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セ・リーグのMVPはあの選手に

 セ・リーグのペナントレースも大詰めを迎えている。わが巨人軍は、リーグ3連覇を達成する。むふふ。いま噂となっているのが、じゃあ、MVPは誰かということだ。

 MVPは、プロ野球担当記者らの投票で決まるが、今シーズンは断トツの選手がいない。まあ、12勝をあげチーム勝ち頭の菅野智之投手あたりに決まるのだろうが、それじゃ、あまり面白くない。

 本当は、文句なしの候補は、原辰徳監督だと思う。チーム打率がリーグ最下位の巨人を優勝させた采配は見事だった。特に、優勝へのマジックナンバーを8とした2014年9月17日の広島戦は冴えていた。期待の沢村拓一投手が1回にいきなり4点を取られて、暗雲が立ち込めるゲームとなった。だが、2回、代打アンダーソンのセンター前ヒットで追いついた。3回には、広島の田中広輔選手がソロ本塁打を放ち、またしてもリードされた。

 6回には、代打の矢野謙次選手が2塁打を打って追いつき、フィルダースチョイスで勝ち越した。さらに逆転されたが、8回、代打大田泰示選手が2ランで再逆転し、結局、それが決勝打となった。

 常にリードを許す展開で、原監督が送り出した3人の代打がいずれも結果を出した。それはたまたまではないだろう。優勝へのカウントダウンに入った時の勢いに加え、監督が選手の調子をみて思い切って送り出したその決断が素晴らしかった。

 でも、選手兼任でもない原監督がMVPに選出される目はない。もう一度、頭をひねると、そう、いるじゃないか。

 足のスペシャリスト鈴木尚広選手だ。スター軍団のなかで、誰がごひいきの選手かと聞かれれば、ぼくは迷うことなく鈴木と答えるだろう。先発することはほとんどなく、登場するのはいつも終盤のここぞというところだ。どうしても1点が欲しいときに、切り札の代走として1塁ベースに立つ。

 ただ足が速いのと走塁術はちがう。昔、陸上100メートルの選手が代走要因としてプロ野球に転向したが、結果は出せなかった。ヨーイドンで走る陸上競技とはちがい、野球のランナーはバッテリーなどとの駆け引きをしなければならない。

 相手投手がクイックモーションで速球を投げ、捕手が盗塁を予測して2塁に投げれば、まずアウトになる。走塁術は、投手のモーションを盗み、バッテリーの隙を突くことにほかならない。

 鈴木選手の「磨き抜かれた走塁術とスライディング術は、他球団の選手も認める球界ナンバー1のテクニック」とされるのは、それだけの実績があるからだ。

 4月29日のヤクルト戦では、プロ通算200盗塁を達成した。プロ野球史上72人目で巨人では5人目だった。盗塁数だけをみると5人目だが、この記録のすごいのは、200盗塁のうち半分以上の105個が代走で記録したところだ。プロ通算18年目だが、規定打席に到達したことは1度もないまま200盗塁を達成したというのも、史上初めてだったそうだ。

 代走で出て、スタンドの期待を一身に集め、見事に盗塁を決める。ベースに立ち、はにかんで真っ白い歯をみせる。その瞬間がたまらない。ゴルフの石川遼君が、かつて「はにかみ王子」と呼ばれたが、ぼくに言わせれば、元祖はにかみ王子は鈴木選手だ。

 巨人に入った当初から、いまの役どころだったわけじゃない。俊足好打の外野手として、将来を嘱望されていた。だが、何回かけがをして、レギュラーにはなれなかった悲劇の選手でもある。

 代走を成功させたあと、打席に立ってヒットを打つこともある。塁に出ると、もう巨人でもベテランに入る選手だが、ほんとにうれしそうに白い歯をみせる。あれが、またたまらない。ぼくのなかでは「抱かれたい男ナンバー1」だ。そっちの気はないけれど。

 あの鈴木選手の魅力をもっと伝えてくれる野球ジャーナリストはいないものかと、常々思っていたら、いたいた。鷲田康という1957年埼玉県生まれの大ベテラン記者が、鈴木選手のことを“陰のMVP”だと書いてくれた。

 鈴木のことを原監督は「他に代役の利かない選手」と褒め、こう語ったという。「代走で盗塁を決めるということは、皆さんが想像している以上にタフなこと。相手バッテリーも含めた誰もが走ると思って、いつも以上に警戒している中で、そのミッションを成し遂げる。想像以上のプレッシャーに耐える力と、そのための準備がなければ、ああいう記録は作れない」

 特に今年は、鈴木選手の足で勝った試合が目立った、と鷲田さんは書いている。

 「たとえば、7月15日のヤクルト戦の延長12回2死二塁から橋本到の右前安打で生還した走塁がそうだった。もちろんヤクルト外野陣は前進守備。一塁の武内晋一のグラブを弾いた打球を右翼手の雄平が素早く拾って本塁に送球し、タイミングはアウトだった。

 しかし鈴木は捕手の中村悠平のタッチの角度を計算して、首と身体をひねって左手だけでベースを払うスライディングでサヨナラをもぎ取った」

 翌朝のスポーツ紙では「神の手スライディング」と絶賛された。

 もちろん、そのシーンはぼくもテレビで見届けた。だからたまらないのですよ、鈴木選手!やっぱり、MVPあげようじゃないの。

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