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騙すほうが悪いのか、騙されるほうが悪いのか

 誰にでも心の隙というのはある。こんな巧妙な手口でやられたらたまらないなぁ、という生々しい話を聞いた。友人の娘さんの体験だ。東京で長年、キャリアウーマンをしている。仮に珠美さんとしておく。

 2014年1月中旬、スマホの「友だちを作ろう」とかいうアプリでA子さんと友だちになった。何となく話が合い、「今度、いっしょにお茶しようよ」ということになった。

 ある日の夕方、渋谷のカフェで初めて会い、恋話などで盛り上がった。その最中、A子さんのスマホが鳴った。知り合いのB子さんだった。

 「今日、食事するはずだった友だちが急な残業で来れなくなった。いま、原宿でひとりなんだけど、そっちへ合流していい?」

 やがて、B子さんがカフェに現れた。B子さんは、A子さんとおなじ東北のある県の出身で2歳年上という。自然な流れでお金の話になり、B子さんは「お金は使うときには使っちゃう。両手にブランドバッグって感じで」と言った。

 A子さんは「えーっ。どうしてそんなにお金貯まるのぉ?私、貯金20万円くらいしかない」と興味をそそられたようだった。B子さんが「教えてもいいけど、あんまり教えたくはない」と、もったいぶって話したところによると、幼なじみのT君という青年が東京でいい仕事をしているという。B子さんは、お金に困っていたときT君に助けてもらったことがある、と言った。

 T君は、金融に詳しくある事業展開をしていてお金の貯め方をよく知っているそうだ。珠美さんもA子さんもますます興味を持って具体的な話が聞きたかった。B子さんは、その場でT君に電話した。

 珠美さんとA子さん、B子さんの3人は、後日、新宿の高層ビルにあるこじんまりとしたオフィスへ行った。パソコンとファクス機、丸いガラステーブル、いすが4脚あるだけだった。Tと名乗る青年がいて、紙にいろいろ書きながら資産運用の説明をはじめた。珠美さんは、年収や貯蓄額を聞かれ素直に答えた。T君は「銀行に定期を預けていても、いま金利は低いからいくらにもならないでしょ。月に数万円くらい稼ぐ方法はあるよ」

 それはJRAについてのものだった。珠美さんは競馬などしたことがなかったが「JRAは120年もの歴史があり、何10年分ものデータをコンピューターで分析すれば、どの馬がどんな天候で勝ってるか統計学的に予測できる」とT君は言った。そして、テーブルのパソコンで今後1年分のシミュレーションを出した。はずれ、はずれ、はずれ、当たり。

 「たとえば、自己資金10万円ではじめた場合、はずれがつづけばお金は減っていくが、いずれ当たりが出て減った分を取り戻してプラス分が利益になる。はずれがつづいても、その反動で大きな利益が出る」

 珠美さんもA子さんも、「このシステムすごいね」とすっかり乗り気になった。出資額が大きいほどプラスも大きい。システムのPC用ソフトを買わないといけないが、プラス分を上乗せすればすぐに元は取れる、とT君は言った。

 ソフトのDVDは94万円という。珠美さんは高いと思い「そんなに払えません」といったんは断った。すると、B子さんが「私はP社でお金を借りてソフトを買い、返済が終わってプラスが出たからひとり旅をしたのよ」と言った。A子さんは「そうなんだ」とうなずいた。T君は「特別に10万円引いて84万円でいいよ」と押してきた。

 B子さんは「P社までついて行ってあげるわ」とついてきて、珠美さんは限度額の50万円を借りた。A子さんもおなじように書類を書いていたから、借りたのだと思った。さらにA社で20万円借り、貯金も14万円引き出し、T君のオフィスで現金払いした。「高額商品の買い物だから、周囲はびっくりする。利益が出るまで誰にも言わないように」

 それから数日後、珠美さんは何かおかしいと思いネットで調べると、まったくおなじ経験をした人がいた。彼氏に相談したら「そりゃ、騙されたんだ」。T君に電話をかけたが「クーリングオフ期間を1日過ぎてるから解約には応じられない」と突っぱねられた。

 彼氏が消費生活センターに問い合わせると、「期間は過ぎていても、とにかく内容証明郵便で解約の通告をして」と言われた。彼氏はさらに知り合いのつてをたどって弁護士に連絡を取ったうえで、Tに電話をかけ、「解約に応じなければそれなりの手段を取る」と直談判した。

 珠美さんが郷里の父親つまりぼくの友人にSOSの電話をしたのは、その後だった。「まず、借りたお金をすぐに返さないと大変なことになる」。土曜日午後だったが、ネットバンクから珠美さんの口座へ送金した。「必ず警察に行くように。でも、詐欺の立件は難しいし、だめなら弁護士だ」と珠美さんに伝えた。84万円はたぶんあきらめるしかない。

 ぽっと出の小娘じゃあるまいしそんな手に乗せられるとは。友人がもんもんとしていたその夜遅く、珠美さんからメールが入った。「Tから、会社のイメージが悪くなると困るし、“余計なこと”をしないのを条件に全額返金するって電話がきた」

 9回裏2死、逆転さよならホームランだ!被害者が次々と生まれている恐れはあるものの、珠美さんに危害がおよぶかも知れず、警視庁に届け出もできない。

 もちろん、彼氏の株は、インチキ統計学とは関係なく、大いに上がった。

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コメント

私も同じ手口でひっかかってしまって、今どうすればいいか混乱しています(._.)

投稿: (´・_・`) | 2015年2月17日 (火) 01時22分

突然コメント失礼致します。
私も全く同じ被害に会いました。
どうかお力になっていただけないでしょうか。

投稿: はな | 2015年6月11日 (木) 10時15分

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