解雇に追い込まれたりした。ネットユーザーによる暴露がきっかけだった。

 ユーザーの活発さの度合いは、日本のネット界の比ではない。中国の一部ユーザーは、いわば命がけで情報をアップロードしているのだ。

 また、過去数か月にわたり、共産党幹部の不正蓄財などが国際的なネットメディアによって報道され、中国当局は、それらの閲覧を遮断し、コメントを削除して来た。

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)グローバル版は、2012年12月29日付けで、ネット空間の自由を求める中国国民と当局のいたちごっこを詳しく報じている。

 記事によると、当局は、この数年間、ほとんどが民間会社であるプロバイダーに対し、締め付けを行って来たが、プロバイダー側はユーザーの反発を恐れなかなか当局の意に沿わなかった。今回の規制は、そうしたプロバイダーを従来よりはるかに強く規制するものと受け止められている。

 固定電話のほぼすべては実名登録されているのに対し、携帯電話の約30%は匿名で契約されている。実名制の導入は、特に携帯電話会社やモバイル端末のプロバイダーを狙ったものとみられている。

 数年前から、当局は、匿名での携帯電話購入を制限しており、なかでも、国際通話できる携帯電話を買う者に対しては、身元を証明する書類の提出を義務付けてきた。

 ぼくは知らなかったが、中国ではバーチャル・プライベート・ネットワーク(VPN)というシステムが人気なのだという。コンピューターで暗号化されており、企業秘密や個人のプライバシーを守るために利用されて来た。盗聴が当たり前の国ならではだ。

 中国政府は、過去2年間、VPNを特定し遮断する実験を行って来たが、対象が膨大なため実際に遮断することはしなかった。しかし、2012年11月の共産党大会直前の数週間には一気に実行に移した。

 多くの人は、党大会後にはその制限も緩和されると期待していたが、緩められる気配はないようだ。

 今の中国は、沸騰するやかんを縛り上げ、その注ぎ口にも固い栓をしているようなものだ。遅かれ早かれ爆発する。

 当局は優秀なIT技術者を使い、ネットの力を一党独裁の力で抑え込もうとする。NYTの記事には、こんな米研究者の言葉が引用されている。

 「技術的には有効でも、中国全土のユーザーの反感・反発を買うだけで、政治的には自己破壊的だ」

 --毎週木曜日に更新--

| | コメント (0) | トラックバック (0)

古代出雲王朝はあった! 出雲の国→武蔵の国の謎

 2013年が明けた。マヤ暦は昨年末の冬至までしかなく、世界では終末論に揺れた。もちろん、世界はつづき、暦が途切れてもむしろ新しい時代がはじまった、との考えが主流となっている。人類のDNAがこれから飛躍的に進化する、と唱える人さえいる。

 この正月、ぼくは仕事の締切に追われ、初詣でに行く余裕もなかった。

 新年にはいろいろな神社に行くが、これまでもっとも多く初詣でしたのは、埼玉県さいたま市大宮区にある氷川神社だ。直線の参道は約2キロにもおよび、両側に露店が立ち並んで、いかにも華やかだ。正月の参拝者数では、いつも全国のトップ10に入る。

 子どもたちの七五三祝いでも、郷里から両親を呼んでいっしょに参拝した。

 参るたびに不思議に思っていたことがある。「武蔵国一宮」ともされるこの神社の祭神が、スサノヲノミコトとその妻クシナダヒメ、そしてスサノヲの6代目の末裔ともされるオオクニヌシノミコトとなっている事実だ。

 3柱はいずれも、出雲の神々だ。『記紀』や『出雲国風土記』の神話を読み合わせれば、スサノヲが天界から出雲の地に降りて国造りを始め、オオクニヌシがそれを完成させた。

 そして、オオクニヌシは大和王朝に国を譲り、幽界の大神となる。

 出雲地方では、過去30年弱ほどのあいだに、考古学上の大発見が相次ぎ、「やはり、強大な古代出雲王朝があったのではないか」という声が強くなりつつある。

 その観点で考えると、埼玉南部のその名も「大宮」の地に、出雲の神々が祀られていることの重大さが浮かび上がってくる。

 ぼくは、島根県出雲市の出身であり、オオクニヌシを祀る出雲大社から車で東へ約15分のところに、生まれ育った実家がある。

 古代出雲王朝があったとすればどこまでを勢力圏としていたか、というテーマには、並々ならぬ関心がある。

 出雲を中心に山陰、北陸、越後(新潟)地方などまで、という説が有力のようだ。しかし、大宮の氷川神社に注目すればそれどころではない。少なくとも現在の東京都、埼玉県、神奈川県の一部にまたがる武蔵の国まで、勢力下におさめていた可能性が出てくる。

 そうした仮説とも言えない妄想を長年抱いて来たところ、一冊の本に出会った。『<出雲>という思想 近代日本の抹殺された神々』(講談社学術文庫)だ。筆者は、明治学院大学教授の原武史氏で、今ちょうど50歳という気鋭の研究者だ。

 この本の第2部に、「埼玉の謎――ある歴史ストーリー」として、ぼくが抱いてきた疑問を学術的に解明する論文が載っている。わくわくしながら、ひと息で読んだ。

 徳川幕府が編さんした武蔵国の地誌によれば、第5代孝昭天皇(在位:紀元前475年ー紀元前393年)の時代に、島根県東部を流れる氷ノ川(斐伊川=ひいかわ)流域にあった出雲大社を勧請するとともに、川の名にちなんで「氷川」の社号をつけたという。

 斐伊川と言えば、実家の縁側から堤防が見える。直線距離で400メートルくらいか。子どものころは、夏休みに、同じ町内の友だちと「水浴び」に行ったものだ。

 東京近郊のぼくの家の近くにも、小さな氷川神社がある。この本によれば、氷川神社は、東京都に59社、埼玉県に162社もあり、他の道府県には合わせて7社しかない。つまり、圧倒的に旧武蔵国に集中しているわけだ。

 原教授は、氷川神社と久伊豆神社、香取神社の関東分布図を掲載し、「数多くの出雲系神社が、東部を除く武蔵国一帯に集中して存在していたことがわかる」と指摘している。この分布図は、大宮氷川神社の西角井正慶氏が1959年に書いた『古代祭祀と文学』からの転載だそうだ。

 ちなみに、郷里の母が大ファンである演歌歌手氷川きよしさんの芸名も、北野武(ビートたけし)さんが、レコード会社の近くにあった氷川神社にちなんでつけたそうだ。つまり、出雲系での命名ということになり、それを知れば母は大喜びするだろう。

 出雲大社の神官トップは、古代から出雲国造である千家家が務め、今にいたる。その祖先で『記紀』にも登場するアメノホヒノミコト神を、やはり祖先とする西角井家が、大宮氷川神社の神官トップを明治維新まで務めて来たという。

 原教授は、本のまえがきでこう述べる。

 「出雲国造とは、天皇と並ぶもう一人の『生き神』であったのであり、天皇にも匹敵する宗教的な権威をもっていた」「天皇の権威が、明治になって作られた要素が多かったのに対して、出雲国造の権威はそれ以前からあり、特に中国、四国地方を中心とする西日本では、その存在は明治以前からよく知られていた」

 出雲国造と西角井家の関係から、武蔵国が古代出雲王朝の勢力範囲となっていたことがうかがえる。原教授は、明治中期の3年あまり、出雲国造千家尊福が官選の埼玉県知事を務め、祭政一致の「古代出雲王朝」が再現されたことがある、という指摘もしている。

 『葬られた王朝 古代出雲の謎を解く』(新潮社)を書いた文化勲章の梅原猛氏などは、武蔵国の氷川神社群にはまったく触れていない。

 全国各地で出雲系神社や考古学の研究が進めば、大和王朝以前から成立期にかけ、西日本から少なくとも関東にいたるものすごい王朝があった事実が、明らかになりそうだ。

 --毎週木曜日に更新--

| | コメント (1) | トラックバック (0)

« 2012年12月 | トップページ | 2013年2月 »