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なでしこたちの雨中熱戦

 「宮間さんのサインもらえるかな」。かみさんは、娘が浦和レッズの田中達也選手などにサインをもらったときの残りの色紙があるはず、と探しはじめた。ミーハー風ではあるが、なでしこのサポーターとしてはまったく正しい。

 ある朝、山陰の地方紙に、出雲市大社町の浜山公園陸上競技場で行われる岡山湯郷Belleと日テレ・ベレーザとのチケット広告が大きく載った。正面スタンド中央のSA席が2000円、一般席は1500円だった。あとで知ったのだが、日本女子サッカー最高峰「なでしこリーグ」の公式戦が島根県で開かれるのは初めてだった。

 すぐにローソンへ行き、チケット自販機の前に立った。時間も気にせず家を出たので、発売開始までにはまだ2、3分あった。午前10時ジャストに機械を操作し、恐らく第1号でチケット2枚を手に入れた。どうせならいい席をとSAにした。

 ぼくたち夫婦が、日本女子サッカーの応援をするようになってからずいぶん経つ。代表チームが「なでしこJAPAN」と命名された2004年よりずっと前から、国際試合がテレビ中継されるたびに応援してきた。澤穂希さんがまだ若手だったころからだ。

 女子のゲームは男子に比べれば迫力に欠ける。とはいえ、ボールを蹴るのがいかにも楽しそうなのがたまらない。あれぞサッカーの原点だ。2007年末にノリさんこと佐々木則夫監督が就任し、チームは一段とまとまった。かみさんなど、「なでしこのほうが横パスばっかりの岡田JAPANよりうまいんじゃないの」と、半ば真顔で語っていた。

 2011年のW杯で強敵ドイツを撃破し決勝でアメリカと渡り合ったとき、ひとつのピークを迎えたのはまちがいない。澤さんは円熟味を増し、宮間あやさんは左右の足で完璧なボールコントロールを見せた。

 時は流れ、宮間さんはいまや代表主将になっている。ぼくたちは出雲へUターンしてから、宮間さんを観に「いつか岡山湯郷へ行きたいね」と話し合っていた。湯郷にはいい温泉があるといい、サッカー&温泉旅行も悪くない。でも、わが家から車で20分ほどの浜山公園で公式戦が見られるなら、願ってもない話だった。

 当日、出雲は梅雨前線のためにどしゃ降りだった。これじゃ当日券はまず売れないだろうなと思いながら行くと、キックオフの1時間半も前なのに公園内に点在する駐車場は満車だった。たまたま1台の車が出て行って、ラッキーにも停めることができた。

 競技場の周囲には小学生のグループやおじいちゃん、おばあちゃんも加わった家族連れなどでにぎわっていた。女子サッカー人気は、W杯優勝、国民栄誉賞で火が点いたのだろう。出雲でもこんなにひとが集まるとは予想外だった。

 現在なでしこリーグ2位の岡山湯郷で知っている選手と言えば、エースナンバー10宮間さんのほかGKの福元美穂さんくらいだ。3位日テレ・ベレーザではDFの要・岩清水梓さんとMF阪口夢歩さんが注目だ。

 ゲームがはじまっても雨脚は衰えず、人工芝のピッチでは水しぶきがあがり、パスは失速する。岡山は、トップ下の宮間さんにあまりボールが集まらず攻撃の組み立てができない。それでも、宮間さんはワンタッチで前線へパスを送り、一瞬で局面を変えるのがさすがだ。45分になるころ、岡山のシュートは5本、日テレはわずか1本だった。

 だが、前半終了間際、日テレがペナルティエリアのすぐ外でファウルをもらい、FKから阪口さんがヘッドで決めて先制した。スタンドから大きなため息が出る。岡山と島根は同じ中国地方なのを改めて感じた。“中国人”は、東京の日テレより、断然、岡山を応援するのだ。少年少女サッカークラブの面々なのか、「ユ・ノ・ゴー・ベ・ルッ!!」と可愛い大声援を送っている。

 有料入場者は3034人と場内アナウンスが発表した。後ろの席の青年ふたりが「岡山でやったINAC神戸とのホームゲームでは2300人だったから、こっちが多い」と話している。大学のサッカー部員らしくテレビ解説者みたいな話ぶりで、「出雲の松木安太郎だな」とかみさんにささやいた。

 観客が予想外に多いとはいえ、6万3000人で埋まる埼玉スタジアムとは比べようもなく、選手たちの声がよく聞こえる。ある選手は、相手の肘でも当たったのか「バカヤロー!」と大声をあげた。女子だって、試合本番ともなるとエキサイトするのだ。

 後半に入ると、パス、ドリブルとも日テレのほうが勢いを増してきた。21分、日テレのMF隅田凜さんが左サイドから右足を振り抜き、鮮やかにゴールを決めた。岡山は宮間さんを司令塔に中央から攻めようとするが、ポジション取りが抜群のDF岩清水さんにことごとく跳ね返されてしまう。

 岩清水さんと言えば、W杯決勝戦の終盤、アメリカの超美人FWモーガン選手の突進をファウルで止めレッドカードをもらったのが忘れられない。あの捨て身のファウルがなければ、なでしこJAPANの優勝も国民栄誉賞もなかった。仮に、岩清水さんの物語をぼくが書くなら、タイトルはこれしかないと思う。『栄光のレッドカード』

 日テレはさらにPKを2回も取り、4-0で快勝した。大差はついたが、初の女子サッカー生観戦に満足した。スタジアムを出て駐車場へ向かうとき、横を歩くおじさんの出雲弁が聞こえた。「宮間って何番だったかネ?最後までどの選手か分からんだったワ」

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