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素直に日本が好きな台湾の人びと

 台湾の台北市をぶらぶら歩いていると、ふと、日本のどこかにある大きな地方都市にいるような気になる。

 牛丼の『吉野屋』がそのままの看板で商売をしているし、『日立』のオフィスや広告もやたら目につく。これまでに、世界21の国・地域を訪れたが、22番目の台湾ほど「日本」を感じさせるところを知らない。

 ホテルのフロント嬢は、きれいな日本語を話した。「大阪に1年間、留学していました。大阪弁はむずかしくてほとんどしゃべれませんけど」

 他のフロントマンも全員、日本語がうまい。台湾事情などを尋ねたりしたが、込み入った話でない限り、会話には不自由しない。

 部屋のケーブルテレビには、日本のチャンネルがふたつあった。日本で2012年末に菅野美穂さん、天海祐希さん、玉木宏さんらが演じていた『結婚しない』を流していた。

 中国語の字幕が流れ、タイトルは『結婚不結婚』となっていた。わかる、わかる。結婚するかしないか、というドラマのテーマがよく伝わる。『vs嵐』は『嵐大運動会』というそのものずばりのタイトルだった。

 韓国などの大きなホテルにも、日本語のできるスタッフや日本人はいる。でも、全員が、日本からの客には日本語で応対するということはまずない。

 ソウルや釜山にも漢字や「マッサーヅ」などという“訛り”の入った片仮名の看板はあるが、街にはハングルがあふれ、異国は異国だ。

 台北の物価は、おおざっぱに言えば、日本の半分くらいだろうか。中でもタクシーは数が圧倒的に多く、しかも安い。日本の3分の1ほどで、かなり遠くでも気楽に利用できる。

 あるタクシーのバックミラーには、「交通安全 金閣寺」というお守りがぶら下げてあった。どこで手に入れたのか聞くと「娘がくれたんです」と言う。

 別のタクシーには「成田山 新勝寺」のお守りがあった。60歳くらいの男性運転手さんは、感心するほど上手な日本語で説明してくれた。

 「台湾では、日本の交通安全のお守りがすごく有名なんです。タクシーの運転手はみんな、何とかして手に入れようとします」

 その男性は、台湾のある日系企業でトラック運転手として長年勤め、日本語を話せるようになったという。

 「息子は埼玉県で電機メーカーの支店長をしていましてね。日本の女性と結婚して、孫もふたりいますよ」

 それにしても、お守りといえば、宗教心やアイデンティティーに直接関わる。よほど日本が好きでないと、愛車にぶらさげるという発想は出て来ないのではないか。

 同じように、かつて日本の植民地だった韓国と日本を比べ、俗に「反日の韓国」「親日の台湾」と形容される。韓国へは3回行ったが、日本のお守りをぶら下げているタクシーになど乗ったことがない。そんなことをする運転手がいれば、「親日め!」と同胞からののしられるだろう。韓国語の「親日」は「非国民」とおなじような意味を持つ。

 日本では、クリスチャンではないのに、単なるおしゃれとして十字架のペンダントをしている人もいるにはいる。だが、お宮参りや初詣では神社へ行き、結婚式はキリスト教会であげ、法事や葬式にはお寺へ行くはちゃめちゃな日本人の宗教感覚とは、またちがった心情が、台湾の人びとにはあるのだろう。

 ちなみに、ホテルでもらった英字紙『台湾タイムズ』によると、台北市を北から囲むように位置している新北市New Taipei Cityには、952の仏教・道教寺院と120の教会があるという。市では、2013年1月、市民や観光客向けに市内の宗教施設を紹介する隔月刊の雑誌を創刊した。交通安全のお守りは、そこでは手に入らないのだろうか。

 成田山のお守りを大切にしている運転手さんは、こう言った。「日本は、台湾統治時代に、あまり悪いことをしなかったから、みんな今でも日本が好きなんですよ」

 じゃあ、その数少ない「悪いこと」とは何だろう。

 「金鉱の金と山の檜(ヒノキ)を全部持って行ってしまったことです」

 そして、「いいこと」として運転手さんがあげたのは、道路、鉄道の整備と6・3・3・4の教育制度を普及させたことだという。

 「台湾がこうして発展したのは、日本のおかげですよ」

 朝鮮半島でも、日本は、莫大な予算を費やし社会インフラを整備した。しかし、「日帝36年」と呼んで、何でもかんでも悪いことは全部、日本のせいにする。そういう考え方でしか国家再建ができなかった被害者意識の国は、ある意味で悲しい。

 台湾の若者のあいだでも日本発祥のコスプレが大人気なのは、よく知られた話だ。日本の漫画、アニメ、ビデオゲームのキャラクターに扮装し、みんなでわいわい騒ぐ。

 その新しい聖地となっているのが、台南市にある日本統治時代の日本式料亭『柳屋』だという。本来の日本建築なら木目を生かすが、湿気の多い土地柄だけに紅殻(べんがら)だろう、赤褐色に塗られて今に到る。

 セーラームーンに扮した子が叫ぶ。「日本大好き!」

 --毎週木曜日に更新--

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