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ギャンブルやるなら、人生に張ろう

 まず目についたのは、そのおばさんの薬指にはまっている馬鹿でかい指輪だった。ルビーなのか、血の色に輝いている。着ている服といい、いかにも高そうで、指輪ひとつがいったいいくらするのだろう。他の指にも派手な指輪をはめている。

 そのおばさんが、手慣れた様子でルーレット盤にチップを張っていく。何万円という単位ではない。少なくとも何十万円分だろう。

 隣の深いグリーンの指輪をしたおばさんも、張り合うようにチップを置いていく。ぼくが買っていたチップは、わずか数千円分だった。とても勝負にならない。黙ってディーラーの手さばきを見つめているのが、せいぜいだった。

 30年近く前、 生まれて初めての海外出張で、フィリピンに行ったときのことだ。昼間は目いっぱい取材し、夕食のあと、同行していた日本テレビ系『24時間テレビ 愛は地球を救う』の取材クルーといっしょに、マニラ郊外のカジノに行ってみた。

 とりあえず素人でもできそうなルーレットをやってみようとしたが、レベルがちがいすぎた。

 いっしょに訪れていたフィリピン人ガイドの青年によると、どっかりと椅子に座りルーレットにのめり込んでいるのは、華僑のおばさんたちだという。金と暇にまかせて、夜毎、ここで遊んでいるそうだ。

 ぼくは、手持ちのチップをちょこちょこと張って、あっという間にすってんてんになった。連勝してチップを積み上げているおばさんを見ても、うらやましくはなかった。世界がちがいすぎる。

 ぼくたち冷やかしグループは、ブラックジャックのテーブルなどを一通り見て歩いて、そうそうにホテルへ引き揚げた。

 翌朝、地元の英字紙を開いてびっくりした。ちょうどぼくたちがカジノにいた時間帯、その店へ強盗が入り、現金をいくらか奪って逃走したのだという。カジノはあまりに広く、そんな事件が起きていたことなどまったく気づかなかった。客の誰もがギャンブルに夢中で、強盗などどうでもよかったのだ。

 次にカジノを訪れたのは、ネパールだった。首都カトマンズに外国人専用の店が一軒だけあり、カウンターでパスポートを提示して中に入る。

 そのときは、日本大使館の若手外交官夫妻に案内されて行った。インドのニューデリーで特派員をしているときで、インドルピーを直接、チップに換えるのだった。レートは1インドルピーが一番安いチップ1枚だった。つまり、そのカジノは、インド人の金持ち専用のようだった。

 カジノの1階には、スロットマシーンがずらっと並んでいた。約2000円分のインドルピーを両替しレバーを適当に引くと、コインがどっと出てきた。ビギナーズラックというやつだろう。面白いように大当たりし、元手の15倍くらいに増えた。

 今度は2階に上って、ルーレット盤の前に座った。日本人外交官夫妻はいかにも遊び慣れている。ディーラーがボールを投げ入れてから、これと思う番号にチップを張っていく。

 「ディーラーが投げる前に張ると、その番号を意図的にはずされてしまうから、ボールがころがっているあいだに張るんです」

 外交官は、小声で教えてくれた。プレイヤーは番号、色、 オッズ、番号の組み合わせなどでチップをベットする。常連客は、小さな専用ノートに、ボールがどの番号に入ったか小まめにメモしている。そのデータを分析し、ディーラーの癖を読み取るのだそうだ。

 外交官夫妻は、少しずつ少しずつチップを重ねていく。途中からすっかりルーレットに入れ込み、ぼくたちのことなどほったらかして夢中になっていった。

 当然のように、ど素人のぼくは、1階のスロットマシーンで稼いだ分を全額すった。初めからカジノで儲けようなどと思ってはいないので、どうでもよかったが。

 その後、スリランカ・コロンボの年越しカジノパーティや韓国・釜山のホテルカジノへ行ったこともある。いずれも、見分のために顔を出しただけだ。

 日本国内では、主義としてギャンブルはやらない。麻雀は学生時代から楽しんでいて、うちの子どもたちにも教え込んだが、賭けてやったことは一度もない。雀荘には行かず、友だちとやるときも、優勝賞品などを用意はしても、現金のやりとりはしない。

 大金を横領してバカラ賭博につぎ込んでいた、などというニュースを見るにつけ、馬鹿だなあと思う。競馬で何十億という金を稼ぎ、脱税でつかまった日本人男性の話は、最近、ニュースになったが・・・。それ以外、ギャンブルで家を建てたやつなど聞いたことがない。

 競輪や競馬、パチンコなどちまちました賭け事はやらない分、ぼくは45歳で新聞社を辞めてフリーになった。仲のいい同僚に「人生のギャンブラーだなぁ」と言われた。

 いま、日本でも外国からの観光客誘致のためカジノ構想が描かれている。実現に向けて、橋下徹大阪市長や楽天の三木谷浩史社長も動きはじめた。誘致には大阪府・市や東京都が名乗りを挙げ、沖縄県や北海道などもカジノ特区の候補地とされている。

 まあ、儲けるのは胴元だけだから、ギャンブルでわくわくしたいなら、自分の人生に張ったほうが絶対に面白い。

 --毎週木曜日に更新--

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