« 吸うひとよ マナー守れよ わが街で | トップページ | 残暑にレッドテープ、よけい体温があがる »

毎月、只で味わう男のお楽しみ

 個人情報がだだ漏れだから個人情報保護法ができたのだろうが、個人情報保護法があるから個人情報が高く売れ、結果として個人情報がだだ漏れになるのではないか。

 どうも、ニワトリと卵のようでよくわからない。

 いつのころからか、毎月1回、東京のG社が制作、発行するカタログが送られてくるようになった。エロスの世界を描く春画やDVDなどに特化していて、カラー写真をふんだんに使い、とてもビジュアルにまとめられている。中身を見るかぎり対象は中高年だ。

 送る相手は、「中高年」「男性」らしいから、そういう条件に絞った個人情報のリストを手に入れているのだろう。自分の個人情報が金で売り買いされていることを想像すると、ちょっと怖い感じもする。

 郵送されてくるカタログのメインはタブロイド版だが、別に、のりで封をした封筒が入っていることもある。封筒には思わせぶりな文句が印刷されている。「特別(秘)映像特集 60歳以上の方のみご開封ください。*ご興味のない方は開封せず、このまま破棄してください」

 週刊誌の袋とじとおなじようなそそり方だ。「60歳以上」でもないが、「ご興味」がないわけでもないので、つい開封することになる。

 この2013年夏に送られてきたものをのぞくと、「夏バテなんて吹き飛ばせ! 日頃の感謝を込めて、大放出の(特)情報 大感謝特集」と銘打って、「入手困難・希少DVDを限定販売」と、またまた思わせぶりな大活字が踊っている。

 その商品群のタイトルもそそる。『巨乳人妻 熱海温泉不倫旅行』。33歳という全裸の女性が野外で全裸の男性に秘部を愛撫されているシーンが、ばっちり映っている。『親友の母』というDVDはどうやらシリーズもので、ヘアヌード姿のお母さんに少年が寄り添っている。これらは20枚セットで8000円と安い。

 『私の妻を抱いてみないか? とある熟年夫婦の刺激ある性生活』というそれこそ刺激的な作品には、こんな商品コピーがついている。「夜の夫婦生活が淡泊なものになっている事に不満を持つ妻・かおり。そんな妻の欲求不満を解消させたいと願う正造は、居候の身である若い男・誠をけしかけ、かおりを抱かせるのであった。」

 カタログには、こんなDVDが何十枚と載せられている。なぜ「60歳以上」限定なのかはさっぱりわからない。男性週刊誌のグラビアがたいてい若いモデルさんを使っているのに対し、このカタログにある商品のモデルは若くて30代、ときには60歳以上とも思える“超熟女”も登場する。その辺が中高年向けというわけか。

 感心するのは、商品コピーの簡潔できちんとまとめられた文章だ。

 2013年晩夏号のメインであるタブロイド版は春画の特集だった。「半世紀振りに発見された幻の名品を高精細復刻 紀州徳川家の秘宝」。監修として、学習院大学教授の実名があげられている。

 コピーはこうだ。「昭和の初期にその一部が紹介されたのみで、その後所在不明とされていた勝川春章の幻の名品が、このほどついに発見されました。絹本に肉筆で細密に描き込まれた筆致、彩色の保存のよさ、まさしく春画史上、いや浮世絵史上屈指の名品といえるでしょう。…」

 毎月毎月、よくもこれほどたくさんのエロス商品が作られているものだ。これだけカラー写真を使えば、カタログの制作コストもかなりかかっているだろう。

 カタログ作りの舞台裏に興味をひかれ、直接G社に電話してみた。

 中年スケベのおじさんたちが集まった職場なのだろうと勝手に想像していた。それはあっさり裏切られた。

 電話に出たのは、アルバイトらしき若い女性だった。ブログでカタログのことを紹介したい旨を伝えると、「それじゃ、担当者に代わります」と電話を回してくれた。

 担当者という人物も若い女性だった! 一番知りたかった商品コピーの執筆者についてまず尋ねると、「専属デザイナーふたりが書いています」と言う。毎月の商品の数は膨大だ。テーマはエロスに限られており、コピーの表現を書き分けるのもむずかしそうだ。だから少なくとも数人のライターを抱えていると踏んでいたのだが。

 ふたりで毎月、カタログ全ページのデザインをしコピーも書いているわけだ。てんてこ舞いの作業だろう。

 次に知りたかったのは、どうみても素人の中高年カップルがよく登場することだ。「作品によってプロのAV俳優さんもいますし、素人の方もいます」と言う。よくあれだけの数の素人を確保できるもんだ。「作品を作るのは別の会社で、うちはカタログを制作するだけですから」

 この手の商品はふんだんにあり、数をそろえるのはそう大変じゃないという。発行部数は、案の定「非公開」だった。

 カタログは、たしかによく出来ている。でも、ぼくに言わせれば致命的な問題がある。

 あまりによく出来ているため、カタログを眺めるだけで十分で、商品を買う気にならないのだ。個人情報のだだ漏れも、ときには悪くない。

|

« 吸うひとよ マナー守れよ わが街で | トップページ | 残暑にレッドテープ、よけい体温があがる »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/540025/58039678

この記事へのトラックバック一覧です: 毎月、只で味わう男のお楽しみ:

« 吸うひとよ マナー守れよ わが街で | トップページ | 残暑にレッドテープ、よけい体温があがる »