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2013年5月

マルコメ君とバスケット

 ♪マルコメ、マルコメ・・・♪味噌とバスケットボールとどうつながるのだろう。

 有明コロシアムのコートで、あのCMでおなじみのマルコメ君が、チアガールをしたがえて踊っている。踊ると言っても、パラパラか盆踊りのノリだが、曲は耳に残る。

 マルコメ君が味噌メーカーのキャラクターとして登場したのは、昭和30年代というから、御年50歳くらいの中高年なのだ。

 有明コロシアムには、マルコメ味噌のブースもあり、味噌汁が来場者にサービスされていた。マルコメは、bjリーグの大スポンサーなのだった。

 でも、bjリーグと聞いて、どれだけの日本人がピンとくるだろうか。プロバスケットの男子リーグのことだ。

 リーグのプレーオフ決勝戦のチケットをもらい、観戦に訪れた。東京湾埠頭にある有明コロシアムは、屋根が開閉式で1万人を収容するという。

 女性のひとり客もいた。一般席にいたからチームの関係者ではないのだろう。

 プロのバスケを生で観るのは、初めてだった。どんな感じなのか、想像もむずかしかった。

 チケットは自由席で、バックスタンドの真ん中あたりに座ることができた。コートまではかなり距離があるのだろうが、全体を見下ろすいい位置だった。

 国歌斉唱で華やかにはじまった。女性歌手が3人並び、リレー方式で『君が代』を歌っていく。例年のことなのか今回初の試みなのか、声質が微妙にちがい、あまりしっくりいったとは思えない。まあ、他のスポーツがやらないチャレンジ精神をよしとしよう。

 チケットをくれたのは、バスケット派遣コーチをしている娘の友だちの青年で、いっしょに行った。小学生から大学生、社会人のチームに教えているのだという。

 新潟市にあるスポーツ専門学校で、コーチとしての技術と理論を学んだそうだ。会う前は、どんな大男かと思っていたら、ぼくとおなじ位の背丈だった。

 世の中にはいろんな職業があるものだ。日本初のバスケコーチ派遣会社で、社員は8人というが、それだけ需要があるのも意外だった。日本ではまだ、専門の指導者は少ないらしい。

 高校バスケ漫画『スラムダンク』はとっくに連載が終わっており、いまどきの青年はよく知らないらしかったが、バスケそのものの人気はいま日本ではどうなのだろう。

 青年の解説によると、bjリーグは東西ふたつに分かれてリーグ戦を行い、それぞれの上位2チームが決勝トーナメントに進出する。

 決勝は、横浜ビー・コルセアーズ対ライジング福岡だった。

 両チームとも、2012ー13レギュラーシーズンはリーグ2位だったが、トーナメントに入って準決勝を勝ち上がった。

 先発メンバー5人のうち2,3人は外国人で、身長は2メートル前後ある。それが猛スピードでぶつかったりするから、迫力は思った以上だ。

 バスケの試合で有名なのはもちろんアメリカのNBAだが、なんとか目の前でダンクシュートを観たかった。

 そしたら、やってくれた!会場はどよめきに包まれる。ボールをたたき込んだあとリングにぶら下がるのも、スポーツニュースで観るNBAと同じで、ほんとにボードが揺れる。

 やっぱりすごい。観にきてよかったぁ。

 それ以上に魅せたのが、遠い位置から打って一気に3点が入る3ポイントシュートだ。

 横浜の蒲谷正之選手は、決勝戦で5回打ちすべてを決めた!今レギュラーシーズンの成績を調べると、3ポイントシュートの決定率は43.4%とチーム随一だ。183cmと大きくはないが、センスは抜群でキャプテンを務めている。

 シーソーゲームで、途中までどっちが勝つかわからなかった。結局、横浜が101対90で福岡を下した。

 MVPは、最多35得点をあげた蒲谷選手が選ばれた。まあ、当然だった。あまりにもかっこ良かった。インタヴューに「打てば入るという感じだった」と語っていた。

 いわゆる「ゾーンに入った」というやつか。言わば、“神がかり”だ。

 チームには、もちろん専属チアガールがいる。試合中にはスタンド寄りの台上で声援を送り、タイムアウトになるとコートに駆けだしてダンスを踊る。

 こちらのほうも横浜の勝ちとみた。ビキニかと思わせるきわどい黒のコスチュームで、金色のボンボンを手に完璧な動きを見せた。マルコメ君と比べるのは悪いが、リズム感がちがう。

 気になるのは、観客動員数だった。席は7~8割埋まっていたが、決勝戦としてはちょっとさみしい。BSフジが毎試合中継していて少しずつファンは増えているようだが、やっぱり生で観ないと。

 リーグを引っ張る日本人のスター選手が2,3人出れば、人気も認知度も上がるだろう。

 試合でもっとも活躍した(!?)のは、ふたりの青年が走り回って操るモップだったかもしれない。ダスキンも有力なスポンサーだった。

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トオルちゃん、情報戦略まちがえてるョ

 ママが、溺愛する息子を珍しく叱っている声が聞こえる。

 「トオルちゃん、いま、そんなこと言っちゃだめじゃない。シンタロー君以外のお友だちはみんないなくなっちゃうし、ご近所からも総スカンを食らうわよ」

 日本維新の会共同代表の橋下徹・大阪市長の「慰安婦発言」が、大騒ぎになった。いつものことで、恋のから騒ぎならぬ戦争責任の空騒ぎなのだが。

 朝日新聞デジタルが、2013年5月13日昼前に流した第1報をみて、またうるさいことになりそうだなと思い、記事をパソコンにファイルしておいた。書き出しはこうだった。

 <戦時中の旧日本軍慰安婦について「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」と述べ、慰安婦は必要だったとの認識を示した>

 韓国の東亜日報は「日本政治家の妄言病が再発」と非難し、中国外務省の洪磊・副報道局長も、定例会見で「日本の政治家が人類の良識と歴史的正義に挑戦する発言を公然と行ったことに驚きと強烈な憤慨を示す」と批判した。

 中国政府当局者が「人類の良識と歴史的正義に挑戦する」などという言葉を使うと、お前のことだろと突っ込みを入れたくもなるが、当然予想された反応ではあった。

 AP通信は「大阪市長:戦時の性奴隷(sex slave)は必要だった」という見出しで発言を報じており、この記事は世界中の英語圏のニュースサイトに配信されたという。

 日本政府は、正式に史料を調べ、強制的に女性を連行した証拠はなかったとしている。

日本の歴史家も、戦時の新聞に「慰安婦募集、年齢17~23歳、月収300円以上」などの募集広告が載っていることから、強制連行をする必要はなかったという見方でほぼ一致している。当時のウエイトレスは月給10~15円ほどとされ、月収300円は現在の約150万円に当たる高給だった。億単位の仕送りをしていた慰安婦(プロ女性)もいたとされる。

 だが、国際社会には誤って伝えられ、日本が国として朝鮮半島などの女性を拉致し「性奴隷」としていた、ということで定着してしまっている。

 橋下市長は、昨夏から、慰安婦についての発言をくり返していた。いつだったかは「よその国でも例はあったのだろうか」と語っていた。

 ぼくは、拙著『<戦争責任>とは何か 清算されなかったドイツの過去』(中公新書)と『昭和史20の争点 日本人の常識』(文藝春秋)から関係ページをコピーし、市長あてに送った。

 別の人からは、現代史家・秦郁彦先生の名著『慰安婦と戦場の性』が届けられたらしい。

 5月13日の橋下発言は、明らかにそういう資料をもとにしたものだった。でも、生兵法というか、十分に問題の本質を理解しないまま、大阪市役所で記者に突然聞かれ、ついしゃべってしまったらしい。秦先生にでもきちんと話を聞いて理論武装しておくべきだった。

 ぼくは、ナチ組織やドイツ国防軍の「強制売春」について徹底取材したことがある。このタイトルで本を書いた女性クリスタ・パウルさんにも、ハンブルクで取材した。こういうテーマで現地取材した外国人は、ぼくくらいのものだろう。欧米ジャーナリストは、ナチ犯罪には関心が強いが、なぜかこのテーマには食いつかず、日本だけをヤリ玉にあげる。

 パウルさんは、ドイツのいくつかのメディアに取材してくれるよう申し込んだが、ごく小さな記事が載っただけで、断られたケースもあったと話していた。

 ドイツ人は日本の「性奴隷」について批判するが、まさか祖国にも同じような過去があり、しかも強制された売春=性奴隷だったことなど知らない。

 ドイツは潔癖で戦争責任についてもきちんと調べ反省しているように国際社会では思われているが、とんでもない。タブーはたくさんあるのだ。

 欧米メディアは、なぜ、日本のケースだけを追及するのだろう。韓国軍は、ベトナムで大規模レイプし、その混血児が数千人もいるというのに、それを無視する。米占領軍のことも橋下市長は言及した。日本だけがだめだ、という刷り込みが世界のメディアにある。

 その一番の理由は、国際社会における“声”の大きさのちがいだ。

 韓国系アメリカ人は、祖国のために熱烈なロビー活動を展開し、政治や世論を味方につける。「20万人が性奴隷にされた」などとめちゃくちゃなキャッチフレーズを振りかざし、実際に、慰安婦の像を建てること、日本批判の議決をさせることに成功している。つまり、反日一枚岩だ。

 これに対し、日本では日本人が足を引っ張る。そこが決定的ちがいだ。秦先生は、週刊新潮の最新号にこう書いている。「この『問題』は来日した盧泰愚元大統領が、日本人の運動家やマスコミ(注:朝日新聞のこと)が焚き付けて大騒動にしてしまったと語ったように、火元は日本だとも言えます」

 トオルちゃんは、そういうことをちゃんと認識しないまま発言したから、火だるまになっちゃったのだ。「国際情勢についての認識がたりなかった」と反省しても遅い。

 これは情報戦なのに、なぜ日本の政治家には、いつ、どんな場で、どこまで踏み込んで話すかという戦略がないのだろう。

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これでは、お尻もふけない

 アメリカでは、50~100年前、古い新聞紙をどうしていたんだろうか。弁当箱を包んだり、お尻をふいたりしていたんだろうか(笑)。

 ニューヨーク・タイムズの電子版購読が61%も占めるようになった、という記事を読んで、ふと疑問が浮かんだ。電子版だとお尻もふけない。もっとも、古紙をトイレットペーパーとして使っていたなんて話は、いまどきの若者は信じないかもしれないが。

 それはともかく、1日経って古くなった新聞を人はどうするのだろうか。もう「旧聞」だからと回収袋に入れる人が大半だろう。

 ぼくは長年、新聞記者をしていたから、新聞雑誌のこれぞという記事はスクラップしておく。そして、数か月後、数年後に読み直すことも少なくない。

 2013年も半ばにさしかかろうとするいま、雑誌『SAPIO』2013年2月号のちょっと気になる記事があった。タイトルはこうだ。

 「安倍首相とネトウヨ(ネット右翼)の『危険すぎる関係』」

 この雑誌は、本来、保守的な立場から、できるだけセンセーショナリズムを排して国際政治や国内政治のテーマを中心に編集している。

 でも、この安倍首相をめぐる記事は、タイトルを見ただけで、おやおやどうしたんだろう、と思わせるものだった。記事本文は、「ネットニュース編集者」というよくわからない肩書きのN氏が書いており顔写真も載っている。

 その本文を論じる前に、SAPIO編集部が書いたと思われるリードがすごい。

 <自民圧勝で安倍政権には日本再生の期待がかかる。ところが安倍氏のフェイスブックがすごいことになっている。熱烈支持者の声に乗って「ウヨク発言」のオンパレード。自民党に投票した数千万の有権者は、本当に安倍政権が戦争を始めることを望んだわけではあるまい。圧倒的多数を握る権力者だからこそ、あえてここに警告を発する。」

 これでは、左翼えせ平和主義者らが主宰していた某雑誌そのまんまの論調だ。

 「圧倒的多数を握る権力者」だから、メディアとしてブレーキをかけようとするのはわかる。でも「安倍政権が戦争を始める」という批判、非難はどこから来るのか。ほんとうにそういう事態が起こっているなら大変なことだが・・・。

 記事本文は、安倍氏が選挙中にフェイスブックを活用していた事実から始まる。橋下徹・大阪市長はツイッターで持論を展開しているが、「ここまで直接的かつ頻繁にネットユーザーに呼び掛ける政治家は安倍氏以外にはいない」とする。

 ぼくは、いわゆるネトウヨの発言やコメントには関心がないし、安倍氏のフェイスブックでの発信をフォローしたこともない。

 それでは、「戦争を始める」ような発信があったのかというと、記事に引用されている限りそんなトーンではない。

 昨年夏に、韓国の李明博大統領が竹島に上陸したことに関し、安倍氏は<日本政府は大使召還を含め厳しく抗議すべきです>と発信したという。

 これのどこが「ウヨク発言」なのかわからない。竹島(韓国名:独島)問題の歴史的経緯は長くなるから省くとして、日本のトップリーダーになろうとする人物が、大使召還を主張するのは当然のことだ。

 大使召還というのは、外交上、特定の国に対して不快感や抗議の意味を込めて行う。むしろ、穏便な措置だからまったく問題にはならないはずだ。

 つづいて、安倍氏が8月15日に靖国神社に参拝したことを報告し<北東アジア外交を見直す時を迎えています。それが英霊に応える道でしょう>と書いたことを取り上げる。

 「英霊」などという言葉を使うと、左翼えせ平和主義者なら嫌悪感を覚えるのかもしれない。だが、「祖国のために戦って亡くなった人たち」という意味であり、どの国の指導者もそういう人びとの霊に敬意を払い、献花したりする。無宗教施設のこともあるが、日本では明治以来、靖国神社がその立場をになっている。代替施設を作るのはむずかしい。

 北東アジア外交を見直す、というのも、新しい国際環境を構築しようとするなら当然のことだ。いつまでも「戦争加害者としてのニッポン」という発想にだけとどまるのはやめたほうがいい、とある在日コリアン知識人でさえ言っている。

 記事全体を読んでも、他に「戦争」を思わせる引用はない。筆者は「安倍政権が、戦争を起こして北東アジア外交を見直す」とでも言いたいのだろうか。まさか。

 一方、安倍首相が4月下旬の国会で「侵略という定義は、学界的にも国際的にも定まっていない」と発言し、内外で論議を呼んでいる。

 例によって中韓が批判しただけでなく、ワシントン・ポスト紙社説もステレオタイプで「歴史を直視していない」と書いた。国際法で侵略行為の明確な定義がないのは事実で、安倍首相はそのことを指摘した。

 第一、第2次大戦の2大敗戦国のひとつドイツをめぐっては、「侵略」や「侵略戦争」などまったく政治問題になっていないのに、なぜ日本ではそれが問題にされるのか。

 いずれにせよ、SAPIOのこの記事に限っては竜頭蛇尾で、アジテーション以外の何ものでもない。こんな記事ではお尻もふけない(~_~)。

 --毎週木曜日に更新--

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三遊間に飛ばす夢 栄光の巨人軍

 「バッター 4番サード長嶋茂雄 背番号3」

 東京ドームに女性アナウンスの声が響き渡ったとき、テレビ中継を見守っていたぼくは思わず涙をこぼした。いまでは球場のアナウンスのしかたも変わったが、あのころは、たしかこのように告げていた。ふたたび聞けるときが来るとは思わなかった。

 長嶋さんが巨人軍に入団したのは、ぼくが5歳のときだった。それからずっと、長嶋さんはぼくたちのスーパースターだった。

 長嶋茂雄、松井秀喜両氏へ、2013年5月5日、国民栄誉賞が授与された。そのあと、始球式が行われた。

 長嶋さんは背広を脱ぎ巨人のユニフォームの上着を着て打席に入った。当時とおなじで、背番号3の上に名前はない。松井さんは、上下ともすっかりユニフォームに着替えマウンドへあがった。背番号55の上にはMATSUIとあった。

 審判役の安倍晋三首相も巨人のユニフォームを着ていたのには、首をかしげたが。

 長嶋さんの栄誉賞は、誰も文句のつけようがない。というより、遅きに失した感じは否めない。授与するいいタイミングがなかったのだろう。松井さんについては、日米で大活躍し引退するいまが一番良かった。

 ぼくたち<巨人・大鵬・卵焼き>世代では、よく長嶋タイプか王タイプかということが話題になった。つい先日、杯を交わした友人もそのタイプ分けを口にしていた。

 つまり、天才肌か努力家かということだ。でも、授賞に際しての回顧映像を観ていると、天才とされた長嶋さんも実は大変な努力型だったことが改めて実感できる。

 日々の素振りの数は半端じゃなかった。愛弟子・松井選手にも、マンツーマンで素振りを指導した。

 松井さんがメジャーリーグでスランプに陥り、国際電話で長嶋さんに教えを乞うたことがあったそうだ。長嶋さんは電話をつなげたままで松井さんに素振りをするように言った。5回目に振った「音」を聴いて、「いまのだ。いまのでいい」と教えたという。松井さんはふたたび打てるようになったというのだからすごい。

 「燃える男」「絵になる男」ナガシマと言えば、1959年、初の展覧試合で阪神の村山実投手から打ったサヨナラ本塁打が、必ず持ち出される。

 個人的に決して忘れられないのは、1973年7月1日の巨人対阪神戦だ。その正確な日付は忘れていたが、インターネットのおかげで簡単に調べることができた。

 ぼくが大学へ入って2年目の夏だ。あえてテレビは持っていなかったので、ひとり下宿でラジオを聴いていたのだと思う。

 阪神の投手は上田次朗(当時の登録名は上田二朗)だった。サイドスローやアンダースローからコントロールのいいボールを投げ、変化球の切れもよく、プロ1年目から先発ローテーションに入っていた。

 1973年には結果として22勝を挙げ、オールスターゲームにも出場した。まさに、上田投手にとっては選手生活のピークと言っていい年だった。

 7月1日のナイターで、捕手はいつものように田淵幸一さんだった。9回1アウトまで、2ー0で阪神がリードし、あとふたりでノーヒットノーランという大記録になる。

 次のバッターは、3番の王選手だった。ぼくは、王さんには打てないような気がした。ノーヒットノーランを阻止するとすれば、4番の長嶋さんだろうと思った。

 王選手は凡退した。背番号3は、大観衆の期待を背負ってバッターボックスに入った。球場の興奮は最高潮に達した。ラジオからも、それは十分伝わった。

 巨人ファンにとって、もう試合の勝敗は関係なかった。ノーヒットノーランという不名誉を阻止できればそれでいい。

 たしか直球だったと記憶している。長嶋選手はバットを一閃させた。

 ぼくの記憶が正しかったことを、今回、ネット情報で確認できた。上田投手は、それまで3打席続けて長嶋選手を変化球で打ち取っていた。だから、長嶋さんは4打席目は変化球狙いに切り替えるはずと考えていた。田淵捕手は「それでも直球狙いで来る」と読みが合わなかったが、結局、上田投手の考えを尊重し直球で勝負した。

 打球は、三遊間の真ん中を抜けていった。

 翌朝、ぼくはスポーツ新聞を買いに走った。一面に踊った大見出しにはこうあった。

 「三遊間に消えた夢」

 一塁ベース上から、長嶋選手が上田投手に右手を差し出すようにし、声をかけている写真が載っていた。ネット情報によれば、こう言ったのだという。「ジロー、辛抱せいよ」

 上田さんはのちに「もちろん悔しい思いもあったが、長嶋さんと真っ向勝負したすがすがしさがある」と語ったそうだ。

 その年、巨人は9年連続日本一、いわゆるV9を達成した。

 長嶋選手が引退して監督に就任した翌年、松井さんが生まれた。

 なぜ、長嶋さんが「記録より記憶に残る男」と言われるのか、ぼくの子どもたちにもこういうエピソードを伝えていきたい。

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テロとレイプ――インド社会の病理

 ボストンマラソンの爆弾テロ事件にに吹っ飛ばされたように、日本のマスメディアはほとんど伝えなかったニュースがある。

 そこには、世界の新興国として注目されるインドの、どうしようもない負の側面があるのだが。

 2013年4月14日、ニューデリー東部の自宅近くで遊んでいた5歳の女の子が、行方不明になった。両親は懸命に探し、警察に駆け込んだが無視された。

 丸2日後、一家が暮らすアパート建物の1階にある部屋の中から、住民が少女のうめき声を聞きつけた。女の子はレイプされ、水も食べ物もない部屋に放置されていた。

 すぐ病院に収容されたが、性器にろうそくや瓶を挿入されて傷ついており外科手術や感染症の治療が必要だった。一命はなんとかとりとめた。

 女児が発見された部屋に住んでいたマノージという22歳の男が、インド東部ビハール州で逮捕された。マノージは、女の子を殺してしまったと思い込み、列車に乗って出身地へ逃走していたという。

 供述によると、約2時間にわたって拷問のような性的いたずらをした。

 両親は、警察が「医療費」の名目で“口止め料”として2000ルピー(約3700円)を渡そうとしたと主張している。

 事件発覚直後から、地元の警察署前などで大規模な抗議運動が行われた。デリー中心部の公園脇でも複数の女性団体・学生団体メンバーら約200人が集まり、「警察署長は辞職せよ!」などとスローガンを叫んだ。

 地元警察のトップ3人が停職処分とされた。そのうち2人は、両親の訴えに対し適切な対応をしなかった責任を問われた。もうひとりは、女の子の収容されている病院の前で、市民らが警察に対する抗議を行っていたとき、参加者の若い女性を平手打ちにしたシーンがテレビで放映され、処分された。

 インドでは、昨年12月、やはりデリーで女子学生が集団レイプされなぶり殺されて以来、若い女性や女児への性的暴行事件が相次いでいる。いずれも、警察の無能ぶりを露呈したものとして、抗議運動は全国に広がっている。

 2014年に総選挙を控える政府与党は、強姦罪への死刑適用など厳罰化法案を成立させたが、5歳の女の子が被害に遭った次の週にも、首都で未成年に対する3件の強姦事件が発生した。

 インド警察の無能ぶりは、いまにはじまったことではない。20年以上前のことだが、ぼくたち一家が住んでいたころにも、おなじような事件はくり返されていた。警察官は、「官憲意識」が強く、市民の味方になるより権力を振りかざすケースのほうが多い。そして、警察官に限らず、“袖の下”がなければ動こうとしない傾向がある。

 アジア人権センターが最近発表した統計レポートによると、2001年から2011年までのあいだにインドで報道された児童レイプ事件は48,338件にのぼる。2001年には2,113件だったが、2011年には約3倍の7,112件に急増している。

 統計レポートは、「事件の多くは警察に届けられず、表に表れた数字は氷山の一角だ」としている。

 この統計を引用したニューヨーク・タイムズ・グローバル版は、「インドの女性や子どもにとって他の国以上に性的暴行被害へのリスクが高いかどうか、たしかなことは言えない。犯罪統計は当てにならず、国別の比較調査も行われていない」とする一方で、インド政府が十分な対策をとっているのかということが政治問題化している、と指摘する。

 ぼくがみるかぎり、こうした事件の背景には、やはり貧富の格差にともなうフラストレーションや社会の矛盾があるだろう。

 2008年にインドを再訪したとき、最高学府デリー大学で教鞭を執る旧友のプラメシュは、“格差の恐怖”を口にしていた。そのとき、深刻な社会問題となっていたのは、イスラム教徒の一部過激派によるテロだった。

 過去約20年間、経済的な急成長を遂げるインドだが、イスラム教徒に貧しい者が比較的多いのは現実だ。格差が広がり、絶望的になってテロに走る若者の絶対数も、それだけ急増している。テロは宗教的理由というより社会的なところに主因があるだろう。

 ボストンマラソンでの爆弾テロは、アメリカで起こったことだけに、日本のメディアも背景などについて大きく取り上げつづけている。でも、インドでは、死者が数人程度のテロは、残念ながら日常茶飯事だ。

 インドのテロとレイプは、貧困=絶望というある意味で同根の部分があるように思えてならない。

 そして、女性蔑視や男尊女卑の風潮が、日本などで考えるよりはるかに深刻であることも大きな要因になっている。うちのかみさんも、使用人らを相手にそれで苦労した。

 くわえて、インドにはカースト制があり、下位カーストの女性ならレイプしてもあまり罪悪感などはなく、社会もそれを容認する面があることも否定できないとされる。

 経済的に突っ走るインドは、そのスピードとともに矛盾も広がっているのだ。

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