« 私的C級グルメ旅~広島市編~ | トップページ | セ・リーグのMVPはあの選手に »

第5権力と第4権力メディアの戦争

 日本メディア界の「関ヶ原の合戦」では、とりあえずの勝負がついた。ポイントとされた毎日新聞も、おそまきながら反朝日軍に寝返った。

 朝日新聞が、ついに音を上げたのは2014年9月11日夜だった。木村伊量社長が緊急記者会見を行い、「吉田調書」と「慰安婦」問題をめぐる報道、「池上彰コラム一時掲載拒否」の3大失態を謝罪するとともに、5月20日朝刊で報じた吉田調書をめぐる「所長命令に違反 原発撤退」との記事を取り消すと発表した。

 “東軍”の一番槍は産経であり、主力は読売だった。毎日がその側についたのは、おそらく戦後初めてのことであり、まさに「9.11」の歴史的な出来事となった。

 翌朝4時前に目が覚めたぼくは、コンビニまでウォーキングがてら歩いて行き、朝刊各紙を買って帰った。産経や読売はもちろん、ほぼすべての新聞が1面トップで朝日の謝罪を伝え、木村社長が頭を下げる屈辱の写真を使っていた。

 夕刊フジ電子版によると、午後7時半から東京・築地の朝日東京本社で行われた会見では、本社前に警察官約20人と警察車両数台が配備されるものものしい雰囲気に包まれた。会見場までのスペースで、報道機関が報道機関を2重にチェックする異例の事態で、不審者を完全にシャットアウトした。

 朝日が、8月5日朝刊で、慰安婦問題の「点検」特集を掲載して以来、右翼の街宣車が押しかけるなど、朝日本社一帯は騒然とした空気がつづいていた。

 日本テレビ系NNNが12~13日に行った世論調査によると、吉田調書と慰安婦問題の報道をめぐる朝日の対応について、「評価する」と答えた人は6.4%にとどまり、「訂正・謝罪は評価するが遅すぎる」が63.6%に達した。「評価しない」は23.3%だった。また、「朝日は信頼を回復することができると思うか」という問いに対しては、「思う」が21.5%しかなく、「思わない」が60.4%に上った。

 生粋の朝日シンパは別として、朝日を擁護できる要素はなく、世論は突き放した。態度が注目されていた毎日は、吉田調書と慰安婦の報道が「日本の立場や外交に深刻な影響をもたらした」と切り捨てた。趨勢をみて共倒れを避ける決断をしたのだろう。

 朝日の木村社長は、会見で、吉田調書の誤報は「意図的ではない」とし慰安婦検証結果の内容自体は「自信がある」と強弁するなど、はぐらかしに終始した。このため、「朝日は本当に反省しているのか」とますます疑念がつのり、他のメディアの見方はいっそう厳しくなっている。

 一連の朝日騒動をめぐる新聞雑誌の記事のなかで一番シャープだったのは、作家の百田尚樹さんが週刊新潮9月11日号に語り下ろしたものだった。百田さんはそのなかで、木村社長を旧ソ連のゴルバチョフ元大統領になぞらえた。ゴルバは書記長として権力を握ると改革ペレストロイカに着手し、情報公開グラスノスチまで行ってパンドラの箱を開けた。それによってソ連邦は崩壊し、米ソ冷戦も終わった。

 たしかに、木村社長がやったのは、歴代の朝日トップが目をそらしてきた慰安婦報道問題での大きな決断だった。だが、社長の賭けははずれたのではないか。検証記事を載せれば世論も他メディアも納得すると計算していたふしがあるが、反朝日のマグマは彼の想像以上にたまっていた。

 朝日を追い込んだ理由は3つあると思う。慰安婦報道での誤りを一部とはいえ認めたことで、かえって読者の反発を買い販売店が悲鳴をあげた。他のメディアの集中砲火もあった。そして、一番こたえたのが、社内からの反発だっただろう。

 9月14日のBusiness Journalによると、8月後半くらいから毎日のように社内では部長会が開かれ、その内容を部長が各部単位で記者たちに説明する臨時部会がたびたび開かれていた。そこではカンカンガクガクの議論が行われ、上層部に対するかなり厳しい意見も出ていた。また、大人しい朝日の記者にしては珍しく、100~200人ほどの記者が連名で労働組合を通じて上層部へ意見書を提出する事態になった。

 さらに、ジャーナリスト池上彰さんが朝日を批判したコラム寄稿を、いったんボツにしたことが発覚すると、現役記者30人以上が批判のツイートを発し、それがすぐに他のネットメディアで報道され、朝日は大炎上した。

 マスメディアは、立法・行政・司法の国家3権力に対し、第4の権力と言われてきた。そのなかでも、一番の第4権力を誇って来たのが朝日だった。

 今回、朝日を炎上させた「マッチ」は、ソーシャルメディアをふくむ第5の権力であるITネット世論だった。ネットの特徴は、4つの権力内部にいる人間でも謀反情報を発する側に回れるゲリラ性にある。まさに、9.11ではそのメカニズムが働いた。

 しかし、この騒動は、国際社会からみれば、しょせんコップの中の嵐にすぎない。仮に朝日城の本丸が落城しても、毎日が言う「日本の立場や外交」をどう建て直すか、という課題は残る。

 「朝日が自社のカネで世界に名誉回復措置をとれ」という声はあるが、まだ開き直っている朝日に任せていては見通しが立たないのも事実だ。第5権力が威力を発揮するのは、これからが本番かもしれない。

|

« 私的C級グルメ旅~広島市編~ | トップページ | セ・リーグのMVPはあの選手に »

書評・映画評・メディア評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/540025/60333313

この記事へのトラックバック一覧です: 第5権力と第4権力メディアの戦争:

« 私的C級グルメ旅~広島市編~ | トップページ | セ・リーグのMVPはあの選手に »