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インターネット実名制で、中国社会の不満はいずれ爆発する

 匿名だからこそ自由な言論が生まれる。いや、匿名は無責任で誹謗中傷に泣く著名人、市民は数知れない。――インターネットをめぐる基本的な論争は果てしなくつづく。

 韓国では、2007年、悪意のある書き込みなどによる社会的な弊害を防止する目的で、ネット実名制が導入された。

 しかし、2012年8月、憲法裁判所は裁判官8人の全員一致で、本人確認制の基となる実名制条項が、過剰禁止の原則に背き、表現の自由や個人情報の自己決定権、言論の自由などを侵害するとし、違憲と判断した。

 ぼくは、個人的には、実名化を支持してきた。名前を隠した言論なんか言論じゃない、という気持ちが強かった。ブログも実名でするのが本筋だ、と。

 しかし、あるときひとつの意見を聞いて、問題はそう単純ではないと気づかされた。「中国のような言論の自由を縛っている国で実名化が強制されたら、民主化の芽はつぶされてしまう」

 それが、現実になってしまった。

 全国人民代表者大会(全人代)の常任委員会が、2012年末、ネットユーザーはプロバイダーに対し実名を明かさなければならない、との規則を作った。インターネット会社に対しては、法で禁じられた掲示板への投稿などを削除しその事実を当局に通告しなければならない、とした。

 ネット上でハンドルネームを使うことは許されるが、その前に、実名を登録しなければならない。

 多党制による民主化の主張や地方公務員の不祥事の暴露など、政治的に微妙な発言、投稿をした者は、当局によって拘留または投獄される。

 常任委員会の投票では、145人の委員のうち5人が棄権、ひとりが反対しただけで、圧倒的多数によって支持された。ひとりでも反対者がいたというのはかすかな救いだが、強大な権力の前ではその抵抗もむなしい。

 これによって、中国版ツイッター『微博』上での活発な意見・情報交換などが冷え込んでしまう、と懸念されている。

 ぴりぴりする中国政府は、なりふりかまわず言論・外部情報の締め付けを強めている。今回の措置はその最終ステージに入ったことを示すのだろうか。

 中国では、2012年末、セックスや金銭上のスキャンダルで、少なくとも10人の地方公務員が辞任したり解雇に追い込まれたりした。ネットユーザーによる暴露がきっかけだった。

 ユーザーの活発さの度合いは、日本のネット界の比ではない。中国の一部ユーザーは、いわば命がけで情報をアップロードしているのだ。

 また、過去数か月にわたり、共産党幹部の不正蓄財などが国際的なネットメディアによって報道され、中国当局は、それらの閲覧を遮断し、コメントを削除して来た。

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)グローバル版は、2012年12月29日付けで、ネット空間の自由を求める中国国民と当局のいたちごっこを詳しく報じている。

 記事によると、当局は、この数年間、ほとんどが民間会社であるプロバイダーに対し、締め付けを行って来たが、プロバイダー側はユーザーの反発を恐れなかなか当局の意に沿わなかった。今回の規制は、そうしたプロバイダーを従来よりはるかに強く規制するものと受け止められている。

 固定電話のほぼすべては実名登録されているのに対し、携帯電話の約30%は匿名で契約されている。実名制の導入は、特に携帯電話会社やモバイル端末のプロバイダーを狙ったものとみられている。

 数年前から、当局は、匿名での携帯電話購入を制限しており、なかでも、国際通話できる携帯電話を買う者に対しては、身元を証明する書類の提出を義務付けてきた。

 ぼくは知らなかったが、中国ではバーチャル・プライベート・ネットワーク(VPN)というシステムが人気なのだという。コンピューターで暗号化されており、企業秘密や個人のプライバシーを守るために利用されて来た。盗聴が当たり前の国ならではだ。

 中国政府は、過去2年間、VPNを特定し遮断する実験を行って来たが、対象が膨大なため実際に遮断することはしなかった。しかし、2012年11月の共産党大会直前の数週間には一気に実行に移した。

 多くの人は、党大会後にはその制限も緩和されると期待していたが、緩められる気配はないようだ。

 今の中国は、沸騰するやかんを縛り上げ、その注ぎ口にも固い栓をしているようなものだ。遅かれ早かれ爆発する。

 当局は優秀なIT技術者を使い、ネットの力を一党独裁の力で抑え込もうとする。NYTの記事には、こんな米研究者の言葉が引用されている。

 「技術的には有効でも、中国全土のユーザーの反感・反発を買うだけで、政治的には自己破壊的だ」

 --毎週木曜日に更新--

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