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ノーベル賞を日本人が取って韓国人がとれない理由

 2014年のノーベル物理学賞を3人の日本人研究者が「青色発光ダイオード」で受賞した。そのニュースに、久しぶりの明るい話題だなと思ったのは、ぼくだけではないだろう。

 韓国人は悔しがっているだろうなあ、とも思った。ネットニュースでは、いつものように韓国からの声が紹介されていた。「なんで、韓国人にはノーベル賞が取れないんだ」。日本人が受賞するたびに聞かれる反響で、韓国人自身は、教育制度や研究環境に問題があるとみる人たちが多いようだ。韓国の研究者がどんな環境で仕事をしているかは知らないが、たとえば、スポーツ分野から想像することはできる。

 そのいい例がフィギュアスケートだ。2010年のバンクーバーオリンピックで、キム・ヨナはパーフェクトな演技をして金メダルを取った。韓国が生んだ天才スケーターであることはまちがいないが、問題はあとにつづく選手がさっぱりいないことだ。日本の男女フィギュアではメダルを取れそうな選手が何人もいて若手ホープも多いが、韓国ではキム・ヨナが突出していて層の厚さはまったくない。

 高校野球でもおなじらしい。日本で野球部のある高校は4000以上もあるのに、韓国ではわずか50数校だという。かの隣国では、才能のありそうな子どもを集めてがんがん鍛え、その他の子どものことはかまわない。何事も、一点豪華主義というか極端なエリート教育であり、底辺の広がりがない。

 韓国人でノーベル賞を取ったのは、2000年の金大中大統領ただひとりで、平和賞を受賞した。北朝鮮に対して「太陽政策」と呼ばれた宥和・関与政策を志向し、2000年6月に平壌で金正日との南北首脳会談を実現させ、6.15南北共同宣言を締結した。この南北首脳会談などが評価されての受賞だった。

 ただ、太陽政策は金大中の任期中に宥和政策としては機能したが、南北関係はその後いまにいたるまで冷却化しており、平和賞に値する業績があったとは言いがたい。しかも、南北会談実現のため、金大中は、会談の直前に現代グループが北朝鮮へ5億ドルを違法に送金するのを容認したとされる。現代グループはこれにより、北朝鮮における事業の利権を得た。「首脳会談の実現は送金の見返りだった」という見方があり、ノーベル賞受賞に疑問を投げかけた。これも、いかにも韓国らしいエピソードではある。

 韓国人が科学分野でのノーベル賞をもらえない、というかそのレベルに達していないのは、スポーツと同じで、科学の教育や研究環境も底辺の広がり、層の厚さを重視していないからだろうと思っていた。

 しかし、月刊誌WiLLの2014年12月号に載っていた科学史に詳しい医師・西岡昌紀さんの論文では、それだけではない意外な指摘が行われていた。

 まず、東洋の国としては突出して、なぜ日本人はこれほどノーベル賞が取れるのかが論じられている。その理由は日本語とくに漢字にあるという。「漢字を使ったことが明治以来、いや実は江戸時代以来、日本人が非西欧の国々のなかに在って唯一、西欧に並ぶ水準の科学を自国の文化として持ちえた理由である」

 西岡さんは、「物理学や数学で日本人が当たり前のように使っている日本語の単語」をあげている。質量、運動量、電荷、磁束、原子、分子、電子、微分、積分、行列、固有値・・・。「別に物理学者でなくても、こういう物理学の概念を表す単語を、日本人は母国語である日本語で理解し、語ることができる。そして、それらを中学生や高校生に日本語で語り、教えることができる」

 明治ではなくすでに江戸時代から、「日本人は科学の基礎となる抽象概念を日本語によって編み出し、科学の基礎としての言語を発展させていた」。だからこそ、「明治以後の急速な科学技術の発展は可能だった」とする。

 また、カタカナの功績もある。エネルギー、モーメント、エントロピーなど日本語に訳しにくい言葉や概念は、むりに訳さずカタカナで表記した。カナを持たない中国などではそれができずに苦労しているという。日本をのぞくアジア・アフリカの諸国では、自然科学を本格的に学ぶため、まず、英語やフランス語を習得しなければならない。

 韓国はもともと漢字文化圏であり、日本統治時代に多くの漢字の単語を日本語から受け入れた。それにもかかわらず、戦後、漢字廃止政策をとり、自国語(ハングル)で科学教育をせざるをえなくなったことが致命的な欠点になってしまったという。つまり、数学や物理学に関しては英語、フランス語のできるごく一部のエリートしか学問を深められない環境にあるわけだ。

 だが、日本も今後ノーベル賞をとりつづけられる環境にあるかと言えば、西岡さんはかなり悲観している。いわゆる「ゆとり教育」の弊害・後遺症というべきか、物理などの理科教育がおろそかにされている現実があるという。暗記科目と化している生物などのほうが受験で点数をとるには有利だから、と物理などが敬遠される傾向にあるようだ。英語の前にまずしっかりした日本語教育を、と西岡さんは力説する。ぼくもまったく同感だ。

 自分の経験を語れば、暗記科目を最初からバカにしていて数学、物理が“好物”だった。結果としては文系の人生を歩んできたが、数学、物理でのものごとを論理的に考え表現する習慣は、大いに役立っている。そのうち、ノーベル物理学賞でも狙おうかな。

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