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月遅れの端午の節句に

 出雲地方は、6月5日、端午の節句を祝った。わが家の息子は東京にいるが、とりあえず、かみさんは家の表座敷に五月人形を飾って、遠くから健やかな成長を祈った。

 五月人形といっても、ぼくが子どものころ買ってもらったのは、豊臣秀吉だという騎馬姿だった記憶がある。その人形はもうないが、いっしょに飾ってもらっていた出雲特産の張り子の虎はいまでも押し入れにあった。それに、母が初孫のために買ったという人形も家にあるのでいっしょに飾った。

 子どものころ、母が五月人形を飾りちまきを作ってくれたのを覚えてはいても、それが月遅れとは認識していなかった。新聞記者になって長野支局へ赴任し、信州ではたいていの年中行事が月遅れで行われることを知った。ひな祭りを4月3日にやるのは、春が遅い山国だからだろうと思っていた。

 雪国でもないわが郷里でもそうなのは、Uターンして初めて知った。子どものときは、そういう行事や季節の移ろいはあまり気にかけないものだ。

 端午の節句といえば、やはりクマザサの葉で巻いたちまきだ。まだ宅配便のなかった学生時代、京都の下宿に郵送小包でちまきが送られてきたのが懐かしい。これで少しだけ食費が浮くな、と思いながら共同のキッチンでちまきをゆできな粉にまぶして食べると、季節感を味わえた。でも、それが6月初めの梅雨入りの時季だったとは。

 ぼくが一番気に入っている京都のお祭り、7月の祇園祭でも、ちまきは重要な役割を担っている。初めて見たとき、その巻き方が出雲地方のとかなりちがって細いのが印象的だった。もっとも、この祭りではちまきは食べ物ではなく、厄病・災難除けのお守りだそうだ。京都のひとは、毎年、祇園祭のときに山鉾のお会所や八坂神社でちまきを買い、一年間玄関の上に飾っておく。

 そもそも祇園祭は、平安時代前期、疫病が流行したため、スサノオノミコトなど八坂神社に祀られた神に疫病を鎮めてもらおうとしたのが始まりとされる。須佐之男命といえば出雲の祖神であり、ちまきも元はと言えば出雲から京都にもたらされたのかもしれない。

 出雲へUターンして初めて迎える今年は、施設に入っている母が早々と「節句が来たらちまきの作り方を伝授する」と張り切っていた。その時期になると、スーパーでちまき用の白い米の粉「まきの粉」やチョコレート色の「きび粉」、それにクマザサとそれを結ぶイグサを売り出すからあらかじめ買っておくよう、母からかみさんに電話があった。

 ぼくが子どものころは、クマザサは確か山へ採りに行った記憶がある。それをスーパーで買う時代になっているのは当然の流れとして、いまでも各家庭でちまきを作る風習が残っているとは感慨深いものがある。

 すると、5月の半ば、回覧板に地元コミュニティセンターのちまき作り体験ボランティア募集のチラシが入ってきた。三世代交流事業として、子どもたちにちまき作りを教えるのだという。

 「笹を洗ったり、葉の仕分け、箸やハダコ作り、まきのこね方などの準備と巻き方の指導をお願いします」

 ハダコというのは笹の中心に丸まっている薄緑の若い葉のことで、団子を直接巻くのに使うそうだ。その上から緑の葉を何枚か重ねて巻き上げる。

 そして、5月末になると、地元紙に「恒例ちまき作り始まる」という記事が載った。毎年この時期の季節ネタなのだろう。今年は、『安来節』で知られる安来市広瀬町の住民グループによるちまき作りが、カラー写真つきで紹介されていた。35年ほど前に比田地区の有志が始め、いまでは北海道から九州までの常連客に、計2500箱を発送する。40代から80代までの約40人で作るそうだ。

 昼夜の寒暖の差が大きい比田地区のもち米とうるち米コシヒカリを使った食味の良さが売りなのだという。昔ながらの石臼で米をひいてこねて団子を作り、地元産の笹で巻く。1箱20本入りで送料込み3900円というからそれなりの値段だが、懐かしさを味わいたいひとが取り寄せるのだろう。

 さて、節句が近づきかみさんと材料を買いにスーパーへ行った。確かにどこの店でもまき粉やクマザサを売っている。粉の袋をよく見ると、メーカーは子どものころにきな粉のテレビCMを流していた松江市の会社で、その名前が懐かしい。

 ぎりぎり節句当日の6月5日、母のちまき作り教室が開かれた。母を大学病院に連れて行く関係で、この日になった。手のしびれに悩んでいる母だが、その日は調子もよさそうで、ハサミでの笹竹の切り方からハダコの準備、巻き方まで教えてもらった。

 税抜きでまき粉600グラム598円、きび粉400グラム570円、イグサ1束98円、クマザサ4束792円で、総額2058円。これに買い置きしてあったきな粉をまぶし、米粉ときび粉合わせて36本のちまきができた。1本当たり税込みで約62円となる計算だ。

 スーパーでは、出来合いのちまきを売っているが、5本で税込み900円以上する。笹で巻くなど作業には結構手間がかかり、人件費を入れるとこれくらいにはなるだろう。

 ひょっとして、きび粉でちまきを作るのは邪道かもしれない。でも、ぼくは前世が犬か猿か雉か、子どものころから米粉の白い団子よりきび団子のほうが好きだ(^-^q)。

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