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日本はどうする 医療用マリファナ研究の後進国

 ♪ 君だけにぃ 君だけにぃ♪ 懐かしのグループサウンズ『ザ・タイガース』が、2013年1月、オリジナルメンバーで再結成された。実に44年ぶりだ。ボーカルとギターの加橋かつみさんも、もちろん加わっている。

 東京ドームをはじめとする全国ツアーで、オールドファンは涙ながらに声援をおくることになるだろう。あの輝いていた青春の日々を脳裏によみがえらせて。

 再結成の話を聞いて、ふと思い出したことがある。トッポこと加橋かつみさんは、1970年、あるミュージシャンの大麻パーティに参加し、大麻取締法違反容疑で逮捕され、懲役3年執行猶予2年の有罪判決を受けた。

 大麻(マリファナ)を所持していると、日本では、最大10年の懲役という大罪になる。大麻を吸うのはそんなに悪いことなのだろうか。オランダではカフェで売られている。イタリアでは薬局で買える。インドには政府の直売所がある。

 健康問題に関し世界でもっとも権威がある世界保健機構(WHO)は、くしくも加橋さんが逮捕された1970年、11人の研究者による討論を行い、痳薬やアルコール、大麻の身体に与える影響についてレポートを作成した。

 そこでは、奇形の発生、衝動的な行動、大麻を吸っているうちに吸う量が増えるというような激しい障害や習慣性はなく、禁断症状もないことが報告されている。

 それでも1972年、ニクソン米大統領は、「大麻を厳しく取り締まらなければならない」と保守の立場から委員会を設けた。そこでの結論も、WHOレポートと大差なかった。「マリファナを吸うことで起こる身体機能の障害について、決定的な証拠はなく、きわめて大量のマリファナであっても、それだけで致死量に達することは立証されていない」

 同時に、遺伝的欠陥、攻撃的行為も否定された。ニクソンの目論見はみごとにはずれたのだった。他の研究機関でも、ほぼ例外なく、マリファナの害については否定している。

 それなのに、法は法だ。特に日本では、悪法も法としていまに至っている。メディアは「大麻」というキーワードから「麻薬」というキーワードを連想し、芸能界の麻薬汚染などというもっともらしい特集記事が組まれたりする。

 大麻とマリファナでは、本来、定義がちがう。そのマリファナでも成分によって「カンナビノール=THC」と「カンナビジオール=CBD」がどれだけの割合でふくまれているか、いないかで心身への作用がちがう。だが、日本では、マスメディアでも司法でも、こと大麻、マリファナに関しては思考停止で、何でもかんでも罪に問おうとする。

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、1月15日、アメリカでいまもめているマリファナ裁判について書いていた。

 全米50州のうち18州で医療用またはリクリエーション用マリファナが認められている。だが、連邦法では非合法とされていて、問題がややこしい。

 デイヴィスという男性は、マリファナを合法とするカリフォルニア州で営業許可を取って販売し、年に800万ドルの売り上げを出すまでになった。

 しかし、連邦司法局は、現在34歳になったデイヴィス氏を起訴し、2000本近くの大麻草を証拠として押収した。有罪となれば、5年以上の懲役となる。当然、デイヴィス氏の弁護士は「州法にしたがって事業をしたまでだ」と無罪を主張している。

 大麻問題に詳しい武田邦彦・中部大学教授によると、アメリカでは1930年代、禁酒法が廃止され、取締りスタッフの再就職先を確保するため(!)大麻に目をつけたそうだ。WHOやニクソン委員会の結論など無視して、いまも大麻を取り締まろうとする。つまり、医学ではなく政治的な理由から、大麻は「悪」なのだ。

 デイヴィス氏の事件はまだ審理中だが、人はときに、科学的根拠に欠ける馬鹿げた理由によって罪人にされる恐れがある、といういい例だ。

 一方、NYTの1月3日付けでは、別の記者がイスラエルのマリファナ事情についてリポートしている。

 イスラエル北部のガリレーという丘に、政府が認めている医療用マリファナの農場がある。この国でも、マリファナは非合法で危険なドラッグと法律で規定されてはいるが、医療用に使うことは禁止されてはいない。保健省は現在、約1万1000人の患者に使用を認めている。

 イスラエルは、すでに1960年代、THCの抽出に成功し、つづいてCBDも開発し、過去数10年にわたってマリファナ研究の先駆者となってきた。

 がん患者の苦痛を和らげ、食欲不振を治し、PTSDに苦しむ患者の生活の質(QOL)を改善する。心臓発作にも有効という。92歳のホロコースト生き残り女性は、両手両前腕がしびれ腕がねじまがったままだったが、医療用マリファナのおかげで太極拳のクラスに参加できるまでになった。

 日本では、医療目的の研究さえ許されていないという。国・官僚機構そしてマスメディアや一般国民も、大麻に関して思考停止しているからだ。医療用マリファナがどれだけの人を救うかなど、誰も考えない。

 国がちがえば、トッポかつみも、前科一犯になどならずに済んだかもしれない。

 --毎週木曜日に更新--

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コメント

大麻。日本の麻についてはおかしな話がいっぱいあると思います。
自分の体のどこが調子悪いか、麻の助けを借りてわかることもあります。
自然治癒力という分野では、大変なちからになるのでは?

投稿: umi kamekichi | 2013年12月 9日 (月) 21時17分

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