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トオルちゃん、情報戦略まちがえてるョ

 ママが、溺愛する息子を珍しく叱っている声が聞こえる。

 「トオルちゃん、いま、そんなこと言っちゃだめじゃない。シンタロー君以外のお友だちはみんないなくなっちゃうし、ご近所からも総スカンを食らうわよ」

 日本維新の会共同代表の橋下徹・大阪市長の「慰安婦発言」が、大騒ぎになった。いつものことで、恋のから騒ぎならぬ戦争責任の空騒ぎなのだが。

 朝日新聞デジタルが、2013年5月13日昼前に流した第1報をみて、またうるさいことになりそうだなと思い、記事をパソコンにファイルしておいた。書き出しはこうだった。

 <戦時中の旧日本軍慰安婦について「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」と述べ、慰安婦は必要だったとの認識を示した>

 韓国の東亜日報は「日本政治家の妄言病が再発」と非難し、中国外務省の洪磊・副報道局長も、定例会見で「日本の政治家が人類の良識と歴史的正義に挑戦する発言を公然と行ったことに驚きと強烈な憤慨を示す」と批判した。

 中国政府当局者が「人類の良識と歴史的正義に挑戦する」などという言葉を使うと、お前のことだろと突っ込みを入れたくもなるが、当然予想された反応ではあった。

 AP通信は「大阪市長:戦時の性奴隷(sex slave)は必要だった」という見出しで発言を報じており、この記事は世界中の英語圏のニュースサイトに配信されたという。

 日本政府は、正式に史料を調べ、強制的に女性を連行した証拠はなかったとしている。

日本の歴史家も、戦時の新聞に「慰安婦募集、年齢17~23歳、月収300円以上」などの募集広告が載っていることから、強制連行をする必要はなかったという見方でほぼ一致している。当時のウエイトレスは月給10~15円ほどとされ、月収300円は現在の約150万円に当たる高給だった。億単位の仕送りをしていた慰安婦(プロ女性)もいたとされる。

 だが、国際社会には誤って伝えられ、日本が国として朝鮮半島などの女性を拉致し「性奴隷」としていた、ということで定着してしまっている。

 橋下市長は、昨夏から、慰安婦についての発言をくり返していた。いつだったかは「よその国でも例はあったのだろうか」と語っていた。

 ぼくは、拙著『<戦争責任>とは何か 清算されなかったドイツの過去』(中公新書)と『昭和史20の争点 日本人の常識』(文藝春秋)から関係ページをコピーし、市長あてに送った。

 別の人からは、現代史家・秦郁彦先生の名著『慰安婦と戦場の性』が届けられたらしい。

 5月13日の橋下発言は、明らかにそういう資料をもとにしたものだった。でも、生兵法というか、十分に問題の本質を理解しないまま、大阪市役所で記者に突然聞かれ、ついしゃべってしまったらしい。秦先生にでもきちんと話を聞いて理論武装しておくべきだった。

 ぼくは、ナチ組織やドイツ国防軍の「強制売春」について徹底取材したことがある。このタイトルで本を書いた女性クリスタ・パウルさんにも、ハンブルクで取材した。こういうテーマで現地取材した外国人は、ぼくくらいのものだろう。欧米ジャーナリストは、ナチ犯罪には関心が強いが、なぜかこのテーマには食いつかず、日本だけをヤリ玉にあげる。

 パウルさんは、ドイツのいくつかのメディアに取材してくれるよう申し込んだが、ごく小さな記事が載っただけで、断られたケースもあったと話していた。

 ドイツ人は日本の「性奴隷」について批判するが、まさか祖国にも同じような過去があり、しかも強制された売春=性奴隷だったことなど知らない。

 ドイツは潔癖で戦争責任についてもきちんと調べ反省しているように国際社会では思われているが、とんでもない。タブーはたくさんあるのだ。

 欧米メディアは、なぜ、日本のケースだけを追及するのだろう。韓国軍は、ベトナムで大規模レイプし、その混血児が数千人もいるというのに、それを無視する。米占領軍のことも橋下市長は言及した。日本だけがだめだ、という刷り込みが世界のメディアにある。

 その一番の理由は、国際社会における“声”の大きさのちがいだ。

 韓国系アメリカ人は、祖国のために熱烈なロビー活動を展開し、政治や世論を味方につける。「20万人が性奴隷にされた」などとめちゃくちゃなキャッチフレーズを振りかざし、実際に、慰安婦の像を建てること、日本批判の議決をさせることに成功している。つまり、反日一枚岩だ。

 これに対し、日本では日本人が足を引っ張る。そこが決定的ちがいだ。秦先生は、週刊新潮の最新号にこう書いている。「この『問題』は来日した盧泰愚元大統領が、日本人の運動家やマスコミ(注:朝日新聞のこと)が焚き付けて大騒動にしてしまったと語ったように、火元は日本だとも言えます」

 トオルちゃんは、そういうことをちゃんと認識しないまま発言したから、火だるまになっちゃったのだ。「国際情勢についての認識がたりなかった」と反省しても遅い。

 これは情報戦なのに、なぜ日本の政治家には、いつ、どんな場で、どこまで踏み込んで話すかという戦略がないのだろう。

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