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ビール、ビール、ビール

 フィリピンの首都マニラへ初めて出張した30年前、国産ビール『サンミゲル』に大感激した。ビールってこんなにうまいものかと心から思った。日本でがぶ飲みすればトイレが近くなる。フィリピンは常夏の国でいくら飲んでも汗になるのか、トイレ通いした記憶がない。サンミゲルはスペイン系の財閥メーカーが開発したものだそうで、そのラベル名もスペインの人名という。

 東京へ帰ってきてしばらくしたころ、あの味とのど越しが忘れられず、輸入ビールを飲ませる店へわざわざいった。大いに期待していたのだが、ラベルはサンミゲルでも、飲んだ感じは全然ちがった。やはり、あの気候風土のなかで飲むから旨いのだ。

 ドイツのビールも同じで、特に、ヨーロッパの乾燥してさわやかな夏にアウトドアで飲むのが最高だ。ドイツでビアガーデンといえば、文字通り庭園や公園の緑に囲まれたところで飲む。何でもラベルが5000種もあるそうで、住みはじめたころは、どの銘柄を飲めばいいのか迷った。そのうち少しずつ勉強し、おおざっぱに言って3種類のビールがあることを知った。

 一般的なのがピルスナーと呼ばれている。チェコのピルゼン地方が発祥といい、日本でふつうに飲むビールの製法はこのピルス系だそうだ。もうひとつが、ケルシュと呼ばれていた。これはドイツのケルン地方が発祥だとあるビール党から聞いた。大麦と小麦から作られるという。アルコール度数がやや低く色も薄い感じがして、飲んべえにとってケルシュはややパンチに欠けてもの足りないイメージがあった。

 ぼくがドイツで初めて飲んでとても気に入ったのが、ヴァイツェンビールだ。日本語では白ビールという。ピルスナーがビール麦から作られるのに対して、このヴァイツェンビールは小麦から作られる。ホップは入れないので苦みはなく、やや甘い。日本の甘酒を薄くしコクを増したような感じと言えばいいか。

 これは、絶対に肉料理に合う。本場ミュンヘンへ行ったとき、現地のひとが案内してくれた醸造所付属のレストランでは、豚のすね肉のグリル焼きをかぶりつきながら飲むのだった。いまでも、その味を思い出して、すね肉とヴァイツェンビールのためだけにでも、ミュンヘンへ行きたくなる。

 そもそも、ドイツのレストランでは、ミネラルウォーターよりビールのほうが安いことも珍しくない。その理由は税率にあり、ビール0.5リットル当たりわずか約6.5円で、日本の17分の1しか税金がかかっていない!

 世界全体を見渡すと、新興国の経済成長もあってビールの消費量は増えるいっぽうらしいが、本場ドイツではビールを飲む人が減っている。読売新聞によると、ピークの1976年から約3分の1も減ったそうだ。

 ぼくが住んでいた1990年代半ばには、まだ、飲酒運転の規制もそう強くはなく、「ランチにビール派」は結構いた。しかし、次第にきびしくなり、社会のアルコールへの寛容度が下がった。

 ビール離れのもうひとつの理由が、ダイエットだそうだ。ドイツは2007年に発表されたEUの肥満度調査で、男性75%、女性59%と共にヨーロッパ1位となった。たしかに、アメリカ人ほどではないが、ドイツ人の肥ったひともすごい。あるとき、ゴルフ場であった中年男性は、お腹が大きすぎて芝の上のボールが見にくいからと、ゴムバンドで脂肪の塊を縛っていた。

 さて、わが日本のビール業界も揺れている。350mlの場合、酒税はビールが77円、発泡酒が47円、第3のビールが28円のところ、政府与党は、これを段階的に見直して将来的に税額の一本化を目指す方針を打ち出した。業界だけでなく飲んべえにとっても、歓迎すべきか反対すべきか、判断がむずかしいところだ。

 本物のビールは安くなるからいいとして、家で飲むささやかな楽しみの発泡酒と第3のビールは値上がりすることになる。そもそも、発泡酒と第3のビールは、本物のビールの酒税が高いから、それを回避するために日本のメーカーが開発した世界に誇るアルコール飲料だ。それが高くなったら、意味が薄れてしまう。

 日本が開発した世界に誇るビール飲料のもうひとつが、プリン体ゼロ、糖質ゼロの製品だ。プリン体ゼロは痛風の予防になるし糖質ゼロはダイエットにつながる。ぼくは、もうだいぶん前から、晩酌にまず飲むアルコールはサッポロ極ZEROと決めていた。本物のビールに比べコクがやや劣るのはやむをえないが、飲み慣れると結構いける。

 このサッポロ極ZEROが爆発的に売れつづけて、2014年9月、キリン、サントリー、アサヒがいっせいに同じゼロゼロ商品を売り出した。4銘柄を飲み比べてみたら甲乙つけがたいものがあり、日替わりでいこうかと思っているところだ。

 ヨーロッパでは、和食ブームに乗って、アサヒのスーパードライを中心に日本のビールがよく売れているらしい。ついでに、ダイエットにもいいゼロゼロ・ビールで殴り込みをかければいいんじゃないか。ヨーロッパにも痛風で悩むひとは多いらしいから。

 もっとも、ビールの製法を法律・ビール純粋令で厳密に決めているドイツは、受け入れないかもしれない。「あれはビールじゃない、発泡酒ですよ」と説得すればいいか。

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