日本の首相の名前と顔とツイッター友だち
<ツイッターの友情が花開く ナレンドラ・モディとシンゾウ・アベ>
インドの日刊紙インディアン・エキスプレス電子版を読んでいたら、こんな見出しのコラムがあった。安倍晋三首相がツイッターでフォローしているのは、3人だけという。ひとりが昭恵夫人、もうひとりがなぜか猪瀬直樹・前東京都知事、そしてインドのモディ新首相なのだという。
インド総選挙は2014年5月に開票され、最大野党・インド人民党(BJP)が圧勝しモディ氏が首相となった。モディ氏は、グジャラート州首相だった2007年と2012年に来日し、安倍氏と会った。よほどウマが合ったのだろう。
今年1月、安倍首相が公式に訪印したときも、「総選挙では野党BJPが勝つ」と側近からアドバイスされ極秘裏に会談したそうだ。そして、BJPの勝利を受け、ふたりは電話で会話した。モディ氏が安倍首相の携帯に直接かけたのだという。
このエピソードに時代も国際環境も変ったのを実感する。ぼくがニューデリーに駐在していた四半世紀前、インドにとって日本は遠い存在だった。昭和天皇が崩御して、当時のラジブ・ガンジー首相が日本大使館へ弔問に訪れたのを取材した。インドでは政治ジャーナリストさえ日本の首相の名前も顔も知らない時代で、日本の顔と言えば天皇だった。
いまやインドは日本にとって極めて重要な国となった。貿易額こそ中印間の3分の1程度にとどまるが、将来はアジア最大のパートナーになると期待されている。特に、中国の国防費は10年前の4倍にも膨らみ、覇権主義を露骨にしている。安倍首相は、アジア各国との結びつきを強め“対中包囲網”を作ろうとしているが、なかでもインドとの関係がキーとなる。モディ首相は、8月末に来日を予定している。
インディアン・エキスプレスのコラムでは、ある政策アナリストの言葉が紹介されている。「モディ氏の勝利によって、アジアで最速の発展をしつつある二国間関係と言える印日の絆はさらに強まり、インドのルックイースト戦略を促進させるだろう」
ルックイースト(Look East)政策は、もともとマレーシアのマハティール首相が、1981年に提唱した。第2次大戦後、経済発展を遂げた日本の成功に関心を持ち、その集団主義と勤労倫理を学ぼうと国民に呼びかけた。
モディ首相は、30数年後のいま、ちょっとちがった意味でインド版ルックイーストを唱えているのだそうだ。ジャスワント・シン元インド外相が、6月22日の読売新聞寄稿コラム『地球を読む』で、こんなことを書いていた。
「中東からの米軍の相次ぐ撤退で、インドは地域における利益を守るための安全保障に責任を負わざるを得ない。例えば、エネルギー貿易の海上交通路を確保するための、外洋海軍力である。そしてこの分野こそ、インドと日本を結びつける。モディ氏は、自信と決断力を兼ねた指導者になることを望んでいる」
シン氏は、つづけてこう書いた。「インドの多くの戦略家が指摘するように、その手本は安倍晋三首相かも知れない。(経済と安全保障の両面で東方を重視するという)インド版の『ルックイースト』政策に大いに必要なのは、実質的な成果である。それが、日印間の投資と防衛協力の強化と言える」
日本ではこのところ、集団的自衛権の行使容認をめぐって大騒ぎとなっている。朝日新聞をはじめとする反対派は、ヒステリックなまでの批判キャンペーンで国民を扇動してきた。集団的自衛権が行使されれば日本は戦争に巻き込まれる、というのが反対派の主張だ。それでも、安倍政権は連立与党の公明党を説得し、閣議決定した。
共同通信は、7月3日付けの各地方紙で『この国の行く先』というタイトルの連載を開始した。丹羽宇一郎・前中国大使が第1回に登場した。「安倍さんは中国が覇権主義を強めているから、対策が必要だと言うんでしょうが、中国だって無人島を領有するために攻撃するとは考えられない」
では、2013年1月、尖閣諸島のある東シナ海で起きた中国による海上自衛隊艦船へのレーダー照射事件などは、どう説明するのだろう。あれは、軍事専門家によれば「銃口を相手のこめかみに当てるようなもの」という。
ここで語られているのは、根拠のない“平和ぼけ”発言そのものだ。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という日本国憲法前文の発想だろう。さすが、親中派、媚中派と言われる丹羽氏の面目躍如だ。
丹羽氏も「安全保障は軍事力だけでは実現しない」と、半分、軍事力の意義を認めている。だから、まず軍事力を整えて相手を抑止し、同時に外交にも力を入れるというのが安倍路線ではないか。閣議決定は、アメリカやドイツなどヨーロッパ、東南アジア諸国、オーストラリアなどもこぞって支持した。一番反対しているのは日本国内の左派というのが、いかにも日本的な光景だ。口論好きのインドでも、国防問題では必ず一枚岩になるのに。
オーストラリアのアボット首相には、世界に3人ほどウマの合う首脳がいるそうだ。ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン首相、そして安倍首相なのだという。
政界の一寸先は闇だと言うし、安倍政権にこの先何が起こるかは誰もわからない。でも、アジア太平洋で中国に対抗できる地域大国の首相らと友だちの首相は、当分、捨てがたい。
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