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うひゃ~、シロアリをサラダにかける!?

 出雲にUターンして初めての5月を迎えている。わが家の北には島根半島の通称北山が横たわり、南には仏経山(旧名・神名火山)を望む。358本と桁外れの銅剣を出土した荒神谷遺跡がその麓にある。山々では、色とりどりの新緑が燃えている。

 緑にも無数の種類があることは、都会に暮らしていると実感できない。せいぜい、グリーンの多様美で知られるジブリ作品で味わうくらいだ。出雲平野の民家の庭先にはサツキやツツジ、アイリスが満開で、ウォーキングしていると最高の季節を味わえる。

 でも、それは同時に、シロアリの季節でもある。地元紙の折り込みにあったチラシ広告をみると、山陰地方でシロアリを発見できるのは、1年を通してこの5月いっぱいのワンチャンスしかないという。

 いまの時期、特に雨上がりなどの蒸し暑い日のお昼ごろ、繁殖期を迎え「羽アリ」となったシロアリたちが、一斉に飛び立つのだそうだ。ひとつの集団からの分家いわゆる巣別れ行動で、「集団見合いを兼ねたシロアリの新婚旅行」なのだという。

 おなじ新婚さんでも、こちらにとってはめでたくもなんともない。

 カップルになった2匹は、羽を落とし地中にもぐって産卵をはじめる。光や風が嫌いなシロアリは、ふだん、住宅の床下などに棲息しており、この時期だけこうして表に出る。家の内外で、複数の羽アリまたはその羽を見つけたら、まちがいなく近くにシロアリの集団がいるそうだ。

 Uターンして間もなく、わが家に4棟ある物置の不要品を業者に頼んで処分してもらった。物置がすっかり片付いてせいせいしたのだが、そのうちのひとつは一部の柱の根元がぼろぼろになっていて、シロアリにやられていた。これまで、大工道具などの棚で死角になっていた場所だ。

 まだ一部だったからよかったが、被害が広がっていたら大変なところだった。出入りの大工さんに相談し、とりあえず市販のシロアリ駆除スプレーをかけた。

 母屋のほうは、以前から専門業者と契約して、年に一度、定期検査をしてもらっている。床下に取り付けられたファンがずっと回りつづけており、最初は何だろうとおもったが、これは換気をよくしシロアリを寄せ付けないための装置だった。シロアリはとにかく湿っぽい場所が好きで、床下を中心に浴室、玄関、トイレ、キッチンなどに多く発生するそうだ。

 阪神淡路大震災や東日本大震災で倒壊した木造住宅の多くが、シロアリ被害を受けていたとされる。目につきにくい所こそ気を配らなければならない、という教訓がここにもある。

 出雲地方に住んでいるのは、なぜか「ヤマトシロアリ」と呼ばれる種だという。ヤマト族と言えば、古代出雲王朝を滅ぼし住民を東北や九州に追い払ったともされる。その名のついたシロアリに、大切なわが家をむしばまれる恐れがあるとは、何ともやりきれない。もっとも、宍道湖のヤマトシジミのように、ヤマトのつく生物名は全国的によくある。

 さて、シロアリなんて最悪の害虫でいいところなど何もないと思い込んでいたら、あるシロアリ予防駆除業界の雑誌に、その「功と罪」をつづるエッセイがあった。

 建築物の木材を食い荒らすため人間には嫌われているが、その一方で、森林などでは朽ちた木を自然界にもどす“掃除屋”として活躍しているという。言われてみればたしかにそうで、生物研究と称して山歩きをしていた高校、大学時代、枯れ木がぼろぼろになって大地に帰りつつあるのをよく見かけた。あれは、シロアリの働きだったのだ。

 エッセイの筆者は、20年前、オーストラリア・タウンズビルにある連邦科学産業研究機構のデービズ研究所を訪れ、シロアリの被害と有益性について教えられたそうだ。かの国での被害額は、建築物などで年に2億豪ドル、農作物で100万豪ドルにのぼる。だが、北部の乾燥地域に棲息するシロアリは、バクテリアや菌類と共生関係にあり、エサとして摂った草や木を分解し植物の生長に有効な物質にするのを助けているという。

 また、地中にシロアリが掘ったトンネル状の「蟻道」は、シロアリが去ったあと雨水や空気の地中循環に役立っており、土壌改良メカニズムの一翼を担っているのだそうだ。

 自然環境に役立っているだけじゃない。近年、動物の酵素では分解されない食物繊維の一種セルロースを、シロアリに分解させる研究も進んでいる。これまでは利用できなかったセルロース系バイオマスをエサにしてシロアリを養殖し、人間にとって価値がある物質にするノウハウが探られている。

 さらに、えっ!?げっ!っという話もエッセイは紹介している。

 シロアリを乾燥すると重さの45~75%は脂質で、その組成はオリーブオイルに近い。そのため、シロアリから絞った「シロアリオイル」を食用油脂(!!)やバイオ燃料にする研究開発も進められているという。

 オリーブオイルは、サラダ油などとちがいオレイン酸をたっぷりふくんでいるから体にいいとされる。じゃあ、シロアリオイルをピザやサラダにかける気になるか。

 まあ、「ヘルシー」が昨今のキーワードだから、シロアリオイルのテレビCMががんがん流れる日が来ないともかぎらない。

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