出雲JAPANは1勝1敗
われら出雲JAPAN(主力選手約2名)は、Uターンして間もなく10か月となる。生来の食いしん坊で、東京近郊から引っ越しするまえ、出雲ではどんな食料が調達できるかが最大の関心事だった。ネットで調べると、車で行けそうなスーパーは6、7軒にとどまっていた。だが、住んでみると、実際には大中小20軒近くあり数は十分だった。
問題はそのクオリティと品揃えだ。魚介類の鮮度と値段の安さは予想以上で、まず申し分なかった。残るのは品揃えだ。どこの店もとりあえずの食品は揃っているが、「うちの店はこれ」という“売り”の点でやや不満が残った。
そこで、近くのスーパーHの店長あてに手紙を書き持参した。サービスカウンターで事情を話すと、すぐに店長を店内放送で呼び出してくれた。T店長は気さくなひとで「お客さまの意見は貴重です。すぐに取り寄せます」と言ってくれた。
手紙には、希望の商品3品を列挙し、食べ方を付記した。
★『ブイヤベース(のスープ)』 340円程度 モランボン社製
(ブイヤベースは南フランスの魚介鍋です。本場では地魚を処理してスープを取りますが、それには大変な手間がかかります。この商品は白身やアサリなど適当な魚介類を入れて煮るだけで美味しくできあがります。合わせて、フランスパンを軽く焼き、ルイーユを塗ってスープにつけて食べるとやみつきになります。
【ルイーユ】の作り方:マヨネーズ、エクストラバージンオリーブオイル、おろしニンニクを適量混ぜ合わせる。ブイヤベースは、ルイーユを塗ったフランスパン=バゲットを食べるのが一番の楽しみという人も多いです。本場で確認してきました)
★『北海道ロースジンギスカン』 650g 680円程度
(ご存じのように、東京ではジンギスカンがブームです。出雲のスーパーではどこにも売っていないようなのが残念です。この商品は肉がとても柔らかく、変な臭みもなく、たれに漬け込んだ真空パックなので、野菜を一緒に炒めるだけで美味しく食べられます)
★『ニシンの旨煮(甘露煮)』真空パック
(温かいそばに乗せるだけで、京都名物の鰊そばができます。これも東京でブームです)
さて、T店長から約10日後に電話があり、『ブイヤベース』と『北海道ロースジンギスカン』を店頭に並べたという。すぐに2トップそろって買いに行った。
店長への手紙には食べ方を説明したポップをつけるようアドバイスしておいた。スーパーHは、出雲としてはポップが比較的活用されている店だったが、『ブイヤベース』にはポップがなかった。
年末、近所のある夫妻を招いてブイヤベースをメインにした料理でもてなした。「名前は聞いたことがありますが、食べるのは初めてです」。まあ、そうだろう。美味い食べ方を知らないひとは、ブイヤベーススープなんて買わないんじゃないか。
その懸念はずっと後に現実となった。初夏のある日、売れ残った10袋近くが“半額セール”のコーナーに置かれていた (~_~;)。
『北海道ロースジンギスカン』は何とか売り切れたようだが、再入荷されることはなかった。同じメーカーの商品でも、T店長によると、契約の関係で小売値がぼくたちの知っているのより倍近くもした。それじゃ、無理だ。『ニシンの旨煮』もポップで説明しなきゃ売れないだろうが、仕入れそのものができなかったらしい。
出雲JAPANは、何とも言えない敗北感を味わった。ザックJAPANやネイマールを欠き惨敗したブラジル・セレソンの無念さと共通するものがあった。
ぼくが、ジンギスカンつまり生後1年未満の仔羊のラムや成羊のマトンを特に好きになったのは、インドへ赴任したのがきっかけだった。ヒンドゥー教徒は、「神の使い」と信じる牛を絶対に食べない。イスラム教徒は、『コーラン』の教えに従い豚肉を口にしない。したがって、インドで食べる肉は、必然的に鶏肉か羊肉しかなかった。マトンは牧草くさい特有のにおいがするが、それがスパイスの効いたカレー料理にはとても合う。
戦火のアフガニスタンの首都カブールには計4回入った。物資は限られており、定宿のホテル・レストランで手渡されるメニューは一応立派でも、実際に食べられるのは数種類の料理だけだった。肉はマトンしかなかった。
グルメのフランス人特派員はブーブー言っていたが、ぼくはインドでマトンに惚れていたからあまり不満はなかった。人生なにが幸いするかわからない。羊肉はヘルシーで脂身も体にいいとされる。
時は流れ、ある日、出雲のスーパーIへ行ったとき、対面販売の精肉コーナーにラム肉が売られているのをかみさんが見つけた(!)。ジンギスカン用に少し厚くスライスされていた。早速買って帰り焼いて食べると、味、柔らかさともほぼ十分だった。
次にスーパーIへ行ったとき、精肉売り場の中年男性Tさんに、しゃぶしゃぶ用の薄さでスライスしてくれるよう特注した。新宿にラムしゃぶの有名な店がある。「半解凍してからスライスするので、すぐには無理です。あさって来てください」。
後日、テレビで「ラムのトマトすき焼き」という斬新な料理を紹介していた。試してみるとこれもいける。出雲JAPANは、やっと、対スーパー戦で1勝をあげたのだった。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 詐欺のワナはすぐそこに!(2016.12.22)
- 左利きでも大和撫子か(2016.12.15)
- 続・郵便局はやっぱりおかしい(2016.12.01)
- 人工知能でいらなくなる職業、生き残る職業(2016.10.20)
- タクシー事情、東西南北(2016.10.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント