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6万2000人のため息、そして、地鳴り

 <あの精神力はなんだろうね!!>

 <スターってそういうものでしょう!!>

 試合後、妹とこんなメールのやりとりをした。

 2013年6月4日は、いつもとなにかちがう一日だった。早く夜になって欲しいが、半面、どきどきもする。

 午後、郷里の母から電話がきた。「夜は忙しいだろうから、いまのうちに伝えておくけど・・・」。先週末、緊急入院した超高齢の父のようすを伝えてきた。

 午後18時49分、妹からきた最初のメールはシンプルだった。<行ってる?>

 その意味はひとつしかない。サッカーW杯アジア最終予選の地、埼玉スタジアムへ行っているかということだ。オーストラリアと戦う。引き分け以上でブラジルへ行ける。

 埼スタは地元だから、もちろんチケットにトライした。かみさんの分と2枚をネットで申し込んだが、抽選ではずれた。50万人が応募した、と後で知った。

 試合の3週間ほど前、ネットニュースが「チケットが完売し、当日売りはない」と伝えた。???。なんでも、キャンセル分を再販売していたというのだ。知らなかった。せいぜい数千枚だろうが、20万人が応募したらしい。

 結局、家でテレビ観戦となった。ひとり暮らす息子も帰ってきて、かみさんと3人で応援態勢を敷いた。ぼくは、いつものようにサムライブルーの青いタオルを肩にかけた。2011年9月2日のアジア3次予選、北朝鮮に勝ったとき、埼スタの売店で買ったものだ。もう引き分けかと誰もが思った後半ロスタイム、DF吉田のヘディングで勝ちきった。

 対オーストラリア戦がはじまる前の午後18時57分には、妹から<本田カッコイイ>というメールも届いた。ハートマーク付きだ。

 7時34分、ゲームがはじまった。最終予選で1勝しかできず崖っぷちに立つオーストラリアは、がんがん攻めてきた。ザックJAPANも悪くはない。

 相手ゴール前で、MF遠藤が見事な切り返しを見せ、利き足ではない左でシュートしたが、わずかにはずれた。MF香川の正面からの強烈シュートは、相手GKシュワーツァーが右手一本ではじいた。

 埼スタで観戦していた人は、後でこう言っていた。「6万2000人が一斉にため息をつくのを初めて体験しました」

 振り返れば、オーストラリアのシュート計10本に対し、日本は19本を打ったが、決められない。

 後半36分には、MFオアーのクロスが流れてゴール右上隅に入ってしまった。サッカーでは、決めるところで決めないとこういうことがよく起こる。テレビ朝日の解説者松木さんは「まだじゅうぶん時間はありますから」と言ったが、あと10分しかない。

 身長で上回るオーストラリアは、日本がコーナーキック(CK)を得たとき空中戦にもちこもうと、ショートコーナーをさせないよう徹底していた。そのシーンが、前半に3回つづいた。

 後半も間もなく90分になろうとするとき、日本が4回目のCKを手にした。ボールを蹴ろうとするMF清武のところに、MF本田が猛然と近づいてパスを受けた。オーストラリアの一瞬の隙を突いた。

 本田は、振り向いてクロスを放った。それが、相手DFマケイの左腕に当たりハンドとなった。ぼくは、当然、PKの名手遠藤が蹴ると思った。しかし、本田がボールをつかみPKマークへ近寄っていく。

 W杯予選で、本田は2回、PKをど真ん中に蹴り、そのうち一度は止められている。今度はおそらく、右隅に速いボールを蹴り込むのだろうとみた。

 テレビ視聴率から推定すると、6000万人以上の日本人が固唾を飲んでいた。本田は、ど真ん中に強烈な球を蹴り込んだ。GKシュワーツァーは向かって右へ飛んでいた。

 埼スタにいたひとは言う。「地鳴りがわき起こった」。ザックJAPANのW杯進出は、その瞬間に決まった。

 息子とぼくは、試合直後、本田のPKについて話し合った。世界の一流GKにとって、こんなときに仁王立ちする選択肢はほとんどない。もし、左右どちらかに蹴られれば、言い訳がきかない。

 キッカーの動きを見て、一か八か横に飛ぶしかない。とりわけ、GKシュワーツァーは手足が長くスパイダーマンのようだ。もし、真ん中に蹴られても足で止める可能性はある。

 本田は、シュワーツァーの顔面をめがけて蹴った。GKの足はまるで届かなかった。なんというくそ度胸か。

 翌日、ザックJAPANの面々は記者会見に臨んだ。主力選手は、喜びよりも口々に課題を語った。ボール支配率57.3%だったのに、流れのなかで得点を挙げられなかった。

 ただ、DF吉田が放ったお笑いコンビ・サバンナ八木真澄のギャグが、このチームの空気を物語っていた。「『ブラジルの人、聞こえますかー。もうすぐ行きますよ』。お後がよろしいようで。ありがとうございます」

 筆者から:ウェブサイト【文芸工房ブーゲンヴィリア】をぜひ覗いてください。
 http://rab-kisa.biz

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