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エリートが悪いとは言わないが

 とても面白く参考にもなる番組がある。テレビ東京系『YOUは何しに日本へ?』だ。たとえば、日本の国際空港に張り込んで、外国人に突撃インタヴューする。

 2013年7月8日の放送では、成田で津軽三味線を背負ったアメリカ人青年をつかまえた。青森県での大会に参加するため来日したという。その場で手作りの三味線を組み立てて演奏し、通りがかった人たちからやんやの拍手をもらっていた。

 「日本の漫画が大好きで、日本語を勉強したいから」とか「アニメ制作を習いたい」「禅を極めてみたい」などというのは、いまや陳腐なほうの答えだ。

 ニッポン大好き人間が地球上で爆発的に増えているように思える。国際交流基金が8日発表した調査結果(速報値)によると、海外で日本語を学んでいる外国人は、昨年、398万4538人に上り、過去最高を更新した。前回の2009年調査に比べ9・1%増えている。

 ぼくの個人的経験でも、台湾やパキスタン、トルコなどもともとの親日国は当然として、ポーランドやチェコ、デンマークなどでも「日本語を習いたい」「死ぬまでに1回はニッポンへ行ってみたい」というひとによく会い、うれしく思ったものだ。

 ただ、文化情報では日本の輸入超過らしい。盲点もある。茶の間でいながらにして外国の風習や外国人の日本に対する思いを知ることはできても、ある国で誰でも当たり前に知っていることを、マスメディアは意外に伝えない。メディアというのは、何か新しいモノ、もの珍しいモノを本能的に取り上げようとするからだ。

 たとえばA国の教育制度などといった、重要ではあるがドラマ性もお涙ちょうだいもない番組は、せいぜいNHKのEテレでたまに放映するくらいで、一般には伝わらない。

 そこでいま書くのだが、ドイツでは、小学校の4年生で一生の針路がほぼ決まってしまう。と言えば、日本の教育ママゴン(古いか!)はひっくり返るかもしれない。

 針路を決めるポイントは、小4までの成績だ。日本の評価制度とは微妙にちがうらしいが、ともかく、お勉強ができる子は、将来、大学へ進む道へ行く。そうでない子は職人などになるため実技学校へ進む。

 日本でこんな制度を導入しようとしたら、大騒ぎになるにちがいない。「まだ小学生なのに、大学へ行く可能性がなくされてしまうなんて、非民主的で非人道的じゃございませんこと?」。ママゴンは眉を吊り上げるだろう。

 それでも、いまのわれわれの教育制度が世界でベストだと思っているひとは、ほとんどいない。教育界でも改革の機運は急速に高まっているらしい。

 そのひとつが、大学でのギャップイヤー制度導入案だ。ぼくは全面的に賛成する。大学生に数年間の休学を認め、海外留学や企業、福祉団体などでの研修で社会経験を積ませる。

 ドイツでは、そうした制度は古くからあり、大学を4年で卒業するなどというケースは聞いたことがない。ぼくがボンに駐在しているとき、ふたりの取材助手を雇っていたが、どっちも本業は大学生だった。前任者の時代に自分のほうから売り込んで来て、能力が高そうだったから採用したのだという。

 ふたりは親友同士で、クラウディア嬢は短髪ブロンドのスポーツ系、ザビーネ嬢はロングヘアの似合うお嬢さまタイプだった。どっちも美人だから、特派員仲間や取材先にうらやましがられた。

 つまり、オフィスはちょっとしたハーレム状態だった!? といっても、ふたりとも東京に留学したことがあり、日本語はかなりできたから、うちのかみさんや子どもたちとも仲良くやっていた。

 生活に慣れないころは、買い物の仕方などを教えてもらった。日本とはずいぶんちがう。「どうせ車を買うならメルセデスの新車がいいですよ」と薦めたのは、“飛ばし屋”のクラウディア嬢だった。ザビーネ嬢は、のちに難関のEU職員になったとうわさで聞いた。

 日本でも、一部の大学ではすでにギャップイヤー制度を取り入れている。責任感や問題解決能力、学業意欲で目覚ましい効果があるそうだ。

 うちの子どもたちが通ったベルリン日本人学校には、目立って評判のいい先生がいた。あるとき、飲みに誘い聞き出したら、教員採用試験に落ち、1年か2年、スーパーで肉のパックをつくるアルバイトをしていたという。挫折はひとを大きくする。

 逆に、22歳で教員になったある女性教師は、何かというと校長とぶつかり、子どもたちにも保護者にも受けがよくなかった。子どもは、先生の人格や器を自然と見抜く。

 ぼくも、大学卒業後2年間、あえてフリーターをしていた。いわば自主的ギャップイヤーで、時代を先取りしていたわけだ。新聞記者にはそういう輩が多い。

 ギャップイヤー制度が定着すれば、「新卒に限る」などという世界的にみても馬鹿げた採用条件は、過去の笑い話となる。

 真っ先に制度を義務づけて欲しいのは、一般公務員と教師、検察官、裁判官などだ。エリートが悪いとは言わないが、自分で経験し、失敗し、つまずいて、世間の風にたっぷり当たってから仕事について欲しい。

 「YOUは何しにこの職業へ?」なんて聞かなくてすむのがいい。

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